ニール・サイモン初期の作品『裸足で散歩』は若々しさが漲っている
――40年前にコリーを演じたときとでは、『裸足で散歩』の印象も変化しましたか。
戸田 今読むと一昔前の戯曲だなと思うんですが、40年前は携帯電話も使っていなかったですし、まだまだ脚本に近い時代でした。ニール・サイモン初期の作品(※1963年にブロードウェイで初演)なので若々しさが漲っていて、主人公の若い夫婦二人にはぴったりだなと。私自身、初めてのストレートプレイで精いっぱいだったんですが、コリーを身近に感じて演じることができました。
――それぞれ共演者の印象をお聞かせください。
戸田 夏帆さんは性格が前向きで実直。へこたれることなく、前に進んでいるのが素晴らしいと思いました。私がコリー役で『裸足で散歩』に出たときは文句タラタラだったと思うんです(笑)。タフな作品なので、なかなか大変なんですよ。喧嘩シーン一つとっても、派手にやるので体力が必要ですし、とにかくセリフの分量が多いし。それを夏帆さんは文句も言わずにひたむきにやってらっしゃるから、当たり前かもですが偉いなと思いました。
――加藤和樹さんはいかがでしょうか。
戸田 とても真面目で、真摯にお芝居に取り組んでいるのが伝わってきます。
――初演の稽古でお二人と話す機会はあったんですか。
戸田 初演のときはコロナ禍が深刻な状況で、稽古終わりにみんなで食事をすることもなかったですし、稽古場でもマスクをしていたので、ゆっくりお話しをすることもなかったんです。それにお二人はセリフが多いから、こちらから何か話しかけるのも悪いし、休憩時間を心から休んでほしいと思って、あえて話しかけないようにしていました。
――ヴィクター・ヴェラスコを演じる松尾貴史さんとはお付き合いも古いですよね。
戸田 30年来の知り合いですが、舞台でご一緒するのは『裸足で散歩』が初めてだったんですよね。もちろん松尾さんが出演した舞台も拝見していますし、柔らかいものもあれば、硬いものにも出ていらっしゃるから、すごく力のある方です。何となく底辺で分かりあっているので、舞台上でどう転ぼうが大丈夫という安心感があります。
――唯一、福本伸一さんは今回が初参加のキャストです。
戸田 福ちゃんもテレビで何度か共演したことがあるんですが、舞台は今回が初めてです。達者な方が揃っている劇団ラッパ屋を代表する役者さんだけあって、初めての本読みで早くも電話会社の男になり切って。優しい雰囲気と小物感を兼ね備えた電話工事人の絶妙な雰囲気を漂わせていて、さすがベテランの役者さんだなと思いました。