ボカロがあったからこそ、いろんなアプローチができるようになった

――ボカロにハマったきっかけから教えていただけますか。

Machico 高校生のときにビジュアル系が好きになって。ビジュアル系好きの友達はアニメ好きな子も多かったので、一緒にカラオケに行ったときにアニソンやボカロ楽曲を歌うんです。それで気になった曲を誰が歌っているのか聞いたら、「初音ミクだよ」と教えてくれて。それがきっかけでニコニコ動画を見るようになって、初音ミクだけじゃなくて鏡音リンなど、いろんなキャラクターの音楽を漁っていくうちに、まんまとボカロにハマりました。

――どういうところに魅力を感じたのでしょうか。

Machico 同じ初音ミクのソフトを使っていても、作る方によって声色が変わるじゃないですか。今でこそ「これは〇〇さん家のミクだね」と分かりますが、最初は同じキャラクターなのに、いろんな表現方法があって、こんなに人によってアプローチの仕方が違うんだというのが驚きでした。あと、それまで聴いていた音楽にはなかったような歌詞の表現であったり、楽曲の構成であったりが新鮮で。めちゃくちゃ長い曲もあるし、人間が歌っていないからこそのレンジの広さにも衝撃を受けました。当時はボカロも一般的ではなかったので、そういう音楽を聴いている自分にもグッとくる年頃で(笑)。曲で言うと「恋は戦争」や「右肩の蝶」などが有名で、個人的には「右肩の蝶」で鏡音レンくんにハマりました。そこから、いろんなボカロPさんの個性を知っていきました。

――友達はカラオケでボカロ楽曲を歌いこなしていたんですか。

Machico みんなヘトヘトになりながら歌っていました(笑)。難しい曲を歌いこなして、みんなに褒めてもらいたい気持ちもあって、ボカロ楽曲に採点をかけて、みんなで挑戦していましたね。

――そのときにボカロ楽曲を練習したことが今に活きている面もありますか。

Machico ありますし、ボカロに出会って、かわいい楽曲を好きになったんです。私は地声が高めなので、歌うときはかっこよく見られたい気持ちがあって。当時のJ-POPだと倖田來未さんや宇多田ヒカルさんのように低めの声でかっこよく歌える女性アーティストに憧れていたんです。だから自分でかわいい曲を好んで歌うことはそんなになかったんですが、ボカロに出会ってから、かっこいい曲だけじゃなくて、かわいい曲の魅力に気づいて。独学ですけど、かわいい楽曲に対してのアプローチを模索したことが自分の一部になりました。このお仕事を始めて、キャラクターとして歌を歌っていく中でも、ボカロがあったからこそ、いろんなアプローチができるようになったというのが根底にあるので、私にとっては切っても切れないものです。

――それだけボカロに思い入れがあると、プロセカ(※2020年9月にサービスがスタートしたゲームアプリ「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミクプロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」)の音楽を手掛けるボカロPの方々は眩しい存在ですよね。

Machico 初期のボカロから現在に至るまで第一線で活躍されている方々なので夢のようでした。そもそもミクたちと歌えていること自体が奇跡だし、ミクたちとセリフの中で会話しているのも不思議すぎて。私の名前ではないけど“寧々”とキャラクターの名前を呼んで会話をしてくれていることに感動します。未だにファン意識が強いですね。

――Machicoさんが担当されている草薙寧々は大人っぽい雰囲気ですよね。

Machico 実際に収録するまで、どういうふうに喋るのか分からない状態で不安も大きかったんですが、寧々の設定を見たら、世界で活躍するミュージカル俳優を目指していて、歌にかける想いが強い歌姫と分かって。私も歌が大好きだし、得意という気持ちもあるので、もしかしたら歌のほうでも期待をしてくださって選んでいただいたのかもしれないと考えました。だからこそ今まで以上に歌を頑張って、ハイレベルを出さないといけないというプレッシャーもありましたが、皆さんに助けられながら今も頑張っています。