粗探しへと躍起になるこの国で問う「幸せ」ツアーの前泊が習慣化しての変化も

――最新アルバムのタイトル「HAPPY」に込めた思いから、伺います。

高橋優(以下、高橋) 2010年7月のメジャーデビューから15年目で、ずっと歌詞に「幸せ」という言葉を使ってきて、このタイミングで新たに「あなたにとっての幸せは何ですか?」と聞きたかったんです。2024年は1月に国内で大地震があり、世界を見ると戦争がなおも続いている。でも、世の中は「不倫だ」「炎上だ」と、粗探しばかりになっていて。平和な国で、僕が思う「幸せ」とは何かを自分に問いかけると共に、身近でいいから「幸せ」と思っている人がいるかなと、聞いてくださる方に投げかけるタイトルになったと思います。

――リリースにあたってのコメントでは「自分以外の誰かの幸せを願えるようになった」と、心境の変化も明かしていました。

高橋 ここ3〜4年ですね。ツアーのたびに前泊して、巡る土地土地の観光地へ行き、その土地のおいしいものを食べるようになったんです。そこでの経験をライブのMCでネタにしてみると、現地のファンのみなさんも喜んでくれるし、自己満足ではありながら「幸せを分け与えられてる」と実感できたんです。プライベートでも似たように、70代になった両親のためにと毎年一度、コーディネートから現地の案内まで僕が一手にやる家族旅行をプレゼントしていて、それもまた、気持ちの変化があらわれているんだろうと実感してます。

――最新アルバムでも、そうした心境の変化があらわれている曲が?

高橋 全12曲(配信版は全11曲)から、あえて選ぶなら「現下の喝采」です。歌詞の半分は想像なんですけど、もう半分は現実を描いています。誰かと会話していると、ふと、辛らつなことを言ってくる人もいるじゃないですか。そこで、やり返したくなるけど、グッと自分の感情を抑える習慣があって。例えば、イラっとしたときは、頭の中で格闘技のリングを想像しながら「おーっと、高橋選手。ここでグッとこらえて立ち止まった〜!」と実況を唱えてみると、自分の感情を俯瞰で冷静になって捉えることができるんです。この習慣を初めて歌に代えたのが、まさに「現下の喝采」で、誰かが褒めてくれなくても頭の中で「喝采」が起きていれば前向きになれるし、自分にも拍手を送ろうよという思いで書きました。

――CD盤にのみ収録の「はなうた-pray for Akita-」についても、伺えれば。

高橋 近年、地元の秋田県では毎夏に線状降水帯が発生するようになってしまい、豪雨災害の惨状も目の当たりにして、作った曲でした。実際、被害に遭われた現地では、数十年と暮らした家が水浸しとなり手放さざるをえなくなった方がいたり、誰もが昨日までは想像していなかった現実と向き合いながら、それでも「ここで生きていこう」としているんです。その背中を見て「僕も何かできないか」と考えたのが曲の原点で、タイトルのとおり「はなうた」で作りはじめ、インスタライブで披露した曲をバンドバージョンにアレンジして、ようやくリリースできるようになりました。