メッセージ性よりもパッと見て面白いかが重要
――今回の作品は、前作以上にスピーディーでキャラクターたちが縦横無尽に動き回っていて、映画的な躍動感に満ち溢れていました。あれだけ様々な角度から空間を描くのは難しかったのではないでしょうか。
西野 STUDIO4℃の田中(栄子)さんには「やめて」って言われるんですよ(笑)。要するにシーンをあっちゃこっちゃ動かすと、その分の工数が増えるんです。町を作ったりしなきゃいけないですからね。どうしても、こういうインタビューの時って、「作品のテーマがどうこう」という話になりがちじゃないですか。それも重要なことなんですが、一方で自分が子どもの頃に映画を観る時って、あんまりメッセージは気にしていなかったんですよね。そんなことよりもパッと見て面白いかが重要で。いまだに僕は『ネバーエンディング・ストーリー』(84)や『ゴーストバスターズ』(84)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)に秘められたメッセージを知らないし、なんか楽しいなと。
吉原 そうそう。知らないよね。
西野 『ルパン三世 カリオストロの城』(79)なんかも、テーマは分からなくても、ルパンが躍動しているだけで楽しかった。そこは忘れたくないというか、ボーッと観ているだけでも面白いって、やっぱり動きがないとダメなんですよね。絵本を描く時でも、「あの煙突に登りたいな」「あの橋を渡りたいな」と思わせることを強く意識していたんです。ぱっと見の面白さは大切ですよね。
吉原 僕は脚本を読んでいても、なかなか世界観まではイメージできないんです。ましてや今回は空間の把握がなかなかできなくて、どこにいるんだろうと思いながら読んでいたんですが(笑)。西野さんの頭の中には、ちゃんと答えがあって、それを現場で出していくのを見るたびに、「そうなんだ」と納得できるんですよね。特に印象的だったのは、まさかナギが下にいるんだと。
西野 そこが面白くて、実は光夫さんと作っているミュージカルの美術チームが『映画 えんとつ町のプペル』と一緒なんですよ。今回も脚本の段階から入ってもらったんですが、美術設定の佐藤央一さんが出したアイデアがあって。今回の映画の舞台となる「千年砦」はルビッチが想像した世界で、ルビッチが持っている情報の中で構築されていると。ルビッチはえんとつ町の煙の中で育っていて、そもそも木すらないから、森の情報は文字で仕入れているんですね。だから、「森の深いところ」という言葉を聞いた時、森を知っている僕たちは横方向に奥を想像するけど、森を全く知らない人がその言葉を聞いたら、「深い」というのは縦移動、つまり下なんじゃないかと。それで佐藤さんが森を下に描いたんです。「じゃあ、そこへ行くには乗り物が必要だよね」という話になって、その後に乗り物ができていった。この順番なんです。

――発想が実写映画に近いですね。
西野 うちのチームは最初の段階から全員で合宿して、脚本家も振付師も美術も照明も演出も全員一緒にせーので始めるんですよ。順番に依頼していくんじゃなくて、最初からみんないる。そうすると「ここはダンスで表現したほうがセリフより伝わる」という提案が出てきて脚本が変わったり、思わぬ方向に転がっていく。骨組みはあるけど、そうやっていろんな方のアイデアをいただいて、どんどん変化していくんです。
――音楽も重要なキーワードになっていますが、小芝さんはナギとして歌唱シーンを披露しています。
小芝 歌をレコーディングした時は、ナギとガスのシーンしか観ていなかったのですが、すべてのシーンがつながった時に、改めて歌の意味が明確になって、より感動しました。ナギが歌っているところにガスが一目惚れするという出会いのシーンがあって、大事なシーンだとは思っていたんですが、その歌詞の意味が後半でバーンとマッチングして、鳥肌が立って。台本では気づけなかった伏線が、映像や音楽で次々と回収されていくのが楽しかったです。
――小芝さんは完成した映画を観て、どんなことを感じましたか。
小芝 泣きました(笑)。辛いから前に進もうと決断したルビッチと、辛くても信じて待つと決めたガス。両方の気持ちがすごく分かるし、そこに触れた時のルビッチの感情の動きは、大人が観ても心にくるものがありました。

――ちなみに豪華声優陣の中で、なぜ宿敵である東野幸治さんをキャスティングしたのでしょうか。
西野 リズム感やトーンをぶち壊してくれる人が欲しかったんです。それで東野さんにお願いしたんですが、数日前に改めて観返したら最低なんですよ(笑)。ちゃんとクソ棒読みだし、狙って音痴なんじゃなくてガチ音痴で(笑)。
小芝 へー!狙ったわけじゃないんですね(笑)。たっぷり歌ってくださっていますよね。
西野 でも、それがニヤッとしてしまうんですよね。
――最後に西野さんから、映画の見どころを教えてください。
西野 やっぱり1作目を超えなきゃ意味がないと思っているんです。1作目は「自分を信じる」という話でした。その上位互換というか、それよりも強い覚悟は何かというと、「相手を信じる」ということが必要なんですよ。意外と僕たちはこれができなくなっていて、足の遅い人を切り捨てたり、待てなくなっている。「早く行きたければ一人で行け、遠くに行きたければみんなで行け」というアフリカのことわざがあるんですが、強いチームを作ろうと思ったらその精神じゃないと強くならない。チームで動いていると本当にそれを感じるんです。だから「待つ」ということと改めて向き合ってほしいなと。それが伝わるとうれしいです。
Information

『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』
絶賛公開中
出演:永瀬ゆずな 窪田正孝 / MEGUMI
小芝風花 吉原光夫 土屋アンナ 山寺宏一
藤森慎吾 伊藤沙莉 / 東野幸治 錦鯉 / 森久保祥太郎
製作総指揮・原作・脚本:西野亮廣
監督:廣田裕介
アニメーション制作:STUDIO4℃
原案:「チックタック ~約束の時計台~」にしのあきひろ著(幻冬舎)
主題歌:「えんとつ町のプペル」ロザリーナ(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:東宝・CHIMNEY TOWN
©️ 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会
大切な親友・ゴミ人間のプペルを失い、悲しみに暮れていた少年・ルビッチ。しかし、信じて待つことを諦め、前に進みだそうとしていた彼はある⽇、時を支配する異世界“千年砦”へと迷い込んでしまう。時を刻まなくなった時計は処分されるこの世界で壊れてないのに、11時59分で止まっている不思議な時計台があった。ルビッチが元の世界に戻る唯一の方法は、「止まってしまったこの時計台を動かす」こと。新たな相棒の異世界ネコのモフと共に時計台の謎を追うルビッチはやがて、100年間約束を信じて待ち続ける男・ガスと出会い、人に化けた植物・ナギの叶わぬ約束の物語を知る。 ルビッチがもう一度“信じる勇気”を取り戻したとき、ハロウィンの夜に奇跡が起こる。
西野亮廣
1980年7月3日生まれ、兵庫県出身。芸人・童話作家。著書として、絵本に「Dr.インクの星空キネマ」「えんとつ町のプペル」「チックタック ~約束の時計台~」など、小説に「グッド・ コマーシャル」、ビジネス書に「革命のファンファーレ」「新世界」「ゴミ人間」「夢と金」などがあり、全作ベストセラーとなる。2020年に公開の『映画 えんとつ町のプペル』では原作・脚本・製作総指揮を務め、大ヒットを記録、海外でも高く評価される。原作・脚本・製作総指揮を務めたコマ撮り短編映画『ボトルジョージ』(2024)は、米アカデミー賞®︎のショートリスト入りを果たし、世界中の映画賞を数々受賞。 ブロードウェイで、ミュージカル『CHIMNEY TOWN』の制作を進める他、2025年にデンゼル・ワシントン主演の舞台「OTHELLO(オセロ)」の共同プロデューサーを務め、同作はブロードウェイ3週連続1位に輝く。2025年夏には製作費4.5億円のミュージカル「えんとつ町のプペル」を上演し、開幕前に3万席を完売させた。
PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:(小芝風花)Tomoko Tominaga、(吉原光夫)Shizuka Wada、(西野亮廣)KAE,STYLIST:(小芝風花)MIZUKI IRI、(吉原光夫)Reica Ijima、(西野亮廣)久 修一郎
衣装協力:(小芝風花)ブラウス¥18.700 スカート¥20.900 ブランド共にStola./ストラ
問い合わせStola./ストラ03-4578-3431 https://stolajp/
