仕草の人物像や行動パターンが自分と似ていて、共感できるポイントがたくさんあった
――初めて『恋脳 Experiment』の脚本を読んだときから、祷さんが演じた主人公の仕草に共感したそうですね。
祷 キララ(以下、祷) 『恋脳 Experiment』は仕草の成長物語ですが、仕草の人物像や行動パターンが自分と似ていて、共感できるポイントがたくさんあったんですよね。想像できない結末だったんですけど、そこまでの道筋はポイントポイントで仕草に共感できるなと。
――どういうところが似ていると感じたのでしょうか。
祷 仕草は失恋するたびに、どんどん物作りに没頭する。自分も失恋したり、オーディションでやりたかった役が出来なかったり。悔しいことがあると、落ち込むのは落ち込むけど、バーンって仕事に打ち込んだり、いつもより出歩いたりして、ちょっとでも何かに繋げてやろう、これで終わらせて堪るかと強くなるというか、エネルギッシュになるんですよね。それが根底にあって行動しているから、仕草の部分は私にもありますと岡⽥詩歌監督にもお伝えしました。
――大学時代に仕草が交際する平井亜門さん演じる佐伯は、卒業制作の準備がうまく行かない原因は恋愛をしているせいだと仕草に一方的に別れを告げます。そこに共感する部分はありましたか。
祷 私はそういう考えにとらわれないほうが、自分には合っているなと思うんですが、自分のやりたいことに集中する佐伯の気持ちも分かります。佐伯の言っていることは、仕草の立場からすると「えー!」と思ったし、うまく行かない自分に対しての言い訳にもなりうることだけど、そういうタイミングもあるなと思います。
――佐伯も含めて、出て来る男性キャラクターは仕草に酷いことをしますが、どこか憎めないですよね。
祷 岡田監督の書くキャラクターの魅力って、一癖も二癖もあるのに敵がいないというか、悪役を作らない。自分勝手だなと思うけど、みんな憎めないし、こういう部分は自分にもあるよなと思うんです。自分とは遠いキャラクターだとしても、批判したくなるんじゃなくて、「うん。分かる」って刺さるんですよね。嫌だけど、結局好きになっちゃうみたいな。
――役作りの上で準備したことはありましたか。
祷 仕草は年齢も近いですが、やっていることも創作で、自分と共通する部分が多かったので、役を作るというよりは、自分の考え方とすり合わせていくみたいなことがメインでした。ただ仕草は美大に通いますが、美大ってちょっと特殊で。自分は普通の大学に行ったので、分からないことも多かったから、東京藝術大学の卒展を見に行ったり、東京藝術⼤学⼤学院映像研究科を卒業した岡田監督に大学時代のお話を聞いたりしました。岡田監督が撮影準備のためにロケ地の高崎市に入ってからも、長電話してディスカッションすることもありました。
――クランクイン前から密に岡田監督と話し合ったんですね。
祷 もともと喋りたいタイプですし、特にそのときは監督と向き合って作りたいと思っていた時期だったんですよね。岡田監督も疑問に思うこととかあったら、いつでも聞いてほしいというオープンなタイプだったので、かなりコミュニケーションは取りました。
――十代から三十代までの仕草を演じていますが、年齢の変化を表現する難しさはなかったのでしょうか。
祷 最近は、たとえば20歳の役だから20歳っぽくするというのは、果たしてお芝居に必要なのかなと思ったりしていて、そこまで年齢の変化は意識しなかったですね。その時々の年齢で相手とのコミュニケーションの取り方も違いましたし、スタイリングなども変えてもらえたので、完成した作品を観ると、自然と年齢の違いが出ているなと思いました。