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    こんにちは。GANG PARADEのキャ・ノンです。『最後』は何回でも経験できるのに、『最初』って一回しかないんですよね、当たり前のことなんですけど。もしなにか終わらせてしまっても、最後だと言ってしまっても、もう一度やってみればいいだけなので、『最後』なんて言葉は、自分の中だけにあるただの呪い、もしくは祈りなのかもしれないなって思うんです。わたしは生きている中で、何かをはじめることよりも終わらせること、やめることの方が何倍も難しいような気がしていて。バイトを辞めるのも、習い事を辞めるのも、なんだか気まずかったりするし、人間関係が出来ちゃったり、きちんと挨拶しないといけなかったりで面倒くさいですよね。何事もはじめるときの方が、ハードルが低いような気がするんです。そんなことないかもしれないですけど。『最後』はいくらでも自分で作ることができるのに、それでも人はなぜかはじめてしまう。そしてそんな『最初』は一回しか訪れないよなってことをふと考えていました。今日は、合宿オーディションに合格して、WACKに入ってから『最初』のライブの日までのことを書いていこうと思います。

     

    合宿オーディションが終わり、バスで渋谷に移動して解散、そこから家に帰る。当時、一緒に合格したもしもしチャン(現チャンベイビー)と、軽くご飯を食べてからバイバイした。たった一週間の合宿だったが、行くときは何もなかった渋谷の街が、桜にまみれていた。地面はピンクに染まり、ライトアップされた坂がとても綺麗だったのを覚えている。WACKへの合格が決まって、わたしの人生ががらりと変わった。しかし、街も、道ゆく人も、何ひとつ干渉してこない。夢でした、と言われても納得いきそうなほど、変わったのは景色だけだった。

     

    でかいキャリーケースを持って、結構長めの階段を登ろうとしているときに若い男性に声をかけられた。「持ちましょうか?」と、親切な言葉をくれて、かなり重たいキャリーケースを軽々と一番上まで運んでくれた。「ありがとうございます!」と言うと、「ニコ生見てました!応援してます!」と、まさかの合宿を見てくれていた人だった。なんだか恥ずかしい気持ちと、はじめて他人から声をかけられて、そこでものすごく実感が湧いたのだ。

     

    家に帰ると、家族がお疲れ様と声をかけてくれた。PARADISESのメンバーからのメッセージと、当時WAggにレンタル移籍していた月ノちゃんからもLINEが来て、これから本当に始まるんだといううれしい気持ちと、不安が混ざったまま、その日は死んだように眠った。

     

    程なくして練習がはじまる。初日は椅子に座って練習を見学させてもらった。これまで先生がいる場所でしかやってきていないので、メンバーだけでの練習はすごく新鮮だった。お披露目までは約一ヶ月。振り動画をもらって、ひたすら覚える日々だった。歌割が決まるまでは、練習の度に何曲かずつ覚えてきた振り付けを細かく教えてもらって、何度も踊って完璧にする作業をしていった。全曲覚えて、何度も繰り返しやっていくことによって、不安要素はほとんどなくなっていた。みんなが常に周りを見て、動きを合わせていたので、今思えばPARADISESはすごく振りが揃っていた気がする。

     

    レコーディングは合宿から二週間後くらいだった。PARADISESの曲を全曲、その場で指定される箇所を歌っていく作業だった。どこが自分のパートになるのか、その曲にならないとわからないのでずっとドキドキしていた。わからない箇所、むずかしい音程やリズムのパートは、レコーディングの前にメンバーが教えてくれた。そのとき書いた歌詞カードなども送ってくれて、歌い方のコツなどもたくさん伝授してもらった。今思えば加入当時本当に、メンバーにたくさん支えてもらっていた(ありがとうみんな)。

     

    歌割も決まって次はフォーメーションをつけて、曲を完成させていく作業に移る。振り付けは覚えていたので、お披露目の日のセットリストの曲順でどんどん作成していく。披露する全部の曲が完成したら、ひたすら通し練習をした。何度も何度も繰り返し踊って歌って、間違っているところを直されて、その繰り返しで自信をつけてもらった。最初にライブの日程を聞いたときは、お披露目まで一ヶ月しかないことにかなり焦っていたが、この頃にはもう心に少しの余裕ができていた気がする。毎晩、振り動画を全部見て、踊ってから眠るのもルーティンになっていた。

     

    本番が近づくにつれて、パフォーマンス面への緊張はほとんどなくなっていた。しかし、一番緊張したのは、コント(この日をもってPARADISESはコント禁止になった)と自分のMCだった。WACKはMCで一人がしっかり話すイメージがあったので、いろんな人のライブレポートや、お披露目の日のMCを探したりした。考えた内容を何度も音読して、これでいいのかと何度も練り直した(これが最終的なMCのメモです)。

     

    お披露目当日。無観客でどこを見たらいいのかわからず、カメラを見ていた。すごく緊張していた気もするし、そんなにだった気もする。その次の名古屋公演で、人前ではじめてライブした時の方がドキドキしていたと思う。なぜだか記憶がぼやけて、あんまり覚えていないけれど、終わってからみんなで俺流塩ラーメンを食べたのは覚えている。それがわたしのWACKに入って『最初』のライブだった。

    過去の連載記事はこちら
    https://strmweb.jp/tag/ca_non_regular/

    キャ・ノン

    「「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する12人組アイドルグループGANG PARADEのメンバー。また、「KiSSをあなたにお届けchu!♡」をキャッチコピーに活動するWACK初の王道5人組アイドルグループ『KiSS KiSS』のメンバーの一人でもある。ライブ好きで、苦手なことや、できないことは出来るようになればいいというタフでロックな精神の持ち主。2024年5月31日より自分自身のライブレポートなどを綴った『アイドルリアル備忘録』をSTREAMにて連載中。