『ロンリーローリングスター』はこんな俺でもロックスターなんだという思いで書いている曲

――では次の曲『パートナー・イン・クライム』はどんな楽曲でしょうか?

スズキナオト 『ネクター』が過去の青春の曲だとしたら、この曲は今現在の青春を表しています。あと10年後ぐらい経った時に、あの時、青春だったなって思えるような曲にしたいと思って作りました。

――今現在が青春というのはバンド活動そのものが青春ということでしょうか?

スズキナオト そうですね。バンドが僕の青春で、今まさに青春の真っ只中だと思っています。作詞面では、日記のようにその時々で思ったことや起きたことを書いています。地元に昔、ジャスコがあって、その時のことや、ユウスケがツアー中に喉を壊した時に書いた箇所もあります。

――サウンド面はいかがですか?

スズキナオト ザ・ストロークスをイメージした部分があったのですが、みんなの認識と少し違うところがあったので、ギャップはあったかなと思います。

スズキユウスケ 勢いがあるし、サビから始まったり、Aメロに行く時に一気にギアが上がる感じがナオトっぽいなと思いました。

ゆりと 速くて難しかったです。演奏しているときに学生時代の陸上部を思い出して、パッションが大事な曲だなと思いました。

スズキユウスケ レコーディングも大変で、なかなか歌い慣れなかったです。ナオトにディレクションしてもらいながら、最終的にはいい感じに仕上がってよかったです。

――3曲目は『彼女が髪を巻いている』。こちらはユウスケさんが作詞作曲を担当されています。

スズキユウスケ もともと弾き語りの曲で、3日くらいで作りました。Theドーテーズ時代のテンポ感と歌詞の分かりやすさを大事にしました。この曲はバンドじゃなくて、弾き語りでも面白いかなと思いましたが、せっかくなのでバンドで作り込みました。歌詞は彼女が髪を巻いているところを横から見た景色を身近に感じられる様に描いていて、わかりやすいキャッチーさを意識しました。

――弾き語りではなくバンドサウンドで作っていく上で、メンバー間でどんな会話がありました?

スズキナオト 最初はバンドじゃなく弾き語りにしようって提案したのですが、ユウスケが「俺の曲はやる気ないのか」って怒ってしまいました(笑)。

スズキユウスケ ケンカになりました(笑)。

スズキナオト 弾き語りはあくまで一つの提案だったので、バンドサウンドのアレンジもイメージしていました。チープでさらっとしている感じにしたいと思い、イメージ通りに仕上がったかなと思います。

――次は先行リリースされていた『献立』です。

スズキユウスケ お客さんとメンバーが同じ意識で楽しみたいという思いで作った楽曲です。歌詞に「最後のおかわり」というフレーズがありますが、それがアンコールのことを表していたり、“バンド”を献立や食事とかけているのですが、歌詞を考えることがすごく楽しかったです。

――『献立』に限らずですが、ユウスケさんは歌詞から作られることが多いですか?

スズキユウスケ 曲によりますが、歌詞や内容を先に決めることが多いです。特にタイトルはすぐ決めますね。

――『献立』で言うとは、お客さんとの関係性を曲にしてみようというのが先に決まっていたのでしょうか?

スズキユウスケ そうですね。お客さんのことを歌ってみようという想いが先に頭に浮かびました。これまでお客さんのことを歌ったことが無かったんですよね。

――続いて『ロンリーローリングスター』はいかがでしょうか?

スズキユウスケ ロックバンドなので、やっぱりロックスターに憧れる部分があります。10代の頃、かっこいいと思ったバンドみたいに自分はなれているのかなという気持ちと、1人でも僕のことをロックンローラーとかロックスターだと思ってくれる人がいるなら、ロックスター・スズキユウスケになれているんじゃないかとも思っています。バンドを始める少年少女たちにリスペクトされるようなバンドでいたいという思いがあって「こんな俺でもロックスターなんだ」という思いで書いている曲です。サウンドも平成初期のメロディーを意識して、わかりやすさやキャッチーさが出ているかなと思います。

――続いて『正体』。フジテレビスペシャルドラマ『告知事項あり。~その事故物件で起きること~』の主題歌です。

スズキナオト タイアップが決まったときに原作の小説も読みました。ホラーとラウドでおどろおどろしさを出すということをテーマとしてもらっていました。 自分が本の中の住人になった感覚で曲が書けたので、新鮮で楽しかったです。

――アルバムのラストとなるのが『Bowie』です。

スズキナオト ロックンロールで、キャッチーな曲を書こうというところから始まりました。歌詞は自由帳に落書きをするイメージで遊び心を持って書いています。タイトルも最初は「Boy」でしたが、遊び心がある曲ということもあり綴りも変えました。肩の力を抜いて作れた曲だと思います。

――初回限定盤にはTheドーテーズ時代の楽曲を収録した「夏服」も同梱されていますが、このタイミングでTheドーテーズ時代の楽曲をリリースした理由を教えてください。

スズキユウスケ 「ザ・ベスト20」という毎年行っている周年ライブがあるのですが、お客さんに選んでもらう20曲をパフォーマンスする企画で、いつもTheドーテーズ時代の楽曲がランクインしています。ライブでも披露する機会が多いので、作品が聴けないのはもったいないと思っていて、今回リリースすることにしました。

スズキナオト 『エブリデイ・ロックンロール』や『ノーバイブ』は普段のライブでもセットリストに入ることは多いですね。

――逆に「夏服」の収録曲でまだ披露していない曲もありますか?

スズキナオト 『ブサイク』は、今まで収録もしていないし、ライブでも披露したことがない曲です。ユウスケが作った曲ですが、ワンコーラスぐらいしかできていなかったと思います。

スズキユウスケ この曲が収録されると決まってから当時の気持ちで作り直しました。

――ちなみに前身の「ザ・童貞ズ」から「Theドーテーズ」に表記を変更した理由はありますか?

スズキナオト ニュアンスをマイルドにしたかったからだったと思います。

ゆっきー 全く違う名前にするという話になっていたのですが、いいバンド名が思いつかなかったのと、ライブハウスの店長にバンド名は変えないほうがいいと言われたこともあって、カタカナ表記にした記憶があります。