私がお仕事に抱いている気持ちは寧々と一緒

――寧々の声はどのように作り上げたのでしょうか。

Machico とにかく人との会話が苦手で、しかも毒舌なので、きっと声色は明るくないだろうなというのが初期の寧々を演じるにあたって考えたことで。今みたいに寧々を構築するストーリーがなかったので、低い音でボソボソ喋ることによって、人との距離感が分からないところを表現しました。

――年々、寧々の捉え方は変化しているのでしょうか。

Machico プロセカは4周年を迎えましたが、それまでにいろんなストーリーがあって。初めて寧々でいただいたゲームのイベントストーリーで、もともとミュージカル俳優になりたくて児童劇団に入って、人前で歌ったり、演技をしたりしていたんですが、とあるステージでセリフが出てこなくて、そのショーを台無しにしちゃったのがトラウマになっているんです。そもそも引っ込み思案な性格に鍵がかかって、人前に出ることに対する苦手感が増していくんですよね。でも寧々は自分の気持ちを伝えることが嫌な訳ではないし、歌うことも自分の感動をみんなにも届けたいという気持ちが大きいんです。作品の一部として、歌声で自分を表現したい思いが強い子なんですよね。私とは正反対の性格ではあるんですが、私がお仕事に抱いている気持ちは寧々と一緒だと分かって。そういう前提があって、なぜ寧々は毒舌を言うのかと考えたときに、いろいろ腑に落ちることがありました。

――たとえば、どんなことでしょうか。

Machico メインストーリーあたりで、よく寧々が毒舌を言ってしまう相手がワンダショ(※寧々の所属するユニット「ワンダーランズ×ショウタイム」の略称)の天馬司だったんですが、司は常にポジティブな気持ちで動いていくんですよね。ネガティブな寧々からすると、きっと「理想ばかり言わないでよ!」という苛立ちから出ていたんだと思うんです。その苛立ちも実は司のようになりたかったからで、いろんなトラウマがあって、自分はそうなれなかった。司も辛い経験はしているだろうけど、ネガティブな面を周りに見せないから、寧々には理解できない。そういう背景に気づけたことで、司への言葉も柔らかくなったというか。いろんなストーリーや司の個人イベントを見て、彼の過去を知ると、より寧々の解像度も高くなって。他のワンダショのメンバーと関わるときも、この子の前ではこういう居場所を求めているんだという気持ちを作れるようになってきました。寧々もメンバーに対する愛が深くなったので、寧々と一緒にいろんな壁を乗り越えて来たなと感じます。

――今回の映画化について、初めて聞いたときはどんな気持ちでしたか。

Machico いきなり劇場版というステージに行くんだとビックリしました。それだけ初音ミクというジャンルが確立されている証拠で、こんなに大きいコンテンツになったんだという気持ちが大きかったですし、それに自分も参加させていただけるのは光栄でした。

――初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。

Machico 事前に「どんな映画になるんですか?」と聞いたときに、ゲームとは違うミクが登場しますというお話で、「それってプロセカのミクとは別なんですか?」というところからすり合わせが始まって、脚本をいただいたら本当にゲームとは違うオリジナルだから驚きました。日々の描写がたくさんあって、ちゃんと各ユニットを深掘ってくれている。物語が彼・彼女たちの日常に落とし込んであって、他のユニットとの絡みも無理にくっつけましたじゃなくて、自然に見ることができるので、初めてプロセカを知った方でも各キャラクターの理解度が深まるなと感じました。各ユニットが同じミクを認識しているのも初めてのことなので、みんなで同じミクに手を差し伸べているのは、私的に胸熱というか、なかなかゲームではできない表現だなと思いました。