日頃から自分で曲を作ったり、歌詞を書いたりしている
――先ほど創作のお話もありましたが、今年1月にはっぴいえんどの「12月の雨の日」、シンディ・ローパーの「トゥルー・カラーズ」をカバーした楽曲が収録された7インチ・シングルをリリースしました。
日髙 若手女優を起用した音楽プロジェクト「Mágico」の第3弾としてオファーをいただいたのですが、私自身、芸術活動、芸能活動、表現活動などをする上で根本としてあったのが音楽でした。幼い頃からずっと洋楽を聴いて、それを歌って育ってきたのですが、まさかこういう形で音楽のお仕事をいただけるとは夢にも思っていなかったです。
――本プロジェクトのプロデュースを務め、演奏も手掛けている山本精一さんのことはご存知でしたか。
日髙 アンダーグラウンドの巨匠ということで存じ上げていたので、余計に「まさか……」と思いましたしうれしかったです。
――はっぴいえんどの曲を聴いたことは?
日髙 ありました。この曲をカバーするのは山本さんからの提案だったのですが、学生時代に友人の影響で、「12月の雨の日」を収録した1stアルバム通称“ゆでめん”も聴いていたので胸が躍りました。
――レコーディングはどういう意識で臨みましたか。
日髙 バックの演奏がオリジナルの完コピだったので、自分がどういう解釈をして歌うかに関しては、不安だったりプレッシャーがあったんです。自分にできる表現は何だろうと考えたときに、令和を生きる自分だからこそできる解釈で、昔の曲を再解釈することがいいんじゃないかと思ったので、それを信じて自分のフィルターを通して歌わせていただきました。
――自分のフィルターとはどういうものでしょうか。
日髙 オリジナルを意識し過ぎて、自分じゃない歌い方に変えるのは違うと思ったんです。だからオリジナルから得た印象を、そのまま自分のフィルターを通して歌うことを心がけて。もちろん苦労はしたんですが、素敵な経験になりました。
――山本さんのディレクションはいかがでしたか。
日髙 「12月の雨の日」に関しては、ほぼ一発録りだったんです。レコーディングでは合計二回しか歌っていなくて、最初に歌ったときに山本さんが「すごくいい」と言ってくださって、多少の指示をいただいてからもう一回歌って。その二つのテイクから今世に出ている形になりました。
――これからも音楽活動に力を入れたい気持ちはありますか。
日髙 あります。日頃から自分で曲を作ったり、歌詞を書いたり、いろいろ挑戦しているので、いつか応援してくださっているファンの皆さんの前で発表できたらいいなという野望があります(笑)。
Information
『美晴に傘を』
YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開中!
升 毅 田中美里 日髙麻鈴
和田聰宏 宮本凜音 上原剛史 井上薫 阿南健治
脚本・監督 渋谷 悠
プロデューサー 大川祥吾 渋谷真樹子
撮影監督・共同プロデューサー 早坂 伸 助監督 西 貴人
照明 オカザキタカユキ 録音 寒川聖美 ヘアメイク 岩鎌智美 原 早織(Kleuren)
音響効果 吉方淳二 編集 小堀由起子 音楽 土井あかね
制作プロダクション アイスクライム キアロスクーロ撮影事務所
配給 ギグリーボックス
©️2025 牧羊犬/キアロスクーロ撮影事務所/アイスクライム
北の小さな町の漁師である善次(升毅)は、喧嘩別れをしてから一度も会っていない息子の光雄(和田聰宏)をがんで亡くす。東京で執り行われた葬儀にも出席せず四十九日を迎えようとしていたところに、光雄の妻の透子(田中美里)が娘の美晴(日髙麻鈴)と凛(宮本凜音)を連れて、善次の元を訪ねてくる。善次は、突然の訪問に戸惑い、うまく接することができないが、彼女たちを通して亡き息子に想いを馳せる。透子は、聴覚過敏を持つ自閉症の美晴を守るのに必死だ。「もう自分しかいない」という決意は、夫である光雄が亡くなってから更に強まっている。美晴は、守られてきた世界から一歩でも外に踏み出したいと願うものの、失敗したり不安を感じると、布団を被り夢の中に逃げ込む。そこは、父の光雄が生前病床で書いた『美晴に傘を』という絵本の世界であった。やがて、小さな町の人々との交流も手伝い、善次、透子、美晴は、自分自身の内なる声に耳を傾け始める。
PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:KANAE SAKAGUCHI,STYLIST:MIKI YOON