落語にどっぷりとハマった大学時代

――ここからはキャリアについてお伺いします。声優という職業に興味を持ったきっかけを教えてください。

山寺 まさに敬さんのモノマネをしていた頃が原点にあります。『宇宙戦艦ヤマト』を観て、古代進の声が『タイガーマスク』の伊達直人と同じ人だと気づいたんです。それまでは子どもだったので、裏にどんな人がいるかなんて気にせずにアニメを観ていました。でも、そこで初めて「声優」という職業を意識するようになりました。ヤマトで佐渡酒造と徳川彦左衛門を演じた永井一郎さんも、『サザエさん』の波平さんだなとか、声優さんに注目するようになったのがきっかけでした。

――もともとモノマネはお好きだったんですか。

山寺 ちっちゃい頃から大好きで、身近な人から動物の鳴き声まで、ずっと真似し続けていました。それは今も変わらないですね。それで大学時代はモノマネを生かせるものはないかと思って落研(落語研究会)に入ったんです。自分の声で何かを演じることに興味があったんですよね。

――落研に入る前から、落語の知識はあったんですか?

山寺 ほとんど知らなかったです。講談との差も分からなかったし、知っている噺も「まんじゅうこわい」ぐらい。モノマネタレントになりたいという気持ちもあったんですが、それは難しいだろうと諦めて、お笑いサークルみたいなのを探していたら落研があったんです。落語だったらモノマネも生かせそうだし、一人でしゃべって人を笑わせるというのが魅力的に感じたんですよね。

――それで落語にハマっていったと。

山寺 どっぷりハマりました。聞くのも、自分でやるのも面白くてしょうがない。仙台の大学に通っていたんですが、仙台でやる落語会には定期的に通っていました。「仙台落語長屋」なんてよく行ってましたね。年に1、2回、落研の選抜チームで東京遠征して、部費で寄席も回りました。ホール落語の「東横落語会」も面白かったですね。落語の舞台となった場所も回って、本当に楽しかったです。

――その頃、世の中で落語は流行っていたのでしょうか。

山寺 当時は春風亭小朝師匠が大ブームを巻き起こして、上方では桂枝雀師匠が大ブームで、お二人はテレビにしょっちゅう出ていました。深夜の落語番組もあって、僕は同級生の中で唯一ビデオデッキを持っていたので全部録画していたんです。中でも僕は古今亭志ん朝師匠が大好きで、今も憧れの存在です。お弟子さんの古今亭志ん輔師匠が、古今亭朝太を名乗っていた頃に仙台に来たんですが、もちろん観に行きました。生で観たら圧倒的な面白さで、志ん朝一門にものめり込みました。アニメ『昭和元禄落語心中』で二代目 有楽亭助六を演じたときも志ん朝師匠の落語を参考に、自分なりにやってみました。僕の目標は「声優界の志ん朝」なんです。なれる訳がないんですけどね(笑)。今年、悲しいかな、志ん朝さんが亡くなった年齢を超えちゃったんですよ。志ん朝師匠は63歳で亡くなられましたが、僕は今64歳。まだまだ足元にも及ばないですけど、憧れはずっと持ち続けています。

――落語をやっていた経験は、声優の仕事に生きていますか。

山寺 それが僕のルーツだと思っています。声で表現すること、登場人物を演じ分けることは、まさに今の仕事に繋がっていますね。落語を始めた頃は、モノマネ好きだったので全部声を作っていたんです。18歳なのに三遊亭圓楽師匠(五代目)のコピーで「毎度馬鹿馬鹿しいお話を一席。世の中にはケチな人がいたもんでございまして」なんてやっていて。先輩からは「お前は何歳だよ。その声色はおじいちゃんか。落語はそういうものじゃない」と言われました。でも先輩が卒業していなくなると好き勝手やっていました(笑)。志ん朝師匠も相当声を変えているじゃないかと思っていたんですが、後になって、巧いから自然に聞こえるんだと理解しました。

――落語家ではなく声優の道を選んだのはなぜですか。

山寺 田舎の若造が落語でプロになれる訳がないと思ったんです。落研内で一番になろうと必死でしたが、同級生にもライバルはいっぱいいましたし、そもそも標準語がしゃべれない。それで江戸落語なんてできる訳がないと感じていました。落語で生きていける人は少ないけど、声優のほうがチャンスは多いかなと思ったんです。もちろん声優という仕事に興味もありましたしね。

――大学卒業後は俳優養成所に入られたんですよね。

山寺 声優だけではなく、役者の修行もできるし、あわよくば何かに引っかかるんじゃないかと思って入りました。でも俳優って柄でもないし、舞台すら観たことがなかったし、「声優ぐらいならできるんじゃないの?」みたいになめたところもありました。でも結局できちゃったんです(笑)。こうして振り返ってみると、僕のルーツにはモノマネと落語があって、一貫して声でいろんなものを表現することが大好きなんですよね。

Information

『ヤマトよ永遠にREBEL3199 第四章 水色の乙女』
2025年12月24日(水)発売

Blu-ray & DVD 一般発売
Blu-ray:10,780円(税込) / DVD:8,580円(税込)

収録内容:本編99分+映像特典
【Blu-ray】リニアPCM(ステレオ)/AVC/BD50G/16:9〈1080p High Definition〉/日本語字幕付(ON・OFF可能)
【DVD】ドルビーデジタル(ステレオ)/片面2層/16:9(スクイーズ)/ビスタサイズ/日本語字幕付(ON・OFF可能)

[ 初回特典 ]
■メカコレクション [ガイペロン級多層式航宙母艦 バルメス(外洋機動艦隊仕様) クリアライトブルー]
■新規描き下ろし特製スリーブ[加藤直之]
※DVDには【メカコレクション[ガイペロン級多層式航宙母艦 バルメス(外洋機動艦隊仕様) クリアライトブルー]】は付属されません。
[ 映像特典 ]
■第三章 群青のアステロイド ヤマトーク [出演:福井晴敏・ヤマトナオミチ・岡秀樹・玉盛順一朗]
■これまでのあらすじ(本編前上映映像)
■第四章 特報(第一弾・第二弾)
■第四章 劇場予告編
■『ヤマトよ永遠に REBEL3199』今日の科学ビギナーズ (第七回~第九回)
[ 音声特典 ]
■第十三話オーディオコメンタリー [出演:福井晴敏・ヤマトナオミチ・潘めぐみ・畠中祐・中村繪里子]
■第十四話オーディオコメンタリー [出演:福井晴敏・ヤマトナオミチ・潘めぐみ・畠中祐・中村繪里子]
[ 封入特典 ]
■特製記録集
[ 仕様 ]
■新規描き下ろし特製スリーブ[加藤直之]
■新規描き下ろしジャケット[結城信輝]
※特別限定版と共通

◆メインスタッフ
原作:西﨑義展 総監督:福井晴敏 監督:ヤマトナオミチ シリーズ構成・脚本:福井晴敏
脚本:岡秀樹 キャラクターデザイン:結城信輝 メカニカルデザイン:玉盛順一朗・石津泰志・明貴美加
CGプロデューサー:後藤浩幸 CGディレクター:上地正祐 音楽:宮川彬良・兼松衆/宮川泰 音響監督:吉田知弘
アニメーション制作:サテライトアニメーション制作協力:studio MOTHER・YANCHESTER 配給:松竹ODS事業室
製作:宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

◆メインキャスト
古代進:小野大輔 森雪:桑島法子 サーシャ/真田澪:潘めぐみ デスラー:山寺宏一
真田志郎:大塚芳忠 島大介:鈴村健一 土門竜介:畠中祐 揚羽武:上村祐翔
北野誠也:鳥海浩輔 南部康造:松本忍 藤堂信乃:塩田朋子
神崎恵:林原めぐみ 藤堂早紀:高垣彩陽 芹沢虎鉄:玄田哲章 藤堂平九郎:小島敏彦
アルフォン:古川慎 イジドール:堀江瞬 ランベル:江口拓也 サーダ:井上麻里奈 スカルダート:内田直哉

ガミラスの新たな故郷・ガルマン星へ。そこで待っていたのはデスラー総統だけではなかった。17歳へと成長したサーシャ。かつて失われた幼い少女との、ありえない再会。戸惑いと喜びの狭間で、古代の心は揺れる。一方、地球ではマザー・デザリアムの計画が新たな段階を迎えていた。策謀渦巻く社交の場に現れたのは、ドレスに身を包んだ雪。敵であるアルフォンに寄り添う彼女の胸に秘めた覚悟とは――。ガルマン星系にはボラー連邦に従うバース星のラジェンドラ艦隊が侵入。ヤマトは、二大勢力の紛争に巻き込まれていく。迫り来る惑星破壊ミサイル。果たして、ヤマトはガルマン星を救い、「ウラリアの魔女」の正体に迫ることができるのか――!?

公式サイト
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山寺宏一

1961年6月17日生まれ。宮城県出身。大学卒業後の1984年、声優を志して俳優養成所に入所。翌年、アニメ『メガゾーン23』でデビュー。以後、声優として多数のアニメーションや外国映画の吹替えを務める一方、バラエティ番組の司会、ラジオのDJ、映画・ドラマへの出演、歌手としてアルバムをリリースするなど、幅広く活躍中。

PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI