全員で曲の解釈を共有し合うのは「オーディション最終試験の合宿審査」から
――曲を受け取ってからレコーデイングに至るまで『botばっか』を表現するための工夫もあったのではないでしょうか?
凛花 この曲では、メンバーそれぞれに主人公像があります。私はツンデレっぽいキャラクターで「好き」と言いながら棒読みっぽく聞こえるように歌うパートを割り振られました。棒読み感は難しくて、スタジオでも「もう少し棒読みで」と何度も指示をいただきました。曲の終盤では少し気持ちがほぐれるような表現も難しかったのですが、結局はキャラになりきって演じるのが一番だと思って、なりふりかまわず演じ切りました。

美雨 歌謡曲っぽい歌い方が好きですし、歌っていて楽しかったです。普段は落ち着いた低音が得意なのですが、この曲では軽やかで明るい声に意識しています。スタジオでは「明るく活発なお姉さんのように」と言われて、最初は親しみやすくしながらも、後半に向けて少し狂気を帯びるような振り幅も意識しました。曲の終盤では「もっと狂っちゃった感じでお願いします」と指示をいただいて(笑)。しっかり伝えられるように、思い切りました。

百花 私はいつもより可愛い声で歌いました。普段は力強く響かせるタイプなのですが、今回は優雅さ、小悪魔っぽさ、わがまま…と、フレーズごとに雰囲気を変えています。可愛い歌い方って幅が広くて、声の出し方やトーンを細かく切り替えるのが大変でした。他のアイドルさんの歌を聴いて「この声の出し方、可愛いな」と思った方を真似してみたりもしました。

もな 私は百花とは逆で本来、可愛い歌い方が得意です。でもこの曲では物足りなくて、凛花の言っていた棒読み感を上手に反映させるのも大変でした。曲の理解を深めるために、レコーディングに備えて主人公像を自主的に掘り下げました。最初に注目したのは<一目で射止めてすっかりトリコ>のフレーズで、自分の内面を知らない相手が一瞬で「私を好きになってくれた」と主人公が感じたのだと解釈しました。その前提で歌詞を読んでみると、むなしさやあきらめも抱き、見た目の可愛さで自分を守っている女の子が浮かんできて、その背景を歌に乗せました。

――曲で描かれる主人公の内面に迫るアプローチは、これまでも意識してきたんでしょうか?
もな たぶん、グループ結成以前にあったオーディション最終試験の合宿審査からですね。課題曲の歌詞が抽象的で、単語をつかみとるだけでは意味がつかみにくい曲でした。そこで「この振り付けは何を意味しているんだろう?」と一人ひとりが考え出したのが、始まりだったと思います。与えられたパートをただ歌うだけではなくて、それぞれがどんな感情を込めようとしているのかを「みんなで共有した方が、曲全体のストーリーが見えてくる」と気が付きました。パートごとの感情を繋げてみたら、ソロパートにも深みが生まれて、全体で一つの物語をみせられるようになりました。
美雨 歌やダンスをどれほど完璧にしても、そこに「心」が乗っていなければコンセプトの「レトロホラー」を表現しきれないとも思っています。形だけ整っていても中身が空っぽでは何も伝わらないから、どんな曲でも「解釈を深めること」を一番大事にしています。私たちは「天井のないグループ」と評価していただくこともあって、常に「もっとよくできる」の共通認識がメンバーにもありますし、どんな曲でも登場人物になりきって表情や声色を切り替えられる。そんな境地を目指しています。
