お芝居で得たものは音楽の中にも大事な言葉として出てくる

――ここからは俳優としてのキャリアについてお伺いします。役者業に挑戦しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

山村 20代までは好きなこと、得意なことばかりやってきたのですが、30代になって自分の中でできないと諦めていたことにも挑戦したいと思うようになりました。マラソンを始めたのもそうなんですが、自分の中でキャンペーン的なところがあって。もともと演技にも興味があって、よく舞台も観に行っていたので、一度やってみたいという思いから、先ほどお話に出た「突然ですが、明日結婚します」に出演させていただきました。まさか月9で、あんなに大きな役をいただけるとは思っていなくて。お芝居経験のない僕なんかにおこがましいという思いもありましたが、せっかくもらったチャンスだからと挑戦しました。

――実際に演技をしてみて、思い描いていたものとの違いはありましたか。

山村 違い過ぎました。声を使うという表現方法は、歌にも通ずるものがあると思っていたんです。歌詞も書いていますし、言葉で伝える、歌声で伝える、そのトーンやニュアンス、テンポなどは得意分野かなという気持ちもあったんです。そんな甘い考えは、すぐにへし折られました。今回の作品でも感じたことですが、役を理解するということについて、今まで自分がしてきたことはままごとのようなものだったと気づきました。人を理解するとはこういうことなのかという苦しみもありましたが、そこから得られる新しい世界もあって。それは普通に歌を歌って自分の気持ちを表現するだけでは得られない経験です。他のミュージシャンの方が演技に挑戦するのも、きっとそういう部分なのかなと思います。

――歌詞を書く上での心情表現と、お芝居での感情表現は違いますか?

山村 全然違います。恋愛って好きな人であればあるほど、理解しようとして悩むものですよね。お芝居は、その連続なんですよね。演じる役柄の足跡をたどっていく中で、考えるよりも想像することのほうが多いんです。そこが歌詞とは違う点で、“考える”と“想像”は似たような言葉ですが、やっぱり違うんです。どれだけ、その人のことを考えられるかには想像力が必要で、そこまで僕は歌詞を書いているときに誰かのことを考えていなかったなと。今回の作品で言えば、黒川に100%なることはできないけれど、そこに対して挑戦すること、想像を働かせることが大事なんです。これは演技の話だけでなく、生きていく中でも同じです。人と付き合う中で「この人が今どういう状況なのか」と想像することは、面倒くさいですけど大切なことだと思わされました。

――お芝居の経験が音楽にフィードバックすることはありますか?

山村 すごくあります!今年3月にリリースしたflumpoolのアルバム『Shape the water』も、昨年出演した映画『風の奏の君へ』で得た経験が活かされています。役と向き合う作業は、自分と向き合うことでもあるので、そこで得たものは音楽の中にも大事な言葉として出てきます。

――最後にプライベートについてお聞かせください。時間のあるときはどのように過ごされていますか?

山村 最近はショート動画にはまっています。実は良くないと自覚しているんですが……。現代はタイムパフォーマンスと言われますよね。いかに効率よく情報を吸収するか。でも見ている情報の多くは実はいらないものだと思いながらも、ついつい見てしまう。脳が上手く作られているというか、制作者はうまく仕掛けているなと感じます。

――主にどんなジャンルのショート動画を見ますか?

山村 ドラレコ映像とか、「恋と愛の違い」みたいなどうでもいいテーマについての解説動画も流れてきます。どうでもいいな、必要ないと思いながらも見てしまうんですよ。嫌なんですけど、見させられています。これが仕事に活かせるとは言えませんね(笑)。

Information

「MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です」
カンテレ:毎週木曜深夜0時15分~
フジテレビ:毎週木曜深夜2時15分~
FOD にて 1 週間の先行配信

五百城茉央(乃木坂46)
山村隆太(flumpool)
樋口幸平
山下永玖(ONE N’ ONLY) 桑山隆太(WATWING)
吉名莉瑠 水野響心 花音 つぐみ
利重剛 なすび イワクラ おかやまはじめ 濱正悟 武田梨奈

脚本:伊達さん
音楽:今村左悶
主題歌:「CYM」Billyrrom(SPYGLASS AGENT)
監督:頃安祐良 高橋栄樹 畑山創
プロデューサー:佐藤貴亮(カンテレ)  小宮泰也(イースト) 山中直樹(ROBOT)
制作協力:イースト ROBOT
制作著作:カンテレ

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山村隆太

1985年1月21日生まれ。大阪府出身。flumpoolのボーカルとして活動。2017年、月9ドラマ『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)で俳優デビュー。2024年、『風の奏の君へ』で映画初出演。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE: MICHINORI KIKUCHI,STYLIST:KATSUYUKI HONJO