パフォーマンス力を磨いた渋谷での路上パフォーマンス

――初めて路上ライブをやった場所はどこですか。

Novel Core  TSUTAYAが入っている渋谷のQFRONT前です。そこでマイクを握って、主催者の賽ノ目くんって人とベーシストやドラムの演奏に合わせてラップをしたのが初めてのライブですね。みんな路上で出会った人たちで、ドラムはTHE WILL RABBITSの(佐藤)響さん。そこで定期的に路上ライブをやるんですが、オープンマイク形式でやっていたので、ギターを背負って歩いていた人が、「俺も弾いていこうかな」と入ってくるみたいな感じで、渋谷のクラブやライブハウスでライブを終えた人たちが次から次へと参加するので、出会いは多かったです。フリーな形式でジャム(セッション)をしていたので、ギターが加わることもあれば、ドラムやビートボクサーしかいない日もあるし、トラックを流して一人でやることもあって、日によってまちまちでした。

――ラップも即興だったんですか。

Novel Core  基本は即興ですが、少しずつリリックを書き始めていたので、リリックの断片をレゲエのクラッシュ(バトル)みたいなテンションで使うこともありました。

――ジャンルはヒップホップという訳ではなく?

Novel Core  そのときは今みたいに歌うことはなくて、ずっとラップをしていたんですが、響さんはジャズを通っていましたし、ベーシストはロック・パンク経由の超スラップベースみたいな人だったので、初見で聴くと何をやっているんだろうという面白さがあったと思います。

――なぜ路上ライブという方法を選んだのでしょうか。

Novel Core  当時はそれしか世に出る方法がなかったというのが正直なところで、MCバトルの経験しかなかったので曲もなかったし、ライブハウスでライブのブッキングをもらえるような状態ではなくて。バトル以外のパフォーマンスを見てもらう機会が路上でしか作れなかったんですよね。でも今思うと、僕目当てとか、他のアーティスト目当てでライブを観たいと思って会場にお金を払って足を運んでいる人たちの前でパフォーマンスをするのと、通りすがっていく人たちの足を止めるために努力するのとでは、パフォーマンスの指向性というか、根本の軸が違う気がしていて。自分たちに全く興味のない人たちの足を止めるために何をするべきかというパフォーマンスの基礎を路上で学びました。その経験は、最近のフェス出演にも活きています。

――足を止めるために、どんなことを実践していたんですか。

Novel Core  人間の本能だと思うんですが、目と目が合うと、立ち止まるんですよね。自分が話しかけられている、自分に対して何かをやってもらっているという当事者意識を相手に感じてもらうことが大事なことだと思っていて。だから細かくアイコンタクトを取ったり、時にお客さんをいじったりといったコミュニケーションを取っていました。その辺はライブ中のMCにも通じるものがあります。

――Core さんのバトルを観て、路上ライブに足を運ぶ方もいたのでしょうか。

Novel Core  少数ですがいました。でも路上でのパフォーマンスがTwitter(現X)などのSNSで話題になって、動画が拡散されて、「ラップの上手い子が路上でラップをしていて、めっちゃ良かった」「毎週、渋谷でやっているらしいから観に行こう」みたいな感じで観に来る人が増えていったので、路上で形成されたファンダムのほうが大きかったです。

――バトルでの経験値と、路上で得られる経験値は違いましたか。

Novel Core  全然違います。バトルはお客さんに向けたものじゃなくても、良くも悪くもお客さんからリアクションが返ってくる現場という気がしていて。パフォーマンス中も相手と向き合っている時間が長いし、そこでやり取りしているものを聴いて、勝手にお客さんが盛り上がってくれる。それに対して路上ライブは外に向けてパフォーマンスをして、何かを感じてもらって、リアクションが返ってきて、また演者が投げ返してというキャッチボールに近いことをするので、大きな差があります。

――当時バトルで得られたものは何でしょうか?

Novel Core  メンタルの強さですね。MCバトルに出るときって、すごく気楽に構える人もいますが、自分の場合は始まる直前になると吐きそうなぐらい緊張します。一夜で勝ったらヒーロー、負けたらヒールになるみたいな。そういう容赦ないところがあるので、すごくピリピリしていたし、その上で良いパフォーマンスをして帰ってくるというプレッシャーもあるので、自然とメンタルが鍛えられました。路上は路上で違う神経の使い方をするんですが、ピリピリすることはないので、そこは大きく違いました。

――路上ライブをやっていたのは、どれぐらいの期間だったのでしょうか。

Novel Core  15歳の終わりから始めて、18歳になる直前まで続けていたので約2年半。当時はとにかく自分の名前を知ってもらうことと興味を持ってもらうこと、それにプラスしてパフォーマンスの力をつけたかったんです。お客さんの前で良いパフォーマンスができるという地肩の強さが欲しかったので、「こういう会場でライブをやりたい」みたいな目標を定める前の段階でした。