岡田准一さんの影響でライカユーザーに

――井上監督の演出はいかがでしたか。

遠藤 過去に日露合作映画『ソローキンの見た桜』(19)なども手掛けられていますが、映画作りに独自の哲学や感性があって、それが『男神』にも活かされているなと。個人的には石井岳龍監督の編集を担当していたことが今の作風に大きく影響を与えていると感じます。今回、井上監督が最初に書き上げてきた脚本と、完成した映画は大きくシーンの順番が異なっていて、「この1カットがここに入るんだ」とか、「どうして僕の寄りの表情が、こんなにローキーなのか」とか、細かい部分まで見ごたえがありました。役の心情を編集でも表現しているんですよね。監督自身が編集すると、脚本で読んだものよりも世界観が深くなっているんです。そこには石井イズムが息づいているんだなと、今回の映画を通じて感じました。

――今回は地域の協力も大きかったそうですね。

遠藤 映画を作る上で、監督を筆頭にスタッフ・キャストのみんなで一丸となって、チームでいい作品を作ろうというのが大前提である中、町と行政の方々が、これだけ協力してくださったのは本当にありがたいことです。日進市の山本工務店さんには、劇中に出てくる重機まで貸していただいて、そういうご縁は今後も大事にしたいと思いました。

──重機の操縦はどのように行ったのでしょうか。

遠藤 山本工務店の社員の方々がずっと立ち会ってくださって、撮影現場を見守ってくれていました。岩橋(玄樹)くんと須田(亜香里)さんが演じた重機を使う建設会社で働くキャラクターも、すごくハマっていて。二人の役のアプローチと井上監督のディレクションが上手く融合して、素敵な世界観になっていました。井上監督は重機をかっこよく撮りたい、今まで見たこともないような画を作りたいという思いも強くて、それが上手く映像で表現できていたと思います。

──最後に今ハマっていることを教えていただけますか。

遠藤 カメラを持って街に写真を撮りに行くことです。

──どのメーカーのカメラをお使いですか?

遠藤 ライカです。以前から映画の撮影方法に興味があって、それは写真にも通じる部分があると思っていたんです。それで去年の12月末に、まずライカのQというコンデジを買ったんですが、仕上がりの良さに感動したんです。素人ながらにマニュアルで撮るという楽しさを知って、そこからM型ライカにも手を出すようになりました、YouTubeでカメラマンの萩庭桂太さんがライカについて解説する動画を見て、勉強しています(笑)。

──ライカにハマったきっかけは?

遠藤 二つきっかけがあって、一つは『男神』のエグゼクティブプロデューサーの志賀司さんという方が大のガジェッターで。今回の映画でも志賀さん自身がDJIのドローンで撮影してくださって、それが本編にも使われているんですが、生粋のライカフリークでもあるんです。その時点で僕の知識は皆無だったんですが、現場でライカを見せてもらって、「ライカってめちゃくちゃかっこいいですね」という話から、「すごくいいよ」と勧められたのが一つ。もう一つは11月から配信開始になるNetflixシリーズの『イクサガミ』というドラマに出演させていただいているんですが、主演の岡田准一さんもライカユーザーなんです。岡田さんが現場でSL3という最高峰のライカにNoctiluxという、めちゃめちゃヤバいレンズを付けて撮影をされていて、「うわ、かっこいい!」と思ったのがきっかけです。まんまとハマッてしまって、なんなら今日もQを持ち歩いています(笑)。

Information

『男神』
2025年9月19日(金)全国ロードショー

遠藤雄弥
彩凪翔 岩橋玄樹 須田亜香里 カトウシンスケ
沢田亜矢子 加藤雅也(特別出演) 山本修夢 塚尾桜雅 アナスタシア すずき敬子 大手忍
チャールズ・グラバー 藤野詩音 齋藤守 清水由紀(友情出演) 永倉大輔(友情出演)

監督・脚本:井上雅貴 原案:「男神」(八木商店)
ロケ地:愛知県日進市、岐阜県下呂市 協力 高山市、飛騨・高山観光コンベンション協会
支援 日進市企業ふるさと納税 下呂市ふるさと文化振興助成金
協賛 マテラ化粧品 ワンダーランド そうび社 龍の瞳 イオス コーポレーション 題字:小林芙蓉
2025 年/日本/93分/カラー/シネスコ/5.1ch 配給:平成プロジェクト/配給協力:東京テアトル
©2025「男神」製作委員会

全国各地で母と子の失踪事件が相次ぐなか、ある日、新興住宅地の建設現場に正体不明の深い「穴」が発生する。時を同じくして、そこで働く和田の息子も忽然と姿を消してしまう。その「穴」の先は不思議な森に繋がり、そこでは巫女たちが「男神」を鎮めるため異様な儀式を行っていた。息子がそこに迷い込んだ事を知った和田は、その穴に入っていくが……。

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遠藤雄弥

1987年3⽉20⽇⽣まれ、神奈川県出⾝。2000年に映画『ジュブナイル』(⼭崎貴監督)で主⼈公の少年時代を演じ、映画デビュー。その後は多くのドラマ・映画・舞台に出演。近年の主な出演映画として『HiGH&LOW THE MOVIE』全シリーズ(16〜17/久保茂昭監督)、『幻肢』(14/藤井道⼈監督)『泣き⾍しょったんの奇跡』(18/豊⽥利晃監督)、『それでも、僕は夢を⾒る』(18/⼭⼝健⼈監督)、『無頼』(20/井筒和幸監督)などがあり、2022年には第47回セザール賞オリジナル脚本賞を受賞した『ONODA⼀万夜を越えて』(21/アルチュール・アラリ監督)に主演。以降、『の⽅へ、流れる』(22/⽵⾺靖具監督)『ゴジラ−1.0』(23/⼭崎貴監督)『辰巳』(24/小路紘史監督)『室町無頼』(25/入江悠監督)など、多彩な作品に出演。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:佐々木博美