家にいるときも肌身離さず銃を持ち歩いて体に馴染ませた

――吉井は郊外の湖畔に事務所兼自宅を借りますが、そこでバイトとして佐野を雇ったことが二人の出会いになります。事務所兼自宅は湖畔にポツンと存在していて、不穏な空気を漂わせています。

奥平 本当にその建物しかなくて、映画に映されていない一方には、いろんな建物があるんです。夜行ったら普通に怖いですし、不思議な場所でしたね。

――銃撃戦が繰り広げられる工場はどこにあったんですか。

奥平 他のロケ地は関東だったんですが、あそこだけ福島でした。まだ一部稼働していましたが、工場としての役割を終える場所をお借りして撮影しました。本編にも映っていますが実際に雪も降っていて、すごく寒かった記憶があります。

――ガンアクションではどんな指示があったんですか。

奥平 「かっこつけないで欲しい」と言われました。佐野にとって銃は特別なものではなく、日頃から手に馴染んでいて、人を殺すことに関しても躊躇がなくて、あっさりパーン!と撃つぐらいがいいと。事前に撮影で使ったものと同じ型のモデルガンを貸してくださったんですが、家にいるときは肌身離さず持ち歩いて、たまに撃鉄を起こしたりしながら馴染ませていきました。もっと馴染ませるために外でも持ち歩きたかったんですけどね(笑)。

――現場にはガンアクションの先生もいらっしゃったんですか。

奥平 はい。拳銃の他にライフルを撃つシーンもあったので、スマートに使えるように銃の扱い方を教えていただきました。実際に弾を撃つ訳ではないので、どうやったらリアルな反動があるように見えるかをお聞きしながら、手探りでやりました。軍隊やプロの狙撃手ではなく、生きていく中で自分なりに覚えた撃ち方なので、正式な構えではないんですよね。どういう風に映るのか不安もあったんですが、完成した映画を見たら、自分で言うのもなんですが、リアルにできているなと感じたのでホッとしました。

――銃撃戦での佐野は誰よりも冷静で、それが逆に狂気を感じさせました。

奥平 黒沢監督から、「佐野は自分の行動に自信を持っている人間だから堂々としてください」と言われていたので、周囲を警戒することはあっても、それ以外は言葉や動きに自信を持つように意識していました。

――撃たれる側との呼吸も必要でしたか?

奥平 実際に火薬は入っているので大きい銃音が鳴りますし、そこは意識しなくても平気でした。相手に合わせるというよりは、自分のペースで撃つことを優先していたかもしれません。