お互いにぶっつけ本番みたいな気持ちで波に乗るように合わせて演じた

――伊藤さんの佐賀弁がナチュラルでした。

伊藤 佐賀弁を指導してくださった方が、事前に録音を送ってくださり、それを聞きながら佐賀弁のイントネーションに慣れていきました。そのおかげで、撮影では自然と佐賀弁が出るようになりました。私は関西出身で、山吹を演じた高杉(真宙)くんは福岡県出身。お互いに地方出身ということもあって方言のニュアンスを掴むのが早く、自然にアドリブも言えました。

深川 かな子は佐賀弁を話さないので、二人の方言を聞いている立場でしたが、私も静岡県出身なので、懐かしさを感じましたし、やっぱり方言っていいなと思いました。

――撮影現場で、お二人はどんなお話をされていたんですか。

深川 役やお芝居について話すことはなくて、全く関係ないことばかりだったよね。

伊藤 うん。プリンの差し入れが届いた時に、「美味しい!」って言い合ったのを覚えている(笑)。かな子と頼ちゃんの関係性も近い訳ではないので、結果的には役柄について話さず、自然体でいて良かったと思います。

深川 事前に関係性を固めるのではなく、お互いにぶっつけ本番のような気持ちで、波に乗るような感覚でした。

――高杉さんとの共演はいかがでしたか。

伊藤 私は3回目の共演で、前回も映画だったのですが、短い間隔での共演に、びっくりしました。なので緊張することもなかったですし、お互いに信頼感もあったのかなと思っています。頼ちゃんと山吹の関係性についても、事前に話し合いはしていなくて、空気を感じ取りながら演じていたので、改めて頼れる存在だなと思いました。特に遊園地のシーンは、素晴らしい景色も相まって、自然な空気感でいられました。

――山吹と頼が子どもたちに読み聞かせをするシーンも息が合っているなと感じました。

伊藤 子どもたちが地元の子たちだったので、すごく自然体で、実際に遊んでいる様子をそのまま撮影しているような感覚でした。撮影が終わった後、子どもたちが泣きながら、高杉くんと私に「帰りたくない!」と言ってくれて感動しました。

深川 私も高杉くんとは、3回目の共演でした。真っすぐでピュアな魅力を持っている方だなという第一印象でしたが、それは今も変わりません。今後、高杉くんが何年、何十年とキャリアを重ねていっても、綺麗で真っすぐな芯がある方だというのは変わらないと思います。今回の山吹は、過去に苦しめられて優しい嘘をついて、みんなの期待に応えようとする難しい役でしたが、高杉くんの持っている人柄が透けて見えているような気がして、魅力的だなと思いました。

――最後にお互いの演技で印象に残ったシーンをお聞かせください。

深川 山吹と頼ちゃんがバス停で話しているシーンが大好きです。頼ちゃんがもじもじして、ゆったりした時間が流れるところが心地よくて。自然体な表情や照れるところを演じている万理華が好きだなと思いながら試写を見ていました。

伊藤 初めて脚本を読んだ時に、かな子をまいまいが演じるという驚きもありましたが、同時に素敵なキャスティングだなと思ったんです。普段のまいまいは柔らかい人なので、かな子とは真逆なタイプ。試写で見た時に、そのギャップが活かされているなと感じました。かな子の抱えているものが大きくて、すごく胸が痛くなりましたし、特にクライマックスで山吹と対面しているかな子の表情をスクリーンで見た時に、二人の空気に圧倒されて、本当にすごいなと。こんなに感情を豊かに出せるまいまいを尊敬しています。

深川 ほめ過ぎだよ(笑)。

伊藤 そんなことないから!

Information

『架空の犬と嘘をつく猫』
2026年1月9日(金)TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー

高杉真宙
伊藤万理華 深川麻衣 安藤裕子 向里祐香 ヒコロヒー
鈴木砂羽 松岡依郁美 森田 想 高尾悠希 後藤剛範 長友郁真 はなわ
/安田 顕 余 貴美子 柄本 明 ほか

監督:森ガキ侑大
脚本:菅野友恵
原作:寺地はるな『架空の犬と嘘をつく猫』(中央公論新社刊)
音楽: Cali Wang
配給:ポニーキャニオン
©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

弟の死が受け入れられない母のため、弟のフリをして母に手紙を書き続ける、小学生の山吹。空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、夢を語ってばかりの適当な祖父と“噓”を扱い仕事をする祖母、そして“嘘と嘘つきが嫌い”な姉。一つ屋根の下に住んでいながらもバラバラに生きている家族の中で山吹は今日も嘘をつきながら成長していく。

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伊藤万理華

1996年2月20日生まれ。大阪府出身。主演映画『サマーフィルムにのって』(20)でTAMA映画賞最優秀新進女優賞、日本映画批評家大賞新人女優賞を受賞。以降『もっと超越した所へ。』(22)、『そばかす』(22)、『女優は泣かない』(23)、『チャチャ』(24)、『港に灯(ひ)がともる』(25)、『悪い夏』(25)など、多数の映画に出演。22年には書籍「LIKEA」を刊行、個展「MARIKA ITO LIKE A EXHIBITION LIKEA」を開催するなど、カルチャーアイコンとしても注目されている。

深川麻衣

1991年3月29日生まれ。静岡県出身。初主演映画『パンとバスと二度目のハツコイ』(18)でスクリーンデビューを果たすと、第10回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。以降『愛がなんだ』(19)、『パレード』(24)などに出演、『おもいで写眞』(21)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(23)、『嗤う蟲』(25)、『ぶぶ漬けどうどす』(25)などで主演を務める。公開待機作に『終点のあの子』(26)がある。

PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:kika(伊藤) MURAKAMI AYA(深川),STYLIST:Wada Miri(伊藤) 山口香穂(深川),衣装協力(伊藤):Mifi Mifi、everyone’s mother(ともにSEASON)、LORO、KATIM