夏特有の切なさや寂しさも感じさせる心に沁みる1曲で本編は終了

最初のMCパートで、4人それぞれがおなじみの自己紹介を披露すると、メンバーは無事に開催できたことへの喜びや感謝を口にしながら、モノノフにこまめな水分補給を呼びかけていく。今回は炎天下での夏の野外ライブということもあり、適宜そうした声がけや呼びかけがなされていたほか、開場時間を少し遅めに設定したり、水撒きエリアを設置したりするなどの運営側の様々な配慮や工夫も見られた。

バンドやダンサーの紹介を経て、次のブロックはライブ初披露となる読売ジャイアンツ移籍後の田中将大投手の登場曲「Acceleration」でスタート。ロックバンド・PENGUIN RESEARCHの神田ジョンが手がけた疾走感のあるエモーショナルなロックナンバーだ。モノノフがクラップとコールで初パフォーマンスを盛り上げると、夏の超定番曲「ココ☆ナツ」へと続いていく。この曲ではメンバーが水鉄砲を持ってアリーナの客席内を練り歩き、花道に設置されたトロッコに乗ってサブステージへと移動。ひたすら「ココココーコ コッコッコー」と繰り返すサビのフレーズに合わせて、4色のペンライトが小刻みに揺れる圧巻の光景が広がると、和太鼓の演奏から「ROCK THE BOAT」へ。曲間の玉井と佐々木の「揺らしちゃう?」というおなじみのセリフパートでは、モノノフから待ってましたとばかりに大きな歓声が上がる。「ココ☆ナツ」からの対比もあり、大人っぽく鳴り響いた「ROCK THE BOAT」は夕方へと向かっていく時間帯にとてもマッチしていた。さらに、和太鼓をフィーチャーした「ももいろ太鼓どどんが節」では、アリーナ席を囲むように地元のキッズダンサー達が並んでパフォーマンスし、ライブに彩りを添えていたのもとても印象的だった。

ここで、ももクロメンバーが一度ステージを降りると「夏バカ盆踊り2025」という特別コーナーへ。ももクロ楽曲を盆踊り風アレンジで繋いでいきながら、ももクロのヴォイストレーナーを務める岡田実音と事務所の後輩スタプラ研究生が歌唱を、ももクロの振り付けを務めるAnna率いるダンサーチームUNNATURALSと地元のキッズダンサーチームCAN Dance Factoryとみーちゃんずキッズダンサーが盆踊りのパフォーマンスを担当した。ひと時のクールダウンのパートになるかと思いきや、スタプラ研究生やダンサー達の熱量を受けて、モノノフも熱い視線とエールを送っていく。さらに、パフォーマンス終了後には、今回出演した7人のスタプラ研究生による単独公演をサプライズ発表。このように頑張っている事務所の後輩をフィーチャーするあたりが何ともももクロらしい演出だ。

そして、ここから後半戦へ。スフィンクスに扮したDMBのギタリスト・ホワイトマンによるギターソロから「stay gold」が流れ出すと、ももクロ4人がチャイナ風衣装にチェンジして登場。前半戦同様、ブロック1曲目がクラップやコールが加わることでライブ映えするロック曲で始まっていたのが印象的だった。続いては、横浜DeNAベイスターズのヒーローインタビュー時に使用されているステージカーに乗ってアリーナを大回りに移動しながら「行くぜっ!怪盗少女」をパフォーマンス。セットリスト中盤での「怪盗少女」でモノノフのテンションがさらに高まったところで、ロックフェスでたびたび披露されている「孤独の中で鳴るBeatっ!」をスカパンク風アレンジで披露。この曲の頃には横浜のビル群の先にうっすらと夕焼けがみえる時間帯に。そして、ステージカーが上手側で停車すると再びMCパートへ。

PHOTO:上飯坂一

PHOTO:さいちょー

ここでは、今回特別に設置された「グループ応援エリア席」のモノノフをグループ毎に呼びかけてビジョンに映し出して紹介するという粋な演出も見られた。そして、10代、20代、30代…と世代を区切って会場のモノノフに呼びかけると、客席には80代のモノノフの姿も見られたほか、10代未満の通称“チビノフ”の姿もたくさん見られ、改めて、ももクロが老若男女に愛されるグループであることを再認識することに。そして、段々とペンライトが映える時間帯に突入していくと、百田の「さらに最高の思い出作っていきましょう!」との呼びかけから、「走れ!」で次のブロックがスタート。夏を感じる軽快なアレンジが鳴り響く中、4色のペンライトと雲を染めた夕陽の対比がとても美しく、まさにマジックアワーと言える奇跡の瞬間を切り取ったような景色が広がっていた。ラスサビでスタジアムの照明やビジョンの映像が消え、4色のペンライトとモノノフの大合唱で会場がひとつになったところで、バンドマスター宗本康兵のしっとりとしたピアノ演奏から夏の名曲「Hanabi」へ。落ちサビから後半にかけて実際に花火が打ち上がり、夏の切なさも感じられる演出に。この曲ではコールやかけ声など一言も発することなく、4人が歌い紡ぐ姿をじっと見つめるモノノフの姿がとても印象的だった。

再びサブステージへと移動し、「おまえらタオルは好きか?」と煽ると、「BLAST!」で次のブロックへ。すっかりタオル曲として定着したライブ定番曲だ。中盤では、佐々木が「まだまだ足りないよ、もっと回してー!」とさらにモノノフを煽っていく。続いての曲は、「GODSPEED」。「BLAST!」同様にスポーツの応援歌といったメッセージ性の強い楽曲。ももクロらしいポジティブな歌詞でエールを送ると、さらに人気曲「ツヨクツヨク」へと繋いでいく。野外の夏ライブならではの会場中でタオルが回る光景はまさに壮観。この曲ではキッズダンサーも加わり、ももクロのライブらしい一体感と多幸感を生み出していく。そして、このブロックの最後には『ももいろクリスマス2025』の開催をサプライズ発表。今年も12月20日(土)と21日(日)の2日間、埼玉県のさいたまスーパーアリーナでの開催が決まり、会場からは大きな歓声が沸き起こる。改めて、毎年季節毎に集まれることの喜びをももクロとモノノフが共有した瞬間でもあった。

PHOTO:上飯坂一

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PHOTO:増田慶

PHOTO:増田慶

PHOTO:増田慶

そして、最後のブロックでは、7月23日に発売されたばかりの新曲、『機動戦士ガンダム アーセナルベース FORSQUAD』主題歌の「Event Horizon」を披露。インタビューなどで、ももクロとモノノフの関係性にも通ずる曲だと語っていた楽曲だ。暗くなった場内にレーザー照明と花火の演出も加わり、楽曲の世界観をさらに盛り上げていく。特に、「君から見た景色 僕から見た景色」という歌詞を、ももクロとモノノフのことだと捉えて受け止めた人も多かったことだろう。4人の声が重なったサビがエモーショナルに鳴り響き、コールが加わることでさらにライブ映えする楽曲であることも証明。今後のライブでの可能性を感じさせる力強いパフォーマンスを見せると、ラストは「Re:Story」。アコースティックな演奏に乗せて、ステージ中央に4人が並んで座ったまま、「8月のステーション」という歌詞から始まる尊い歌い出しに。楽しいだけではない、夏特有の切なさや寂しさも感じさせる心に沁みる1曲で本編は終了した。

PHOTO:上飯坂一

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