今もミュージシャンへの憧れは捨てきれない

――ピアノはいつ頃から弾き始めたんですか。

平岡 『スウィングガールズ』(05)という映画でピアノを弾く役をやったときに初めて弾きました。それからコード程度ですがピアノを弾くようになって。今も趣味がDTMの音源制作だったりするので、日常的に鍵盤には触れているんです。

――ピアノの前に楽器経験はありましたか?

平岡 13歳からエレキギターを弾いていました。学校の文化祭で先輩が弾いている姿を見て、かっこいいなと思って始めたんです。

――当時はどういうアーティストを聴いていたのでしょうか。

平岡 LUNA SEA、GLAYなどのビジュアル系や、B’zもよく聴いていました。

――人前で演奏することもあったんですか。

平岡 文化祭に出たんですが、そのときはドラムを叩きました。当時からDTMみたいなことが好きで、多重録音で1個1個の楽器の音を繋げてピコピコみたいなことをやっていたので、多少はドラムもできたんです。

――ミュージシャンになりたい気持ちもあったのでしょうか。

平岡 ありました。そもそもスタジオミュージシャンになりたくて東京に来たんです。

――先ほど挙げていただいたバンド以降は、どういう音楽遍歴なのでしょうか。

平岡 エリック・クラプトンなどをきっかけに洋楽を聴くようになって、ギターを早弾きできるのがかっこいいなということでイングヴェイ・マルムスティーンやクリス・インペリテリ、ドリーム・シアターなどを聴いていたんですが、当時の日本ではヘヴィメタルは流行っていなくて。そこからポップスを作るべきだとDTMに戻ったんですよね。俳優になってからも音楽は続けていたんですが、ありがたいことにお仕事が忙しくなって。そしたら今度は暇な時間が怖くなって、それを埋めるために音楽をやっています(笑)。

――最近はどんな音楽を聴くんですか?

平岡 音楽の趣味が全く変わって、最近だとずっと真夜中でいいのに。をよく聞いています。曲を作るときも丸サ進行(※椎名林檎の「丸の内サディスティック」に使われているコード進行)なんかを意識したりして(笑)。歌詞にも、より注目するようになりました。だから今回の映画で、菅野監督の音楽スタジオに行ったり、けいちゃんさんのプレイを間近で見たりして、やっぱりプロは違うなと興奮しました。

――今でもミュージシャンになりたい気持ちはありますか。

平岡 そうですね。若い頃にお声がけをいただいて、とあるレーベルと音楽制作していたこともあるんです。結局デビューには至らなかったんですけど、ミュージシャンへの憧れは捨てきれないんですよね。

――音楽制作を続けていることが、お芝居にも活かされている部分はありますか。

平岡 役者をやっていく中で、作品の合間などにお芝居をしない時間があって。その期間、何かを作る作業というのが自分にとっては大切で。役者とは違う視点で物事を見ることができるんですよね。たとえば楽器によって奏でるパートは違いますが、それぞれに鳴らすべき音があって、楽器同士が喧嘩しちゃうと、いびつな曲になってしまう。それをお芝居に置き換えると、主役・脇役に限らず、自分だけ目立とうとすると和が乱れてしまう。音楽制作をすることで、お芝居も俯瞰して見ることができているのかなと思います。