ターニングポイントになったミュージカル『DAICHI』

――ここからはキャリアについてもお聞きします。早くからお芝居を始めているんですよね。

内藤 元々は両親が子供劇団みたいなところに入れてくれて、そこでお芝居だけではなく、ダンスにも出会いました。初舞台は小学6年生の時で、それがすごく楽しかったという印象が強くて、ずっとキャッキャッ騒いでいたイメージがあります。小学校卒業の時の文集では、「将来何になりたいか」という質問に、「歌って踊れる農家になりたい」と書いていました(笑)。

――農家というのは、どこから出てきたんですか。

内藤 横須賀出身なんですけど、実家で家庭菜園をやっていて、野菜を育てるのが楽しかったんです。

――当時から舞台度胸はあったのでしょうか。

内藤 あまり緊張した記憶がないですね。二十歳を超えて『テニミュ(ミュージカル・テニスの王子様)』に出ていた時も緊張はなかったんです。本番が始まる30分前には衣装を着て、舞台上でアップしているくらいリラックスしていて、とにかく楽しかったんです。でも大人になるに従って、本番前の緊張感が高まっている気がします。今は5分前くらいに袖に入って、ルーティンをやらないと不安になるくらい緊張します。自分の感覚は信頼しているので、恐れているわけではないんですけどね。

――ちなみに農家の夢はいつ諦めたんですか。

内藤 僕は食べられない野菜が多いんですよ。家庭菜園で作ったミニトマトも食べられなかったですから。

――本格的にお芝居でやっていこうと思った作品は何でしょうか。

内藤 2017年にマリウス役で出演したミュージカル『レ・ミゼラブル』です。この舞台のオーディションに受からなかったら、役者を辞めて、どこかに行こうかなと思っていたんです。

――なぜ、辞めようと思ったのですか。

内藤 2015年と2016年に『DAICHI』というミュージカルに出演したんですが、まさしく実在する北海道の農家さんのお話だったんです。無農薬で作物を育てているご夫婦がいらっしゃって、大地くんという息子さんを亡くされたんです。その時にご夫婦は、大地くんに寄り添ってくれた花や作物にありがとうと言葉をかけて育てていくことに気づいた、という実話をミュージカルにした作品でした。僕は大地くんを演じたんですが、そのご夫婦がミュージカルを気に入ってくださり、新鮮な野菜を送ってくださって、野菜嫌いな僕でも美味しくて食べられたんです。それで「役者として行き場がなくなったら、北海道に行かせてもらってもいいですか」みたいな話もしていたんです。

――実際に役者として行き詰っていた時期だったのでしょうか。

内藤 当時は二十代後半と辞めていく俳優仲間もいる年齢で、どこか他の道もあるんじゃないかと思っていたんです。そんな時に『DAICHI』があって、毎日がとても楽しくて、気がついたら稽古も本番も終わっていたという感覚でした。ターニングポイントだったんでしょうね。舞台では、すでに大地くんは亡くなっているけど、舞台上にいて、みんなの成り行きを見守って、時にはアシストするという役だったんです。そういう俯瞰するような、他のキャストを見守るという役の面白さを教えてもらった作品でもありました。その後、『刀剣乱舞』で演じた監査官も、みんなを促す役でしたしね。

――最後に改めて『TRIANGLE』の見どころを教えてください。

内藤 伊藤さんが本当に細かくキャラクターと設定を作っていて、伏線も含めて、しっかりと世界観が作りこまれているんです。だから役者は迷子になることがないし、お客様は考察を楽しめる。自由に想像できる余白がたくさんあるし、こちらとしても答えは持っている。演劇好きもミステリー好きにも刺さる作品だと思います。セットしかり、僕たちの言動、目線一つがお客様のフックになって、それによって伏線回収できたり、より謎に思ってくれたり、お客様が一緒に見ながら思考してくれたらいいなと。一緒に作品を探っていくという楽しみを『TRIANGLE』で見つけてもらえたらうれしいです。

Information

舞台『TRIANGLE』

日程:2026年2月20日(金)~2月23日(祝・月)
会場:新宿村LIVE
脚本/演出:伊藤裕一
出演:内藤大希 前島亜美 陣慶昭

新人ライターの山口弓(前島亜美)は、有名作家・上川大也(内藤大希)の作品は全て読むほどの熱心な読者でもある。今回、新作プロモーションを兼ねた、上川のインタビューを担当することになり、リモートで取材を始める。穏やかで知的な上川との会話は和やかに進んでいく。人からインスピレーションを貰って、作品に反映させることが多い、という上川は、山口の話す山口自身のことにも興味を持ち会話が弾んでいく……やがて、その会話中に、『少年』が上川のリモート画面に映り込む。「姉の子供」が遊びに来ていると言う上川だが…。「あの子たちを、僕は作品に焼き付けて、価値あるものにしたんです」。 上川の吐露の先に待つものとは。

公式サイト

内藤大希

1988年2月18日生まれ。神奈川県出身。幼少時より現在まで、数々のミュージカル、ストレートプレイ、コンサート等、幅広い舞台で活躍を続けている。近年の主な出演作は、 ミュージカル「メリー・ポピンズ」ロバートソン・アイ 役、ミュージカル『のだめカンタービレ』 奥山真澄 役、ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」パーチック 役など。3月にはTipTap 20周年記念公演 第一弾 ミュージカル『星の数ほど夜を数えて』、5月は舞台『魔法使いの約束』きみに花を、空に魔法を 後編 オヴィシウス 役への出演が控えている。

PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:武井優子 ,STYLIST:中村剛(ハレテル)