今も変わらぬスタンス「純粋に音楽が好きだから、歌える場所を探していた」 | 高橋優「メジャーデビュー15周年を控えて『誰かが立ち止まってくれるかな』原点にあった路上ライブ時代」INTERVIEW

今も変わらぬスタンス「純粋に音楽が好きだから、歌える場所を探していた」

――今でこそ、ギブソンのダヴを愛用していますが、初めて購入したギターは何だったんでしょう？

高橋　国産ブランド、ヘッドウェイの8000円ぐらいのギターでした。高校から大学にかけて、インディーズ時代もずっと使い続けていたんです。ギブソンを購入したのは、札幌でスカウトされて上京が決まってからでした。当時、事務所への所属が決まり、紹介されたバンド・SMILEのヴォーカルだった浅田信一さんに「優くん、いいギターを1本ぐらい持っておいた方がいいよ」とすすめられたんです。後日、一緒に渋谷の楽器店へ行って、浅田さんから「これ似合うよ」と言われたのがギブソンのダヴでした。

――青春時代には生まれ育った町の山中で歌い続けて、大学時代の路上ライブ、スカウトがきっかけの上京を経て、プロ意識が芽生えた転換点もあったのでしょうか？

高橋　あったのかな。ありがたいことにメジャーデビューのチャンスもいただいたんですけど、はなっから“意地でもメジャーデビューしてやろう”という思いがあるわけではなかったんです。高校時代は、モンゴル800やGOING STEADYが好きでしたし、むしろ“メジャーって何？”と思っていました。スカウトされるまでを過ごした札幌には、モノブライトやサカナクションのように名だたるバンドマンもたくさんいて、ライブハウスで「自分たちで作ったCDを月々で何枚売れば、サラリーマンと同じ稼ぎになる」と数えながら活動を続けていた人もいたし、自分も同じように生きていくんだろうと思っていました。それもあってか、ヒットチャートをにぎわす人になりたい、大きなステージに立ちたいと、大げさに考えてもいなくて。純粋に音楽が好きだから、歌える場所を探していたし、今もそのスタンスは変わってないと思います。

――歌える場所の一つとして、自身が主催する地元の秋田県でのフェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」は、もはやライフワークとなっている印象です。

高橋　横手市の髙橋大市長から地元を盛り上げるために「何かできないものでしょうか」と、相談をいただいたのがきっかけでした。2015年に秋田県の「あきた音楽大使」に任命していただいてから、地元で何か貢献できるものはないかと考え続けて、フェスだとひらめいたんです。2016年の初回は横手市からスタートしましたけど、秋田ではアーティストがなかなか来ない町もあるから、各地を巡ろうと発展させて、僕自身も知らなかった土地を巡れるのは楽しいし、支えてくれるスタッフや秋田の方々の協力もあり、続けられています。

――地元との絆も糧にした、この先への将来像も伺いたいです。

高橋　どこで歌っても自由自在に歌える人間でありたいと思っていますね。ミュージシャンとして、満足しきれていないんですよ。たくさんのステージを経験してきましたけど、お腹いっぱいになれたかといえば、小腹を満たし続けて、腹3〜4分目の幸せをいただいてきた感覚があって。後ろ向きなわけではなく、常にほろ苦かったり、これ以上「食べるのはやめよう」とおさえながら活動してきたし、これからも常にハングリーなまま、歌い続けたいです。

PHOTOGRAPHER：TOMO TAMURA,INTERVIEWER：SYUHEI KANEKO,HAIR&MAKE：MASA KAMEDA,STYLIST：DAISUKE KAMII
衣装提供
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