今何かを推している若い人にも見てもらいたい映画

――どうしてファンが増えていったと分析しますか。

酒井 大きかったのは仮面ライダーや戦隊ヒーロー時代のファンが、ほとんどついてこなかったこと。私たちの白川、小田井涼平、友井雄亮というヒーローを演じたかっこいい人たちを、酒井がだまくらかして、よくも己のために演歌・歌謡曲の世界に連れ込んだな、みたいな。そうなると、たとえば白川を応援していた人なら、結成当時の純烈は6人組グループで、白川主役の舞台だったら幾らでも見に行くけど、「なんでうちのイチ推しが1/6やねん。60分やったら10分間しか目立てへん。こんなもん見に行くか!」と、ほとんど来なかった。でも、それが成功の秘訣やった。最初からファンが来てくれたら、いきなり食えて、調子に乗って終わってたと思う。だけど以前からのファンが全く来ないから、演歌・歌謡曲企画のおこぼれでもいいから、突進していこうぜと切り替えられたのが結果的によかった。そこで氷川きよしくんのほうに寄っていったら、誰も見向きもしてくれへんということも分かって(笑)。演歌とも特撮とも関係ないところを掘るしかないと考えた結果、お風呂屋さんに行ったんです。

――白川さんは不安じゃなかったんですか。

白川 人間だから不安にもなるし、昔からついてきてくれるファンの方から、「どうして、あんなダサいことやるの?」みたいなことも面と向かって言われました。いろいろマイナスなことを言われたら、そういうもんかなってなるし、辞めようかなと思ったこともありました。だけどロフトプラスワンのイベントで、約150人のファンの前で、僕と小田井さんとリーダーで「これから僕たちはムード歌謡をやります」という宣言もしていましたからね。そのとき、目の前には「なんで?もっと役者やってよ」とめちゃくちゃ泣いているファンもいたんです。

酒井 「酒井の洗脳だ!」みたいな(笑)。

白川 実際に「洗脳されてない?」と言われたんですよ(笑)。あるとき、小田井さんに相談したら、「僕だって不安だよ。でも一回乗り出しちゃっているから、デビューしなきゃ始まらない。とにかくメジャーデビューを目指そう」と説得されて、ここまで頑張ってきました。こういう結果が出たからいいけど、当時は不安で不安でしょうがなかったですね。

――始まりから紆余曲折あったんですね。

酒井 だれかNETFLIXでドラマにしてくれ。菅田将暉くんが僕を演じてくれよ。絶対にいけるから(笑)。

――最後に映画の見どころをお聞かせください。

酒井 ファンの皆さんはもちろん、今何かを推している若い人にも見てもらいたいですね。人生このままでいいんだろうか?推し活というものが永遠なのか、諦めなくちゃいけないものなのか?これから就職やったり結婚やったり、いろんなことが人生で起こることは明らかな中、この映画に出て来る先人たちを見てください。純烈ファンの60代、70代、80代、下手したら90代、百歳の方たちも、それぞれの境遇があれど、推すことで思いっきりパワフルに生きていらっしゃるんですよね。「これでいいのだ」みたいに、ちょっと背中を押してくれるんです。今くじけそうな状況にいる若い人や、推し活に引け目を感じている若い人たちに見てもらって、やるべきことをやった後は、また推し活ができるんだと。あなたを肯定してくれるスーパースター的存在の純烈ファンが、あなたの未来だと思うので、ぜひとも映画を見て元気になってほしいです。

白川 悩みを抱えている方はたくさんいらっしゃると思うんですが、人間って十人十色で、いろんな生き方があって、いろんな人生設計の仕方があります。この映画には5組のファンが出ていらっしゃるんですけど、それぞれの思いを抱えながら純烈を応援してくれている。怖いものみたさというか、ホラー映画的な要素もあるかもしれませんが(笑)。見終わった後、すごく晴れやかな気持ちになるし、前向きになれる作品なので、ファンの人のみならず、あまり純烈を知らない人にも見てほしいですね。

Information

『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』
2025年9月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか、1週間限定上映中!

「純烈」酒井一圭 白川裕二郎 後上翔太
岩永洋昭 林田達也 小田井涼平 スーパー・ササダンゴ・マシン 小池竹見

ナレーション:今林久弥 プロデューサー:高根順次 監督:岩淵弘樹
配給:NAKACHIKA PICTURES 企画:三角フィルムズ

2024年11月25日。歌謡コーラスグループ「純烈」は、初の武道館公演『純烈魂』を開催した。売れない時代やメンバーの脱退加入など、数々の苦難を乗り越えて華やかな大舞台に辿り着いたメンバーたちに、彼らを支えてきた約8,000人のファンが全国から駆けつけ熱い声援を送った……。そんな涙の武道館の舞台裏にカメラが密着。現メンバーや元メンバー、長年付き添ってきたスタッフから語られる純烈への思い。またその一方で、人生の試練を乗り越えてきたのは純烈だけではなかった——。妊娠中に夫と死別、マルチ商法に手を出したパートナー、別れた旦那が自殺、若い娘に全財産を奪われたなど、さまざまな過去を抱えたファンにもカメラは寄り添い共に会場へ向かう。つらい時も悲しい時も、彼、彼女たちを支える“推し活”とは一体何なのか? なぜ、純烈は愛されるのか? スペースシャワーTVで放送した番組にプラスし、武道館後のメンバー脱退や純烈ファンのその後を追撮、40分の未公開映像を含む映画が完成した。

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純烈

2007年結成。元戦隊ヒーロー俳優中心の3人組ムード歌謡コーラスグループ。メンバーは酒井一圭(リーダー)、白川裕二郎、後上翔太。3年間の準備期間を経て2010年6月23日に「涙の銀座線」でユニバーサルミュージックからメジャーデビュー。「夢は紅白親孝行」を目標に掲げながら温浴施設で地道に活動を続ける姿が“スーパー銭湯アイドル”としてテレビ番組に多数取り上げられ、注目を浴びた。グループ結成から11年後の2018年、『第69回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、現在まで7年連続出場継続中。2022年結成のダチョウ倶楽部とのコラボユニット「純烈♨ダチョウ」では、紅白歌合戦出演の際、有吉弘行さんと7人で「白い雲のように」を歌唱し、大きな話題を呼んだ。2023年、グループを卒業した小田井涼平と入れ替わりで仮面ライダー出身俳優・岩永洋昭が加入し、新生純烈が誕生。2024年は9月に初のオリジナルアルバム『純烈魂 1』を発売、11月25日には初めての単独日本武道館公演「純烈 in 日本武道館「純烈魂」」を開催。満員の約8000人を動員、大成功におさめた。25年は1月明治座、2月新歌舞伎座で座長公演を開催。11月には御園座初座長公演が決定している。3月末で新加入メンバー岩永洋昭が卒業し、オリジナルメンバー3人で新たなスタートを切った。6月23日にメジャーデビュー15周年を迎え、現在は15周年記念曲「二人だけの秘密」をひっさげ、全国ツアーを展開中。

PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI