ターニングポイントになったドラマ「ファーストクラス」

──都会の生活はすぐに馴染めましたか?

中川 上京当時は事務所の寮に暮らしていたのもあって、すぐに馴染めました。

――ホームシックにはならなかったんですか?

中川 親には申し訳ないんですが、私はほとんど実家に連絡をしないタイプで大丈夫でした。周りを見ていると、毎日電話している子はホームシックになっていました。ただ東京の暮らし自体は今も慣れません(笑)。特に満員電車は苦手ですね。

──ニコラモデルを卒業した時点で、明確に俳優でやっていこうという気持ちはあったんですか。

中川 モデルも続けたかったんですが、お芝居を極めていったほうがモデルも含めて他の活動に活きるだろうなと思って俳優活動が中心になっていったんですが、何より映画とドラマの撮影が楽しかったです。

──俳優としてターニングポイントになった作品は何でしょうか。

中川 2014年にYURINA役を演じさせていただいたドラマ「ファーストクラス」のシーズン2です。沢尻エリカさん演じる主人公の吉成ちなみを「おばさん」と呼ぶ役だったんですが、ほぼ初めてレベルでたくさんのセリフをいただいて。すごくいい役だったんですが、まだまだお芝居ができていなかったので、本当に難しかったんです。イントネーションも所々分からなかったですし、人生初めての泣くシーンで泣くことができなくて。でも監督は本物の涙が欲しいということで何テイクも重ねて。そしたら急にすっと泣けたときがあって、そのときに、「これが役に入ることなのかな」と漠然と思っていました。

――錚々たる俳優さんが揃っている中での泣きのお芝居はプレッシャーもすごそうですね。

中川 プレッシャーもありましたが、ベテランの俳優さんから「大丈夫、そのうち泣けるようになるから」と励ましていただいたので救われました。それでも「ファーストクラス」は120%の力を出し切ったなという実感もあって。監督に「お疲れさま」と言われたときに、達成感でウルウルしちゃって、その場で泣きそうになりました。今まで味わったことのなかった達成感で、これだけ自分は頑張れるんだという自信になりましたし、ターニングポイントになりました。

──最後に改めて、『きみといた世界』の見どころをお聞かせください。

中川 なぜ二人が異世界に迷い込んだのか、どうやったら出られるのか、そして本当に出ることができるのかという過程を楽しんでいただきたいです。今青春を送られている十代の方に勇気を与えられることができる作品だと思いますし、それよりも上の世代の方は自分の過去を照らし合わせながら観ると、より楽しめると思います。

Information

『きみといた世界』
12月14日(土)〜12月27日(金)池袋シネマ・ロサにて連日20:30〜上映他全国順次公開

中川可菜 高橋改
保﨑 麗
阿部快征 弓削智久

原作・脚本:arawaka 政成和慶
監督・編集:政成和慶
製作・配給:BASARA
2024年/日本/カラー/シネマスコープ/5.1ch/103分
©2024 「きみといた世界」製作委員会

高校3年生の水野卓(高橋改)はクラスメイトの吉川碧衣(中川可菜)に密かな恋心を抱いている。 碧衣は、親友の横山理奈(保﨑麗)や陽キャの男子生徒たちにいつも囲まれており、コミュ障で陰キャぼっちの卓は、スクールカースト一軍の碧衣を陰から眺めることしかできない。ある日、卓と碧衣は、他に誰もいない謎の世界に迷い込んでしまう。困惑している2人の前に、謎の男(弓削智久)が現れ、「2人共が元の世界に戻る条件は、2人の心を合わせ、元の世界とのバランスを取っている“コア”に人間が1人だと認識させること」と教わる。“心を合わせる”という方法がわからないながらも、試行錯誤する2人だが、卓のコミュ障が原因でそれもうまくいかない。そんな日々の中でも碧衣は卓の優しさに触れていくが、碧衣の目の前に碧衣が好きだった工藤佑太(阿部快征)が現れる。
果てして卓と碧衣は元の世界へ戻れるのか……。

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中川可菜

1997年10月16日生まれ。奈良県出身。2010年、第14回ニコラモデルオーディションでグランプリを受賞。2020年、松竹主催による#リモート映画祭で、出演した短編映画「小さな話」が、審査員特別賞を受賞する。7代目イメージキャラクター「おけいはん」に選ばれた京阪電車など多数のCMに出演。代表作に『仮面ライダーブレイブ&スナイプ』(2018)、原田眞人監督『ヘルドッグス』(2022)優奈役、テレビ朝日「相棒season21」(2023)矢口綾子役など。

PHOTOGRAPHER:YU TOMONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI