どの作品でも伊藤さんは存在感があって、目を惹くオーラを放っている
――中川さんは、伊藤さんにどんな印象を持っていましたか。
中川 過去に映画 『賭ケグルイ』(19)でご一緒しているんですが、そのときは絡みがなかったんですよね。
伊藤 そうだった!
中川 そのときも感じたんですが、どの作品でも伊藤さんは存在感があって、独自の世界観があって、目を惹くオーラを放っていて。僕は『チャチャ』の脚本をいただいた段階で伊藤さんの名前は聞いていたので、お会いしたことはないけど、勝手にチャチャという女の子にぴったりだなと。伊藤さんのためにある役だと感じたので、脳内でイメージしながら脚本を読みました。
――実際に現場で会った印象はいかがでしたか?
中川 チャチャはバランス感覚が難しい役です。伊藤さんは酒井監督といろいろやり取りしながら、チャチャを探っていましたが、僕が思い描いていた以上のチャチャがいたのでうれしくなりました。
伊藤 中川さんも、私が想像していた樂よりも眩しくて。役を愛していることも伝わってきましたし、常に現場では「かっこいい!どうしよう」と心の中で私とチャチャが対話をしていて。この輝きに耐えられるのかと葛藤していました(笑)。
中川 めっちゃうれしいですね。
――酒井監督とは事前にどんな話し合いをしましたか。
伊藤 顔合わせのときに、『チャチャ』を作る経緯や思いを聞かせていただいて。自分がチャチャ役に決まってから、何度かセッションしたんです。たとえば酒井監督から「ちょっと歩いてみて」と言われて、「こういう感じですか?」と歩いたら、「違います。もっと軽く」と言われて。それぐらい最初から酒井監督の頭の中にチャチャ像が明確にあったんです。それを形にするのが難しくて、クランクインの時点でも間に合わなくて。準備してきたことを全部壊したぐらい、今までのやり方では通用しないんだと感じましたし、今回の現場では赤ちゃんになったつもりでいようと思いました。
中川 僕の場合は最初にキャラクターシートみたいなものをいただいて、事前に本読みもあったので、そこで酒井監督といろいろと話して樂を作り上げていきました。ただ現場は瞬発力を持って進んでいかなきゃいけないところがあるので、撮影が始まったら、話すよりも実際に演じてみることが多くて。酒井監督は繊細なところまでこだわる方なので、解釈は何となく共有できても、微妙なさじ加減が重要になってくるので、その都度チューニングを合わせていきました。
――前半と後半では樂のキャラクターも変化します。
中川 事件が特に起きていない時間、日常的な時間というものをどういうふうに演じられるか、どういうふうに存在していられるかが、自分の中で今回のテーマでもありました。それが樂のまとっているオーラや、樂が見ている世界に繋がってくるのかなと思ったんです。屋上でたばこを吸っているだけとか、店を出て買い出しをして、ただ歩いて帰ってくるとか、そういう日常的なシーンを特に大事に演じました。