ゆくゆくはファッションショーの音楽をやりたい
――今回はアートワークやライブの演出を手掛けるCoreさんの、アート面の歴史などを振り返っていただきます。前回の連載ではファッションに焦点を当てましたが、ファッションショーもチェックしているんですよね。
Novel Core 国内外に関わらず、できる限りチェックするようにしています。『VOGUE』などのファッションメディアで記事になっているものを読んで、ショーを把握することも多いんですが、実際にパリやミラノなどのコレクションに足を運んで、現地でショーを見ているモデルの友達も多いので直接話を聞いています。
――どんなことに注目してショーを見ているのでしょうか。
Novel Core 演出的なところで言うと、ゆくゆくはファッションショーの音楽もやりたい気持ちもありますし、ランウェイにモデルさんが一人ひとり出てくるタイミング、ルックの並び、照明など、どれもすごく練られているので、それを見て分析しています。なぜ、この並びにしたのかを紐解いていくと、ブランドの歴史的な流れを踏襲した並びになっていたりするので、それがすごく面白い。毎コレクションをチェックして、時代背景とファッション・カルチャーのマッチの仕方を見ていると、あえて時代に逆行させるスタイルを採用するブランドもあって、そのギャップみたいなものを確かめるのも好きなんです。前回の連載でお話ししたデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が作ったバレンシアガ(Balenciaga)のオーバーフィットの流れも、元を辿ると、携帯電話などが普及して、みんながせかせかと生きている中で、デムナなりの「ゆとりを持とう」というスローライフの提示として、オーバーフィットを定義したとも捉えられるし、彼は1980年代の社会主義国家のど真ん中の生まれだし、幼少期に見たものの影響がきっと大きいので、そういう背景を踏まえてショーを見ると、今はこういう時代だから、こういう服が多いんだなと分かってきて興味深いんですよね。
――特に注目しているブランドのショーは?
Novel Core やっぱりバレンシアガは面白いですよね。僕はデムナの人間らしさが好きで、毎回楽しませてもらっています。一時期は泥の中を歩かせるとか、突拍子もないことを繰り返していて。その影響で他のブランドも、そういう見せ方が増えて、演出的なショーがパリで一般化したんです。一方で、ファッションショーは服をより良く見せることに全力を使うべきだと批判的な評論家もたくさんいて。そんな中、2023-24年の秋冬コレクションでバレンシアガは真っ白で何もない空間で超シンプルなショーをやったんです。それを見たときに、あまりにも面白くて、めっちゃ笑いました。デザイナーであるデムナの人間性がにじみ出てるのも含めて、バレンシアガのショーは好きです。あとは、ここ最近、個人的にフェラガモ(FERRAGAMO)を推していて。本国のチームと何度か広告のお仕事もさせてもらったんですが、2022年からマクシミリアン・デイヴィス(Maximilian Davis)がクリエイティブ・ディレクターを務めているんです。1995年生まれと、まだ二十代なんですが、めっちゃデザインが若くなって、ハウスカラーも鮮やかな赤に変わりました。マクシミリアン・デイヴィスになって一発目のショーで赤土が敷き詰められているフィールドをランウェイしたんですが、ハウスカラーが赤になったから、それを踏襲して赤土の上を歩かせているだけだと思ったんです。ところが、彼の出身でもあるトリニダード・トバゴの国旗や歴史を踏襲していると。またフェラガモの創設者・サルヴァトーレ・フェラガモ(Salvatore Ferragamo)が出した真っ赤っかのパンプスがあって、マリリン・モンローの為に製作されたものですが、ブランドのアイコンでもある。赤土のランウェイには、ちゃんとブランドにリスペクトしつつ、自分のプレゼンスも混ぜるという意味合いがあって、それが超かっこいいなと思いました。
――ちょっと話は逸れますが、洋服の衝動買いはしますか?
Novel Core 結構しますね。ただ僕はスタイリストを付けずに、衣装は全て自分の私服でやっているので、衣装を見に行くという目的が第一で、「かっこいいけどライブで着るには暑いかな」とか考えて買わないとか、普通に私服を探す感覚で洋服を見ることが減っちゃったんです。ただ洋服を選ぶときは、シルエットやデザインを見つつ、そのブランドの背景は必ず知っておきたい。だからショップの店員さんに、いろいろ話を聞いて、学びながら買うんです。未知のブランドを買う場合も、店員さんに詳しくバックグラウンドなどを聞いて、面白いと思ったら買います。