それぞれ印象に残っている監督の演出とアドバイス
――監督の演出やアドバイスで印象に残っていることを教えてください。
齊藤 私は普段から声のトーンが低いので、思い切って明るくしても、原作のさくらレベルには届かないんです。どうしようかと悩んでいたら、監督から「ミュージカル風にお芝居をすると近づけるかもよ」というアドバイスをいただいて、実践してみたら確かにさくらを掴めた感覚があったので、それをベースに役作りをしました。
八木 細かいところなんですが、春斗が検事を辞めることになって自宅でウイスキーを飲んでいるシーンで、グラスを取るところから始まって、そのグラスを置くところまでを撮影したんです。そこまで撮らなくても成り立つシーンなんですが、どうしてこういう演出なのか考えたんですよね。ちゃんと監督の意図が理解できたのは、完成したドラマを見たときで、一連の動作が使われていたんです。それによって言葉にしなくても、春斗が重い気持ちで考え込んでいる心の動きが伝わって来て、ちゃんと監督には完成したときの画(え)が見えているんだと凄みを感じました。
――お二人は今回、初共演でしたが、最初の頃とドラマがクランクアップした今とで印象に変化はありましたか。
八木 最初にお会いしたのは本読みのときでしたが、ずっと齊藤さんは僕の顔ではなく首あたりを見ていたんです(笑)。そんなこともあって適度な距離感で撮影が進むのかなと思っていたら、クランクインして、お芝居以外の言葉も交わすうちに、お互いにたくさんの共通点が見つかりました。二人のシーンが多かったので支え合う局面も多かったですし、休憩時間もスタッフなど交えてゲームなどをやって過ごしていました。だから顔合わせしたときとは、めちゃくちゃ印象も変わりました。
齊藤 私も最初はクランクアップまであまり喋ることはないだろうなと思っていたんです。私自身、自分から話しかけるのは苦手なタイプですし、おそらく八木さんも同じタイプだろうなと。
――なぜ、そう思ったんですか?
齊藤 すごくクールなイメージがあったので……。
八木 よく言われます。(笑)
齊藤 だから仲良くなれるなんて思ってもいなかったんですが、撮影期間中に自分でも驚くぐらい180度印象が変わりました。今となってはクールとは真逆で、何を言っても面白い方なんですよ。
八木 とてつもなくハードルが上がるな(笑)。