デスラーの「ふっ」が見どころであり聞きどころ

――今作『ヤマトよ永遠に REBEL3199』シリーズについては、どんなイメージをお持ちですか?

山寺 原作に関しては、あまり詳しくないんです。もちろん観たことはありますけど、しっかり作品を観てしまうと、いろんなことを意識してしまい、設定も混乱してしまいます。だから、あえて自分が演じるときには観ないようにしています。今回の『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第四章 水色の乙女』で、いよいよデスラーが出てきて、活躍する機会があってよかったというのが率直な気持ちです。なかなか出てこないから、いつお呼びがかかるんだと思っていました(笑)。

――今作でのデスラーの立ち位置について、どう感じましたか。

山寺 デスラーもいろんな理由があったとはいえ、地球にとって酷いことをした過去がある。でも和平を結んで、ガミラス人は地球でも暮らせるようになりました。前作の『2205』では共通の敵と戦い、古代たちとも心を通わせる。お互いの気持ちが分かるようになってきたところでの再会なんですけど、そこにはスターシャという存在が大きく影響しているんだなと改めて思いました。

――デスラーを演じる上で何か特別なアプローチはされましたか。

山寺 特にこうやってやろうという決め事はなかったです。台本をいただいて、そのセリフがどういうものか、ガミラスが今どういう状況で、デスラーがどういう立場にあって、それぞれの関係がどうなっているかを考えた上で演じる。総監督の福井晴敏さんやヤマトナオミチ監督がどうヤマトを描きたいかに従いました。一つ、すごくこだわったことがあって、デスラーは「ふっ」と笑うことが多いんです。今回も「ふっ」が多くて、その中に何があるかが大事なんですよね。

――大事というと?

山寺 あまり声優経験のない俳優さんが、「どうして気づきのときなどに『うん?』とか『あ!』とか入れるんですか」と仰るんです。生身の人間だったら黙って振り向くだろうと。確かに不自然かもしれないけど、それこそアニメーションの特徴だと思うんですよね。確かに今は画が緻密になって、画の表情である程度の気持ちが分かるけど、実写と比べると全てを表すことは難しい。それを息とか「うん?」とか、そういうもので表現するんです。でもデスラーの「ふっ」はそれとも違っていて、いろんな感情が表れているんですよね。画でも笑っていますけど、口角を上げるのか上げないのか、目と口は開けているのか閉じているのか。そういう違いを表現したうえで、デスラーの気持ちも込めなきゃいけないと思っています。だからデスラーは「ふっ」が見どころ、聞きどころです。本当に馬鹿にしたような「ふっ」なのか、古代への理解を示すような「ふっ」なのか、スターシャの娘サーシャを想う「ふっ」なのか、いろんな意味が込められているんです。もちろん人それぞれ解釈は違ってもいいんです。説明しすぎても良くないですからね。いずれは「百通りの『ふっ』ができる声優」と言われたいですね(笑)。

――今回はデスラーの優しさが随所に滲み出ています。

山寺 デスラーのヤマト側に対する話しかけ方が変わっているんですよね。たとえばヤマトへの協力を頼むとき、あんな言い方を以前はしなかったよなと思いました。ガミラス人を滅亡させてはいけないという思いを持ち続けながらも、協調や和を尊ぶということを、ヤマトや地球から学んだんでしょうね。

――サーシャの存在も大きいですね。

山寺 自分が愛したスターシャの娘ですから、その存在は大きいですし、冒頭にある「これまでのあらすじ」でデスラーが「縁」という言葉を使うのも意外でした。「大いなる和」という言葉も印象的ですが、ヤマトだからこその言葉がキーワードになっていて、今を生きる私たちも大切にしなければいけないことなんだろうなと思います。壮大なSF作品の中に人間ドラマがあって、そこから感じるところがいろいろありますね。