初主演ドラマでグループ卒業後の未来が見えた

――齊藤さんが本格的にお芝居をやっていこうと思ったのはいつ頃ですか。

齊藤 先ほど話に出た「泥濘の食卓」です。連続ドラマに出させていただくだけでもありがたいのに初主演ということで緊張していたのですが、一つの作品をみんなで作る楽しさを改めて感じて。それまで歌とダンスはたくさんやってきたけど、ほとんどお芝居の世界に触れたことがなくて、やってみたら「もっと学びたい、もっと成長したい」と素直に思ったんです。

――主演のプレッシャーはありませんでしたか。

齊藤 ありました。がっつりドラマにかかわるのも初めての経験で、本読みをしたときに自分の未熟さを痛感して泣いてしまったんです。でも、だからこそ翌日からは「初めての主演だし、ちゃんと覚悟を持って臨まなきゃ!」と心を入れ替えることができました。

――それは悔し泣きだったんですか。

齊藤 そうです。どう頑張っても上手くできなくて。ただクランクイン後には涙を流すことなく、楽しくお芝居ができました。

――歌やダンスでも悔し涙を流した経験はありましたか。

齊藤 あります。歌もダンスもお芝居も、本当にどうしようもない時、悔しすぎて涙が出るんです。でも次の日には復活して、「やるしかない」という気持ちになって吹っ切れるんです。それが成長につながっていくのかなと思います。

――日向坂46の卒業を決意したのもそのタイミングですか。

齊藤 そうです。「これからお芝居を中心にやっていきたい」と、アイドル以外にやりたいものを見つけられて、卒業の決意ができたところはあります。

――それまではアイドル以外の活動は、あまり考えていなかったということでしょうか。

齊藤 歌も大好きですし、アイドルは自分でも向いているなと感じていて、天職だと思っていました。だから、アイドル以外の職業は考えられなかったんです。ただ、年齢を重ねて、新しいメンバーがどんどん入ってくると、やっぱり卒業を視野に入れなきゃいけなくて。でも、他にやりたいことがないから卒業してもな……と思っていたんです。そんなときに、やりたいことを見つけられたので、卒業後の未来が見えたんですよね。

――大好きな歌に対する未練はなかったのでしょうか。

齊藤 歌が好きな気持ちは変わらないですし、また歌えたらいいなと思っています。この前、久しぶりに歌ったら、自分で成長を感じたんですよ。ボイトレなどを受けているわけではないんですが、ずっと音楽を聴いているので、歌い方の幅も広がるみたいです。

――お芝居をやることで、さらに表現力が磨かれた部分もあるのではないでしょうか。

齊藤 そうだとうれしいです。あとアイドルは、歌っている時もかわいい表情を気にしなければいけません。でも今はお芝居でいろんな表情を見せるようになって、「歌っている時の顔の良し悪しはどうでもいいや」と思った時に、前よりも声量が上がったんです。歌に顔は関係ないと感じた時に、表現力に直結したのかもしれないです。今は顔がぐちゃぐちゃになってもいいから、表現力が第一で、また歌を披露できたらなと考えています。