今は自分の作りたいサウンドに全てがかみ合ってきたタイミング
——ここからはEP『BABiES AGAiN』についてお聞きします。タイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか。
Novel Core 『A GREAT FOOL』を作った頃の僕は、根拠のない自信に満ちあふれていて、良い意味でも悪い意味でも何も知らない、ただの音楽が好きな若い少年の状態でメジャーデビューをして。何も知らないから危なっかしいところもいっぱいあったけど、同時に一つひとつのことに感動できていたし、裏を読もうとせずに、純粋に目の前の物事に体当たりでぶつかっていけていた気がしていて。武道館やアリーナなど大きな会場でやって、たくさんの人に見てもらえているありがたい状況の中で、改めてエンターテインメントに対しての向き合い方を考えたときに、たくさん余計なものがつきすぎている自分を感じたんです。もう一度、原点に戻って、初期衝動を更新する。自分自身を最初に突き動かしたものが何だったのかを確認しに帰る必要があったし、それが今回のツアーでもあった。ライブハウスでの魂の交換、お互いに命を削り合いながら、お互いの気持ちをぶつけ合うスタイルでのライブでもあったし、これが自分の生きる道なんだということがしっかり分かりました。だったら楽曲制作の現場でも、小難しいことを考えて、ロジックで曲を作るのではなく、もっと純粋に超感覚的に全てを捉えて音楽と向き合ったほうがいいんじゃないかと思い、赤ちゃんみたいな気持ちで作ろうと考えたんです。
――先行配信された「HANERO!!!」は非常にテクニカルな楽曲ですが、制作過程を教えてください。
Novel Core 作曲面では、僕とJUGEMとギターのクマさん(Yuya Kumagai)が主体で動いて、何度か3人でセッションをして、大まかな原型を作りました。僕の中でのテーマは、ロックとヒップホップが混ざっていて、そこにエレクトリカルな要素も混ざって、曲の内容としてはとにかく最大限バカになれるもの、ボーダーを感じさせないものを作りたいなと。歌詞に“大人も子供も飛び跳ねろ”という言葉が出てきますが、みんながライブでエクササイズのように、永遠にジャンプできる曲ということで作り始めた曲です。難しいことを何も考えずに、リフを考えて、曲の原型をギターで作っていたんですが、途中から僕がこの曲調、このBPMだったら、キーボードのウッチー(Yuki Uchimura)を本来のギターがいる位置ぐらい前に出したいという希望を出させてもらって。ウッチーにもスタジオに来てもらって、キーボードを入れてもらいました。その結果、キーボードが印象的な曲になっています。
――最初から決まっていた訳ではなく、セッションしていくうちにそうなったんですね。
Novel Core 最初からウッチーを前面に出すのは決まっていた訳ではなかったんですが、バンドメンバーそれぞれがどういう立ち位置で、どういう演奏をするか、どういうキャラクターの出し方をするかということを、今回のEPから、より制作の段階から意識して作りました。たとえば「C.O.R.E」であれば、KOTAくんがヒップホップMCを支えるDJとして、ビートメーカーとしていてもらわないといけないし、「EVER EVER GREEN」ではクマさんにロックの要を背負ってもらわないといけない。「HANERO!!!」は響さん(Hibiki Sato)とウッチーに面白いことをやってもらわないといけない。そういう意識が強くあったので、各楽曲を作るタイミングでTHE WILL RABBITSのメンバーの顔を見ながら、相談しながら作ることが多かったです。
——1曲目は「C.O.R.E」です。
Novel Core ビートの打ち方がブーンバップで、生のドラムの音と、ヒップホップのブーンバップトラックに使われる打ち込みのキック、スネア、ハイハットがレイヤーされたミクスチャーサウンドになっています。今回のEPは、「プライド」以外の3曲全てが生のものと打ち込みのものが混ざっている状態になっていて。「C.O.R.E」はEPの中でも、ヒップホップ寄りのサウンド。ブーンバップでラップがメインで、僕の自己紹介ソングみたいな感じで、自分自身の生き方だったり、生き様だったりを歌詞にしている曲です。これはロックフェスとかでバンドセットで歌っても、ちゃんと今の自分の立ち位置を1発で示せる曲だし、逆にDJセットでヒップホップの現場で歌っても、自分がヒップホップ以外にどういう血が流れているのかも、サウンドを聴いてもらえたら分かるし、ラッパーとしてのスタンスも伝わるしという意味合いで作らせてもらいました。
——2曲目に「HANERO!!!」を挟んで、3曲目は「EVER EVER GREEN」。
Novel Core 1990年代後半から2000年代初頭のミクスチャーサウンド。日本も海外も含めてめちゃくちゃ盛り上がっていた当時のミクスチャーシーンのサウンドを今の自分の中で解釈すると、こういうことになるんじゃないかといのが作りたくて書いた曲です。大きなインスピレーション源になっているのはDragon Ashの「Fantasista」で。「あの曲をNovel Coreが作るんだったらこうなるよね」みたいな会話をしたところからスタートしました。明らかに生の音も入っているけど、人間が叩いているドラムのパターンではない。キックとスネアとハイハットのいる位置が明らかに重なっていて、これは人力じゃ絶対に叩けないみたいな、そういう構造もそうだし、サウンド感もそうだし。すごく重たいギターのリフに対して、後ろでSERUMのシンセが鳴っている。そういう帯域が混ざっている感じとかも、当時のDragon AshやTHE MAD CAPSULE MARKETSあたりの雰囲気を踏襲しています。あとは僕のDNAに強めに入っているポップ・パンク、アーティストで言うとSum 41ら辺の雰囲気も強く入れさせてもらっていて。野外フェスなどで歌うのにも強い、新しいライブアンセムになってほしい気持ちがあります。僕の中では「SOBER ROCK vol.2」みたいな立ち位置で考えている曲です。
——初期衝動を大切にしながらも、経験を重ねたからこそ作れた楽曲だと感じました。
Novel Core 昔から作りたかったサウンドが、ここら辺にあったのは間違いないんですけど、歌唱力の面でも、リリックなどのライティングの面でも、当時の自分では再現できなかったというか。バンド経験もなかったので、楽曲制作の舵を取る部分でも、当時の自分には作れなかったんですよね。ようやく自分の技術だったり、仲間の数だったりが、ちゃんと自分の作りたいサウンドにかみ合ってきたタイミングなのかなと感じます。
――EPのラストを飾るのは「プライド」です。
Novel Core 「プライド」はEPの中で一番ミクスチャーから遠くて、サウンドだけで言ったら、完全にロックなんですけど、この曲はどちらかというとメッセージを大事にしたかったんですよね。時代や背景、歴史とか関係なく、誰に対しても同じように届く、普遍的なものが作りたくて、「プライド」を書いたので、こういうサウンドに落ち着いているんです。人の明日以降を大きく変えてしまうパワーが音楽にはあると思っているし、それこそが音楽が背負っている大きな役目だとも思っています。昨日まで生きたくなかった人が、明日以降も生きていく希望を得るのは素晴らしいことだし、意識していきたいんですけど、それと同じぐらい、その人の今までを肯定してあげる力みたいなものも音楽にはあると思っていて、それを大事にしたかったんです。今回のツアーで「プライド」はめちゃくちゃ育ったので、今後もライブのアンセムになっていくし、セットリストに入ってくる機会も多いと思います。