友人の失恋がきっかけでできた曲も。『ハッピーエンドは未配達』収録曲全曲解説

――ここからはダイジェスト的にはなりますが、アルバム収録曲について聞かせてください。まずは1曲目のリード曲「ユートピアで眠りたい」について。ファーストアルバムですから、曲順も拘った部分なのではないでしょうか?

八生 そうですね。派手に始まる感じが良いかなと思ってこの曲を1曲目にしました。実は、この曲はきっかけをくれた友達がいまして…。ある時、彼女が大失恋をしたんです。深夜に突然電話がかかってきて、出たら受話器の向こうで泣いてるわけですよ。「どうした?」って聞いたら、「彼が出て行ってしまって眠れない。同じ部屋なのにまったく違う部屋になってしまった。どうしたらいい?」といった感じで散々話した最後に「これで歌書いてや」と言ってきたので、「言われなくても書くよ」と答えて(笑)。そんな流れからできた曲です。一緒に生活をしてきた中から、恋人という大切な存在が消えていく悲しみや苦しみといった部分を書きたいなと思いました。私は第三者として友達の愚痴も聞いている分、クソみたいな男だなとも思いましたけど、本人にとっては幸せだった時の記憶もあるわけなので、幸せだった頃の記憶もしっかり感じられるような、余韻に浸れるような歌にしたいなと思って書き上げました。ちなみに、この曲だけじゃなく「しゅらばんばん」と「オニオンスープ」もその子の失恋話から書いた歌です。

――2曲目がその「しゅらばんばん」です。この曲はドラマ主題歌ということで、八生さんを知ってもらうきっかけにもなった曲だと思いますが、この曲はどのように作られたのですか?

八生 しゅらばんばんは、浮気された女たちが復讐する歌で、世の中の浮気男は全員土になるまで土下座しろ!という思いで作りました。実際に自分が浮気女の立場だったと判明したことがあり、本命彼女と彼の家で待ち伏せて、帰ってきた野郎に罵詈雑言を吐き散らかしました。偶然にもドラマとしゅらばんばんの世界観がピッタリ合ったことで、監督の耳にとまり、主題歌に決まりました。

――確かに、怒りという感情に任せて書いたというか、その勢いが伝わるような曲でした。そして、「大感謝祭!」。こちらはイントロから多幸感溢れる曲だなという印象です。

八生 この曲はお祭りなので、パーティー感がある感じにしたいなと思い、ブラスが入るといいなと思いながらアレンジや出来上がりを想像しながら作りました。ライブで再現された時にはとてもハッピーな感じで盛り上がる曲だと思います。「弱々星人」などと歌っているのですが、落ちサビでクラップが生まれて、笑顔で楽しそうに聴いてくれたら嬉しいなと思います。

――続いて、4曲目は「ドリーマーズ」。メッセージソングとして色々な人の背中を押すような曲にも見えつつ、一方では、八生さんご自身を鼓舞するような曲なのかなとも感じましたが、いかがでしょうか?

八生 夢を追いかけている途中の歌なのですが、もちろん今の自分もそうなので、その姿をしっかりと丁寧に表現したいなと思って作りました。1人で夢を描いていたとしても、夢を追いかけている途中には、自分より前を進んでいる仲間やライバルがいると思うんですよね。歌詞の中ではそれを“君”と表現しています。その存在が遠くにいることによって、自分の現在地が分かってより悔しいと思う感情などを表現しています。夢を追う途中の苦しい気持ちだけではなく、時にそんな自分を引っ張り上げてくれるライバルという尊い存在のことも書きたくて作った曲です。

――そして、5曲目がまたまたお友達の失恋がきっかけでできたという「オニオンスープ」です。

八生 その友達はめちゃめちゃ料理が上手で、いつも彼のために手料理を作っていたんですね。そんな彼女と失恋話をしている時に出た「玉ねぎを切っている時はどれだけ泣いても玉ねぎのせいにできる」という話からヒントを得て書き始めました。

――ちなみに、この曲を聴いたお友達の反応はいかがでしたか?

八生 「聴いたよ。めっちゃ前の話やん」と笑っていました(笑)。でも、「いいバラードだよね」と言ってもらえたのでとても嬉しかったです。

――この曲は既に昨年12月に配信リリースされていますが、ファンやリスナーの方の反応や反響はいかがでしたか?

八生 DMなどで女性の方から「いい曲ですね」と言っていただくことが多かったです。相手のことを思って料理を作るという温かい気持ちを思い出したといった感想もいただけて嬉しかったです。曲を作った時には、ただただ強がっている切ない歌だと思っていたんですけど、(リスナーからの反応を見て)温かさも感じられる歌になっているんだなと気付かせてもらえました。

――続いて「線」。やや憂いを感じつつもアレンジ面ではポップな印象も受けましたが、この曲は八生さんにとってどのような曲でしょうか?

八生 自分の根っこになっている部分を思いっきり表現できた歌だなと思っています。根は明るい人間なんですけど、いつも人の目を気にしているので…。自分を守ることと人に優しくすることは本来両立できることなんですけど、私はそれが上手にできなくて、大人になった今でも変わらない。そんなところを書きたくて作った曲です。よく「救いがない歌詞」だとも言われるのですが、ちゃんと今思っていることを丁寧に書けた曲だなと自分では思っています。