ふっと心を軽くしてくれるようなメッセージが込められた映画
――大牟田での長期撮影がお芝居に与えた影響もありましたか。
筧 東京と大牟田を往復しながらの撮影だったら、また全然違っていたと思います。今まで海外に長期滞在することはありましたが、国内でこれだけの期間を過ごすことはなかったので、自分の人生においても貴重な時間でした。大牟田は時間がゆっくりと進む印象で、心身ともにリラックスできて、土地柄を感じながらお芝居することもできましたし、泊まり込みの撮影で、映画の世界に浸れる環境だったので役に没頭することができました。
――福山翔大さんとの共演はいかがでしたか。
筧 まっすぐな方で、めちゃくちゃ映画愛が強くて、今回は裏の座長みたいなポジションで引っ張ってもらったという印象があります。同世代ということもあって、福山さんの映画に対する向き合い方を間近で見させてもらって、すごく影響を受けました。
――陣内孝則さんはどんな方でしたか。
筧 良い意味で型破りで、何でも笑い飛ばしてくれて、小さいことは気にしないというイメージ通りの方で、そこに救われました。すごく正直で、良いことは良い、悪いことは悪いとはっきり言ってくれるんです。役柄と同じ距離感で接してくださったので、大先輩ですけど、こちらもそんなに気負わずにできてありがたかったです。
――現場全体の雰囲気はどのようなものでしたか。
筧 本当にバランスのいいメンバーが集まったと思います。地元出身の林田さんは方言指導も含めて、俳優の枠を超えた仕事の仕方をされていて、本当にお世話になりました。そういう林田さんの姿に、みんなが感謝の気持ちを持っていて、いい相乗効果があったと思います。
――最後に映画の見どころをお聞かせください。
筧 いろいろな問題を抱えた、人生でつまずいた経験のある人たちが再生していく物語です。劇中に「過去を反省することも大事だけど、周りの人々を笑顔にすることが生きていく上での使命なんだ」というセリフがありますが、そこは私自身も考えさせられましたし、前を向く力をもらえました。
視聴者的な目線で言うと、あまり語りすぎないところが私好みで、語らなくても、登場人物それぞれが抱えていることや苦悩が伝わってきます。未来に希望が持てるし、エネルギーももらえるし、心が温まって、ふっと心を軽くしてくれるようなメッセージが込められた映画なので、ぜひ映画館まで足を運んでください。
Information
『オオムタアツシの青春』
2025年9月26日(金)より全国公開
筧美和子 福山翔大 林田麻里 / 陣内孝則
監督:瀬木直貴
脚本:松本稔
配給:フリック
Ⓒ2025「オオムタアツシの青春」製作委員会
炭鉱文化の名残ある町、福岡県大牟田市。パティシエの亜美(筧美和子)は夢だった洋菓子店をオープンさせるため、この町にやってきた。しかし共同経営するはずだった友人に見放されひとり途方に暮れていた。ある日、下校途中の少女がケガをしたところに居合わせた亜美は、同じく偶然通りかかった青年・司(福山翔大)と初老の男性・静男(陣内孝則)とともに日菜子を病院に連れて行くことに。この偶然の出会いをきっかけに亜美は、お店の内装の手伝いを彼らに依頼することに。開店にむけて順調に進んでいると思われたが、司と静男には、誰にも話していない大牟田に来た“ある過去”があり……。
PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:小松千鶴,STYLIST:中山友恵