観る度に印象が変わる、不思議な力を持っている映画
——映画のメインビジュアルにもなっている海辺のロケーションは、どちらで撮影されたんですか。
新原 神奈川の三浦海岸です。原作そのままの、最高のロケーションでした。勝彦の家は、実際にお住まいになられているお家なので、生活感があって、そこに住んでいる人の息遣いを感じられるような建物でした。ただ三浦海岸の撮影で唯一の後悔があるんです……。
――後悔と言うと?
新原 メインビジュアルの奥に見える青い建物は食堂なんですが、船着き場のようなところにあって、普段から漁師さんたちが利用されていて、一般の方も利用できるらしいんです。撮影場所から歩いて5分くらいのところにあったんですが、事前にGoogleで調べて、料理の写真も見て、美味しそうだなと思っていて。向里さん、新帆さんとも「行きたいね」と話していたんですが、結局一回も行けなくて、すごく後悔しています。遠すぎる場所ではないので、また機会があれば行ってみたいですし、映画のロケーションを見直したいですね。
――寿司屋で食事をするシーンが何度も出てきますが、地元の日常という雰囲気が出ていて良かったです。
新原 家族や友人と食べたり飲んだりするのって、日常では当たり前の光景ですが、そこがちゃんと描かれているのが良かったなと思います。漫画などを実写化するときに、起承転結を上手く作るにあたって、こういう何でもないシーンはカットされがち。でも今回は、そういう何でもない部分も残されていて。僕自身、そこが一番好きなシーンだったりします。そういうところに人間性やキャラクター性が溢れてくるので、そこを大事にしたいんですよね。
――長回しが多かったですよね。
新原 小南監督は長回しを好む方で、カットがかかるまで時間がかかることが多かったです。役者のふとした“何か”を捉えるまで待ちたいというこだわりのある監督なので、僕も求められていることを返してあげたいという気持ちと、負けん気みたいなものがありました。先ほど勝彦を演じるにあたって、あまり作り込まなかったというお話をしましたが、衣装合わせのときに、それを伝えたんです。「僕はセリフを入れていくだけで、その場で感じたものを、感じたテンションで、感じた声色で発したほうが勝彦になると思います」と言ったら、小南監督も同意見だったんですよね。あんまり作り込みすぎると、勝彦のふわふわした、ゆらゆら揺らいでいる、どっちつかずという感じが出ないんですよね。それが長回しによって、より明確になったと思います。
――完成した作品を観て、どんな感想を持ちましたか。
新原 ちょっとお腹が空いてくれるぐらいの映画でいいかなと。もちろん映画を観終わったときに感じることは個々でいろいろあると思いますが、時間が経って、ふと思い出したときに、すーっと入り込んで心に浸透してくる映画だと思いました。
――『YOUNG&FINE』は昨年末から今年2月にかけて何度か先行上映もありましたが、お客さんの反応はいかがでしたか?
新原 ありがたいことに皆さん、勝彦のことが好きと言う人もいれば、嫌いと言う人もいて。大体、初めて観た人は「勝彦が嫌い」「玲子が可哀想」と言うんです。僕のDMにも「勝彦は好きになれませんでした」という感想が届きました。でも2回目を観た人からは、「勝彦に惹かれる瞬間がありました」「勝彦に感情移入する自分がいました」という感想もあったんです。観る度に印象が変わる、不思議な力を持った映画なのかもしれません。
――最後にお忙しい中で、オフの過ごし方を教えてください。
新原 僕は基本的にインドア派で、一人で過ごす時間を大切にしています。だからオフは何かを発散するというよりは、美術館に行ったり、映画や舞台を観に行ったり、自分の中に何かを取り込む時間が多いですね。あとはメンテナンスも大事にしていて、岩盤浴やサウナ、温泉に行ったりもします。
今はすごくインプット欲が強いんですよ。今までやってきた仕事でアウトプットし過ぎて枯渇しているかもしれないので、今後控えている仕事のための本能的なインプットという気もしています。漠然とインプットの数を増やして、自分の中に貯めておくことで、いつしかそれが混ざり合って新しい化学反応が起きるんじゃないかなと期待しています。
Information
『YOUNG&FINE』
新宿武蔵野館他全国順次公開中!
新原泰佑 向里祐香 新帆ゆき ほか
原作:山本直樹『YOUNG&FINE』(「漫画アクション」連載)
脚本:城定秀夫
監督:小南敏也
海辺の町に暮らす高校生・灰野勝彦(新原泰佑)は、同級生の玲子(新帆ゆき)と交際しているが最後の一線を越えさせてもらえず悶々とする日々。そんな勝彦の家に、突然風変わりな高校教師・伊沢(向里祐香)が下宿人として現れる。はじめは警戒しつつ徐々に伊沢と距離を縮めてゆく勝彦と、二人に嫉妬心を燃やす玲子。そして伊沢は誰にも言えないある秘密を抱えていた。性欲と恋心、今を生きる力強さと将来への不安……複雑に絡み合う3人の感情は、やがて思いも寄らない未来へと転がり始めてゆく。
新原泰佑
2000年10月7日生まれ。埼玉県出身。4歳からダンスを習い始め、HIPHOPやJAZZ DANCEなど、様々なジャンルを学ぶ。 “日本一のイケメン高校生”を決める「男子高生ミスターコン2018」にてグランプリ受賞をきっかけに俳優デビュー。近年の主な出演作として、TV「なれの果ての僕ら」(23)、TV「25時、赤坂で」(24)、TV「御上先生」(25)などがある。また、『インヘリタンス‐継承‐』(24)、『球体の球体』(24)など舞台作品への出演も多く、今年2月に2024年の上演作を対象とした第32回読売演劇大賞にて杉村春子賞を受賞。7月21日までミュージカル「梨泰院クラス」に出演中。※10月期に「25時、赤坂で Seoson2」が発表されたので可能だったらいれてください。
PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:浅山ジャスミン莉奈,STYLIST:秋山貴紀
シャツ(グレイ)[参考商品]/ジェットン ショールーム タンクトップ(マーカ)¥15,400/パーキング パンツ(コノロジカ)¥31,900/HEMT PR スニーカー(リプロダクション オブ ファウンド)¥19,250/アイファウンド
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