両親役のお二人がいるだけで家族の空気になれた
――拓也はお酒の席で失態を犯したことで、とんでもない事態を招いてしまいますが、酔っ払い方のグラデーションがものすごくリアルでした。どなたかモデルがいたのでしょうか?
前原 酔っぱらいの演技は、普段から酔っぱらわない人のほうが上手いってよく聞くんですよね。僕は拓也と違って、酔ってもほぼ変わらないんですよ。飲み会などでも、酔っぱらって崩れていく人を見る側だと思います。だから今まで崩れてきた方たち全員がモデルかもしれない(笑)。
――記憶をなくした翌日、ホテルのベッドで目覚めて右往左往する様も生々しかったです。
前原 そればかりは誰かがそういう事態に陥った場面を見たわけではないので、自分の人生経験の何かかもしれません。でも本当に記憶をなくしたことはないですからね。今こう言っちゃったから、今後何か起きたときに、「記憶がない」という言い訳は通用しないですね(笑)。
――拓也が講師を務める脚本ワークショップの受講生とのやり取りも面白かったですが、どんな雰囲気でしたか?
前原 くせ者揃いで、良い意味でまともな方がいなかったです(笑)。僕は良くも悪くも普通というところから抜け出せない人間で、抜け出そうともがきはするんですけど、そうはなれない。でも脚本ワークショップの受講生を演じられた方々は目を惹く方ばかりで。中でも高木ひとみ○さんは芸人さんだけあって、やり取りをしていると楽しくなっちゃうんですよ。
――脚本ワークショップはシリアスなシーンの連続ですよね。
前原 楽しい瞬間はほぼないんですよね。でも高木さんが喋ると全員笑いそうになりました。本番はギスギスした演技をしますが、合間は楽しくお話しして、温かい空気感でしたね。
――特に印象に残っているシーンは?
前原 拓也が家族といるシーンです。酒向芳さん(拓也の父役)と山下容莉枝さん(拓也の母役)が温かくて、変に作らなくてもお二人がいるだけで、家族の空気になれたんですよね。
――拓也の実家は町中華のお店ですが、普段から行きますか?
前原 大好きです。たとえばファミレスなどで床がベタベタしているのは嫌ですが、町中華だとそれすらも味わいに感じられるんですよね。寡黙な店主もいれば、コミュニケーションを取るのが好きな店主もいて、何気なく観察するのも好きです。
――舞台になったお店は普段、実際に営業されているそうですね。
前原 素敵な町中華のお店で、撮影のために3日間貸してくださって。お料理もお店の方が作ってくださったので本当に美味しいんですよね。
――最後に映画の見どころをお聞かせください。
前原 ファンタジーな恋愛が描かれているわけではないですし、派手な展開があるわけでもない。ここで扱われている問題も、人によっては全く縁がないお話しかもしれません。だからこそ、どういう方が映画館の観に来てくださるのかが楽しみで。拓也を始め、誰かに共感できるかもしれないし、全く共感できない気持ちも分かります。それぞれの人物を見てもらったら何か感じるところがあるはずなので、ぜひ観てください。
Information
『ありきたりな言葉じゃなくて』
新宿シネマカリテ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中
出演:前原滉
小西桜子 内田慈 奥野瑛太 那須佐代子 小川菜摘 山下容莉枝 酒向芳
池田良 八木光太郎 沖田裕樹 敦士 鈴政ゲン 加藤菜津 佐々木史帆 高木ひとみ◯ 谷山知宏 今泉マヤ 根岸拓哉
チャンス大城 土屋佑壱 浅野雅博 外波山文明 玉袋筋太郎
脚本・監督:渡邉崇
原案・脚本:栗田智也
製作・エグゼクティブプロデューサー:若林邦彦 企画:陣代適 統括プロデューサー:阪本明 粟井誠司 安田真一郎
プロデューサー:丸山佳夫 キャスティングプロデューサー:山口良子 脚本協力:三宅隆太
©2024 テレビ朝日映像
32歳の藤田拓也(前原滉)は中華料理店を営む両親と暮らしながら、テレビの構成作家として働いている。念願のドラマ脚本家への道を探るなか、売れっ子脚本家・伊東京子(内田慈)の後押しを受け、ついにデビューが決定する。夢を掴み、浮かれた気持ちでキャバクラを訪れた拓也は、そこで出会った“りえ”(小西桜子)と意気投合。ある晩、りえと遊んで泥酔した拓也が、翌朝目を覚ますと、そこはホテルのベッドの上。記憶がない拓也は、りえの姿が見当たらないことに焦って何度も連絡を取ろうとするが、なぜか繋がらない。数日後、ようやくりえからメッセージが届き、待ち合わせ場所へと向かう。するとそこには、りえの”彼氏”だという男・猪山衛(奥野瑛太)が待っていた。強引にりえを襲ったという疑いをかけられ、高額の示談金を要求された拓也は困惑するが、脚本家デビューを控えてスキャンダルを恐れるあまり、要求を受け入れてしまう。やがて、事態はテレビ局にも発覚し、拓也は脚本の担当から外されてしまう。京子や家族からの信頼も失い、絶望する拓也の前に、りえが再び姿を現す。果たして、あの夜の真相は?そして、りえが心に隠し持っていた本当の気持ちとは……?
PHOTOGRAPHER:YASUKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:YUKIYA(SUN VALLEY),STYLIST:TAKASHI USUI(THYMON Inc.)