僕たちがタモンズだったらどうするかを大事にして演じた
──相方の安部浩章さんを演じた駒木根隆介さんと、コンビの絆などを表現する上での話し合いなどはしましたか。
和田 映画で最初に顔合わせをするときって、自己紹介から始まって、「本読みをしましょう」と初めて声を出して台本を読むのが大体のパターンなんです。ところが今回は、事前に「タモンズさんのネタを〇本覚えといてください」とネタを渡されて、初めての顔合わせの日に、いきなりネタ見せをやったんです。「僕らのことを俳優じゃなくて、お笑い芸人さんと思ってんのかな？」と思いましたが（笑）。そのために駒木根くんが僕の家に来て、二人で事前に稽古をやったんです。自宅にスタンドマイクも置いてあったので、その二つをサンパチマイク代わりにして、「どうもー」とか言いながら練習をして。過去にも駒木根くんとは何度か映像作品で一緒になりましたし、舞台でも共演していたんです。
――勝手知ったる仲だったんですね。
和田 だから駒木根くんが相方役をやると聞いたときは、「よっしゃあ！」でした。僕としてもめちゃくちゃやりやすいですし、相性はぴったりだなと。実際、二人で稽古をやったらスムーズで。ちょっとだけ僕が年上なんですが、後で聞いたらタモンズさんも大波さんがああしようこうしようと言って、安部さんが「おー、分かった分かった」みたいなノリなので、僕と駒木根くんの関係性に近かったんですよね。意図したわけでもないのに、自然とそんな風になったのは、もしかしたら何かの導きだったかもしれません。それぐらい駒木根くんは頼もしい相方でした。
──タモンズのお二人と撮影前にお会いするタイミングはあったんですか？
和田 大宮セブンのライブを観に行ったときに楽屋挨拶をさせてもらいましたが、本当に短い時間だったので、撮影に関してのアドバイスは一切なくて。でも、そのほうが良かったなと思うんです。というのも実在の人たちを演じるときって、恐怖と向き合うために、モノマネに走りがちなんですよね。ただ僕と駒木根くんは、監督やプロデューサーに相談する前から、二人で「モノマネはやめよう」と決めていたんです。
――なぜでしょうか？
和田 最初に少し触れましたが、モノマネで行くと、似てる似てないが映画の評価になる恐れがあります。それと僕たち自身、そこに縛られてしまうと思うような芝居ができなくなる。準備期間も撮影期間も短い中、僕たちがタモンズだったらどうするかを大事にして演じようという意見で一致しました。
──沖縄映画祭でも先行上映されましたが、映画を観た方の反響はいかがでしたか。
和田 自分で言うのもこっ恥ずかしいですが、「すごくよかった」と言ってくださる方が多かったです。あと大波さんご自身は試写でめちゃくちゃ泣いていたそうです。大宮セブンのメンバーの方々も皆さん良かったと言ってくださったのもうれしかったですね。でも本番はここからです。映画の公開が始まって、大宮セブンのファンの方がどんな反応をするのか。ひいてはお笑いファンの人たちが、ひいては他の芸人仲間たちが、さらには大御所の先輩方が、そして世の中の人たちや映画人が……と気にし始めたらきりがないんですけど、一つ僕の中で大事にしているのは、大宮セブンの方々のくすぶってきた軌跡を作品にして、こういう人たちがいた、こういう人たちが頑張って夢を追い続けて、こういうことがあったということを伝えるのが大事なのと同時に、この映画に出てくる役者たちの多くは今現在もくすぶっているんです。
──なるほど。
和田 一部を除くと無名な人たちばかりなんですよね。僕も含めて、くすぶっている人たちばかりなんです。でも知名度に関係なく素晴らしいお芝居をしているので、彼らの凄さをしっかり見てほしいなと。それを僕は裏テーマとして思っているところがあるので、こんなに大変な役を、恥ずかしさを捨てて、芸人さんになりきって熱演している彼らの覚悟が皆さんに届いてほしいのが一番の願いです。
