大牟田市の人たちと一緒に映画制作をする環境だった

――五十嵐亜美には、どのような印象を持たれましたか?

筧 台本を読んだときはエネルギーがあって、ずんずんと前に進んでいくような印象があったんですけど、映画全体を通して感じたのは、いろいろ模索しながらも一生懸命生きているんだなと。それが表には見えづらい部分もあって、誰に対しても明るく振る舞う、弱みをあまり見せないタイプです。未熟なところもあるんですが、包み隠さずにダメダメな自分を出しながらも、みんなに力を与えられるような女性で、真っすぐ進んでいるのが印象的なキャラクターでした。

――大牟田での撮影はいかがでしたか?

筧 以前、『向田理髪店』(22)という映画でもお世話になったのですが、映画制作に協力的で、町の人たちと一緒に作るみたいな感覚で撮影のサポートもしていただきました。どこに行っても皆さんフレンドリーで、お店でもよくしてくださるんです。何度も町ぐるみで映画を作る経験をされているので、体制が整っているんですよね。ロケバスも交代で運転してくださって、休みの日は熊本との県境にある温泉街にも連れて行ってもらいました。昭和風情がある街並みで、昔から変わらない景色もまだまだ残っているので、そういう環境で生活しながら撮影できたのは良かったです。

――町の方々との交流もあったんですね。

筧 みなさん「大牟田のラーメンを食べたか?」と気にしてくれていて、滞在している間に大牟田で美味しい豚骨ラーメンを制覇してほしいと言われていたんです。3つの有名店があって、臭み、とんこつの香りが強ければ強いほど、味が濃ければ濃いほど、大牟田の人たちは好きみたいで。段階を踏んで、どんどん臭みの強いお店にチャレンジしていくというのを、町の方のサポートを受けながらやっていました。結局、一番臭みの強いお店には行けてないんですよね。今回の映画の舞台挨拶で大牟田に行くときにチャレンジできたらいいなと思います。

――一カ月ほど大牟田に滞在したそうですが、ラーメン以外の食事はどうしていたんですか?

筧 ホテル暮らしだったのでキッチンがなくて、基本的には外食でした。あとはおにぎりが大好きで、何気なく「朝食で食べたいですね」と話していたら、大牟田のお店の方が、ちょっとでも手作りのものを食べてくださいということで、おにぎりを用意してくださったんです。朝から美味しいおにぎりをいただけて、めちゃめちゃテンションも上がりました。

――地元の名物も食べられたんですか?

筧 「タル弁(イカタル弁当)」という大牟田名物のお弁当があって、イカの唐揚げにタルタルソースが添えられていて、それがのりごはんの上に乗っかっているんです。すごく美味しくて、滞在中はハマっていました。