作品はみんな同じスタートラインで一緒に作っていくもの
――キャリアについてもお伺いします。芸能界に入ったきっかけについて教えてください。
曽田 大学時代にやっていたTikTokがバズって事務所にスカウトされたんですが、親が安定した生活を望んでいたので、普通に就活もしていたんです。でも就職するまでに売れれば親も認めてくれるだろうと、大学在学中に事務所に所属したのですが、卒業間近の2020年に出演した『月とオオカミちゃんには騙されない』(ABEMA)で皆さんに知っていただいたことをきっかけに本格的に芸能界に入らせてもらいました。
――「オオカミちゃん」のときは現役大学生ですから、広島での反響もすごかったんじゃないですか?
曽田 正直、ちやほやされて浮かれていました。広島でも「曽田くんですよね?」と声をかけられて、気分だけは芸能人でした(笑)。
――最初から俳優を目指していたのですか?
曽田 そこまで最初は深く考えていなかったです。タレントという選択肢もあったんですが、別に喋りが得意な訳でもないので、その道に進んでも先が短そうだなと思ったんです。それに俳優って「なんかかっこいい」という漠然としたイメージがあって、「じゃあ俳優やります」と自分で選択したんです。当時は事務所に俳優が一人もいなくて、先輩も後輩もいない中でスタートしたので、「どうしよう……」みたいな状況でした。ただ『オレイス(主役の椅子はオレの椅子)』(ABEMA)という俳優育成オーディションバトル番組に出たことが転機となり、役者としての考え方を改めさせられました。
――もともとお芝居に抵抗感はなかったのですか?
曽田 未経験なのに、自分は絶対に演技が上手いという根拠のない自信があったんです。ところが実際にやってみたら、めちゃくちゃ緊張するし、セリフも飛ばしてしまう。すぐに自分の下手さに気づいたのですが、舞台の稽古や映画・ドラマの撮影などを通して、だいぶ鍛えられましたし、徐々にお芝居は楽しいと変換できるようになって。難しいことばかりで葛藤もありましたが、今も模索しながらやっています。
――大学卒業後に本格的な俳優デビューというのは、やや遅めではありますが、逆に良かった部分はありますか?
曽田 4年間、広島の大学に通って、就活で内定ももらって。十代の頃からお芝居をしている役者さんが経験していないことを経験できていると思います。それは技術面ではなくて、「大学生ってこういう感情だよな」みたいな気持ちが分かるのは強みなのかなと。ただ正直なところ、もっと早くからお芝居を始めたかったという気持ちも強いですね。やっぱり早くからやっている方々は、現場での佇まいから板についていて羨ましいです。ただ僕も1,2年ぐらい前から、どう現場にいればいいのかルーティンみたいなのができて。それまではクランクインの日は緊張していましたし、どこか人頼みみたいなところもあったんですが、最近は落ち着いてお芝居ができるようになりました。
――俳優としてターニングポイントになった作品は何でしょうか?
曽田 僕にとって初めての舞台となった『青空ハイライト〜from主役の椅子はオレの椅子」(21)です。上手くできない自分に腹が立ったし、すごく辛かったんですが、やりがいも大きくて。舞台について何も知らない僕に対して、演出家さんは厳しく指導してくださったのですが、その頃は「なんで初めての舞台なのに、こんなに言われなきゃいけないんだろう」と理不尽に感じることもありました。今振り返ってみると、当然のことばかり言われていたと分かるので、愛のあるムチだったんですよね。それに本番で、自分のお芝居でお客さんが目の前で泣いているのを見たときは、めちゃくちゃうれしかったです。
――今回の映画もそうですが、座長のような立場でのプレッシャーはありますか。
曽田 そこに関しては、主演でもプレッシャーを感じないタイプなんです。舞台とドラマでも主演をさせていただいていますが、一役者として携わるという感覚です。作品はみんな同じスタートラインで、一緒に作っていくものだと思っているので、主演どうこうは気にせずにやっています。
――お芝居で壁を感じたことはありますか?
曽田 毎回壁だらけです。上手くいったなと満足できる作品が一本もないんです。でも満足してしまったら、そこで終わりなんだろうと思います。俳優は一生、新たな壁が立ちはだかる仕事だと思っているので、そこは変わらないでしょうね。
Information
広島県知事推奨映画
『惑星ラブソング』
広島県先行公開中
2025年6月13日(金)よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー
曽田陵介 / 秋田汐梨 Chase Ziegler 八嶋智人
西川諄 Raimu 谷村美月 / 川平慈英
さいねい龍二 塚本恋乃葉 西村瑞樹 キコ・ウィルソン 松本裕見子 田口智也 HIPPY
監督・脚本・編集:時川英之
プロデューサー:時川英之 横山雄二
特別協賛:みどりグループ
協賛:オタフクソース モースト 津谷静子 にしき堂 やまだ屋 プローバホールディングス ウメソー 広島電鉄 生活協同組合ひろしま Y-HOTEL薬研堀 ボートレース宮島
ひろぎんホールディングス フューレック
後援:広島県 広島市 広島市教育委員会 広島ユネスコ協会 国連ユニタール協会 鶴学園 広島大学
製作:「惑星ラブソング」製作委員会
©映画「惑星ラブソング」製作委員会
ある日、広島の若者モッチ(曽田陵介)とアヤカ(秋田汐梨)は、謎めいたアメリカ人観光客ジョン(Chase Ziegler)に出会い、広島の街を案内することになる。ジョンには奇妙な力があり、街の至るところで何かを見つけていく。一方、小学校で原爆の歴史を学び怖くなった少年ユウヤはその夜夢を見る。夢の中の少女はユウヤを戦時中の街へと誘う。 広島の街に起こる不思議な物語は混ざり合い、やがて一つの大きな渦になる。この街の過去と現代が交錯し、幻と現実が融合し始める。やがて忘れられていた歌が街に響き、人々はひとつの奇跡に遭遇する。広島から放つ、愛と平和のファンタジー。
曽田陵介
1997年10月24日生まれ。島根県出身。2019年に俳優デビュー。主な出演作にWOWOW「アオハライドSeason1」(23)、WOWOW「アオハライドSeason2」(24)、テレビ朝日「Destiny」(24)、日本テレビ「街並み照らすヤツら」(24)、TBS「笑うマトリョーシカ」(24)、カンテレ・フジテレビ系「スノードロップの初恋」(24)、ABCテレビ・テレビ朝日系「いつか、ヒーロー」(25)、映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(23)、『交換ウソ日記』(23)など。映画『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』が7月4日公開予定、日本テレビ「放送局占拠」が7月より放送予定。本作が映画初主演。
PHOTOGRAPHER:YUU TOMONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE: 中原ありさ(is),STYLIST:岡村春輝(FJYM inc.)