春から準備した夏の国内ツアー“カバー曲”ソロ披露で得た新たな自信

――2024年の日本武道館公演。2025年1~2月には海外14都市を巡ったワールドツアーを経て、7~8月には初の国内ツアー「1st JAPAN TOUR『フレイム・メドゥーサ』」で東京・大阪・愛知を回りました。

凛花 基本的なセットリストが変わらないツアーでは毎回、同じ曲であってもどう新しく見せられるかを常に考えていました。全公演を通ってくださる方にも「また同じだな」と思われたくなかったからです。振り付けは変えられなくても、見せ方や表情、細かいニュアンスで進化を感じてもらえるように意識して。グループ全体の見せ方も大事なので、何度も映像を振り返って研究しました。特に1人ひとりの個性が強く出る『ゾクゾク』では、勢いだけでは全員のバランスが崩れてしまうし、グループとしての呼吸を感じながら一つの作品として見せようと心がけました。

美雨 全4公演のうち、1公演目と4公演目では全く違いました。毎回、全力でステージに立ちながら、成長も見据えて挑戦を続けたことでどんどん進化していった感覚もあります。ツアータイトル「フレイム・メドゥーサ」には、モチーフとなったギリシャ神話に登場するメドゥーサのように「一度見たら目を離せない」というメッセージを込めて、海外ツアーも達成できた私たちにとって、初の国内ツアーだったのもあり楽しみでした。コール&レスポンスより、劇場型でストーリー性のあるライブでは「ミュージカルみたい」と言っていただくこともあり、瞬きする間も惜しいほど心を引き付けたいと願っていましたし、ステージでは人数以上の大きな存在感を見せるという理想に近づけたと思います。

百花 ひとつのステージがあって少しの間を置いて、また次のライブがある。そんなリズムのツアー中では、少しの間で考える余裕が生まれるし、初の国内ツアーでは表現をより深く追求できました。同じ曲であっても「表情を変えてみよう」とか「もっと感情を出そう」とか、1曲ごとの解釈がどんどん濃くなっていったんです。9月に初出演させていただいた「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025」のようなフェスでも「遠くのお客さんのところまで歌声を飛ばそう」という意識が強くなりましたし、次にまた同じ場所に立てるときは、胸を張ってステージに立てるはずだと自信も付きました。

もな 春から国内ツアーへの準備ははじまっていて、演出や見せ方をたくさん考えました。でも、たくさんの時間をかけて準備しても、ステージの本番は2時間ほどであっという間なんですよね。だから、伝えることの重さを感じましたし、曲の解釈をどれほど深めても、ステージで伝わらなければ意味がないという思いを噛み締めていました。一瞬の表情や歌声でハイネ(ファンの愛称)のみなさんの心を動かさなければいけないので、1曲ごとに全神経を注いで。4公演あるとしても「初日が踏み台になってはいけない」と思いながら、すべての公演に高い熱量で挑んでいました。

――挑戦という意味ではそれぞれ、ソロで他のアーティストの方々の曲をカバーしていましたね。

もな 自分たちの曲はオリジナルが「正解」と胸を張って言えますが、カバーは違った難しさがありました。私は、東京事変さんの『女の子は誰でも』を歌わせていただきました。事前の打ち合わせは「歌って踊れる曲がいいです」とお伝えして、Adoさんから提案していただいたときに「私らしい」と思いました。既に多くの方々に愛されている楽曲なので、自分のものにできるかが課題だったのですが、単純なコピーとしてカラオケのように見えたら失敗だと思いましたし、披露した約3分間で自分の世界観を凝縮させるつもりでパフォーマンスしました。

凛花 私は元々、椎名林檎さんの曲が好きで「歌いたい」とお伝えしていました。候補の中に『私は猫の目』があって、猫っぽいキャラと言われることも多いので「この曲を私が歌ったらどうなるんだろう」と思って選ばせていただいたんです(笑)。

美雨 披露したのは、biz×ZERA feat LOLUETさんの『Loveit?』です。提案をいただいてから初めて聴いたのですが、一瞬でハマってしまいました。曲調も歌詞も物語も全部好きで、世界観をどう表現するかはすごく悩みました。本家へのリスペクトを忘れずに自分の色を出すため、その物語を自分なりに再構築して、主人公像も自分で設定しました。結果的に「オリジナルと同じようでまったく違う」と自信を持った表現ができました。

百花 私が歌ったのは、ジェニーハイさんの『華奢なリップ』でした。強めの曲調が好きで「やってみたいです」と話していて、Adoさんが提案してくださったので挑戦しました。大人っぽくて強い女性の表現は初めてだったので、今の自分がどう見せられるかをたくさん考えました。アニメや映画を参考に主人公の心情をより深く掘り下げたりして、ラップパートではリズムの取り方も工夫できましたし、新しい発見が多かったです。

――初の国内ツアーを経て、頼もしさを増したのかとも思います。

美雨 これまでは目の前のことをこなすのに精一杯で、私たちもきっと、何ができて何が苦手なのかも分からなかったんです。でも、レッスンやリハーサル、ライブを重ねる中で「ここは伸ばせる」「ここが弱い」というのが明らかになってきたと思いますし、この先への弾みもつきました。

Information

botばっか
2025年11月11日(火)配信リリース

公式サイト

ファントムシータ

「レトロホラー」をコンセプトとした、歌い⼿Adoがプロデュースするアイドル。現代のアイドルを「蝶」とするのなら、 ファントムシータはそんなアイドル業界にとっては異端な存在である「蛾」。 怖いとわかっていても⼿を伸ばしたくなるような、恐ろしくて、美しい。 「アイドル」という⾔葉に相応しいアイドルになって欲しいという願いが込められている。 誰かにとっては新しく、誰かにとっては懐かしい。 本当の⽇本のアイドルがここにいる。

INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO