「貴方に晴れ」のラップは人間くさいところを出したかった
――「貴方に晴れ」は、どういうテーマで書いたのでしょうか。
Rin音 倉悠貴さん演じる酒井茂にインスパイアされた曲なんですが、普通は茂のように誰に対しても親切にするのって、後々褒められることを期待しての承認欲求の一部でもあったりします。だから、いろんな人に優しくしちゃうんだけど、内心は他に好きな人がいる。そこには人間誰しも経験したことのある複雑な感情があって、好きな人に振り向いてもらえないだったり、禁断の愛だったり。そういう状況に近いものを茂から感じて、かつ不思議な世界観なのに話がすーっと自分の中に落ちてきて。そこに自分自身の経験則も当てはまっているのが面白いなと思ったので、一人称的な書き方で歌詞を書きました。
――楽曲の後半に感情があふれるようなラップが入ります。
Rin音 自分の場合、普段は冷静を保っておきたいけど、話していくとだんだんと自分の言いたいことがぱーっと溢れるところがあって、冷静じゃない自分が出てくる。それを表現したくて、後半に早めのテンポで、いろんな感情を吐露して、むちゃくちゃなことを言っちゃうみたいな。人間くさいところを出したくてラップにしたんですが、あえて綺麗なままにはしたくなかったんです。
――ラップを取り入れるときの基準はありますか?
Rin音 自分の感情優先でやっちゃうときもありますし、ここでラップを入れたら気持ちいいなと思うこともあるんですが、普通にメロを歌うものと違う聴こえ方をするので、それを生かすというのは今回意識してやりました。たまにやることですが、ここまで感情としてラップを入れるのは珍しいかもしれません。
――主題歌を作っているときに、ある程度、映画の完成形はイメージできているものなんですか。
Rin音 大まかにエンドロールが流れて、そこに音楽が流れるのは想像できるんですが、実際の映像とともに流れたら、きっとイメージとは違うと思うんですよね。今年4月に、福岡が舞台で歌をメインにした『見上げんな!』という劇を観たのですが、演出が松居大悟さんで、その状況によって使われている歌の聴こえ方が全く違ったんです。今回の「scenario」も、完成した作品で聴いたら違う聴こえ方をするだろうし、映画館で聴いたら、また印象が変わると思うんですよね。
――映画制作と楽曲制作で共通していると感じることはありますか。
Rin音 自分の言いたいことを一つの作品にまとめるという点では映画制作も楽曲制作も近いなと思うのでシンパシーを感じます。