自分の運命に抗いながら状況を変えていく勇敢さを『兵馬俑の城』から学んだ

――現在公開中の中国フルCGアニメ映画『兵馬俑(へいばよう)の城』の吹き替え版でヒロインの史⽟(シーユイ)を演じていますが、初めて作品をご覧になっての印象はいかがでしたか。

寿美菜子(以下、寿) オーディションのときに作品に出会ったんですけど、まず絵の美しさに魅せられました。アフレコするにあたって、ストーリーを読ませてもらった上で映像を観させてもらったときに、目で観ても楽しいし、音で聴いても楽しいし、キャラクターも豊かだしという総合芸術としての完成度の高さに感動しました。中国はアニメにしてもゲームにアプリにしても勢いがすごいので、『兵馬俑の城』からも勢いを感じました。

――カメラアングルも躍動感があって、実写さながらの迫力がありました。

寿 滑らかで美しい動きも素晴らしかったですし、言葉にしなくても細かい街の描写から、「この街はこういう雰囲気で、こういう人が住んでいるだ」と伝わってきましたし、アクションもノンストップで迫力があって、アフレコするにあたって、かなりハードルは高かったです。

――中国作品の吹き替えということで、日本のアニメとはアフレコに違いはありましたか。

寿 アジア圏だからなのか、表情などの理解もしやすくて、そこは意外に変わらなかったです。むしろ英語を日本語に吹き替えるときの方が、間合いや口が合わなかったり、倒置法が多かったりと大変な印象です。

――脚本を読んだ印象はいかがでしたか。

寿 世界遺産でもある兵馬俑を題材にして一本の作品を作るという斬新な切り口と壮大さに驚きました。史⽟目線で言うと、みんなとは違う生き方をせざるを得ないという宿命も含めて、孤独だったり、明るいだけじゃない部分もありつつ、蒙遠(モンユエン)と出会っていく中で心がほどけていく。その描き方が丁寧だなと思いました。蒙遠のような素敵な人に巡り会えるかどうかっていう運命は決まっているかもしれないけど、いかに自分の運命に抗いながら状況を変えていけるか、そういった勇敢さもこの作品から学ばせてもらったので、そういったところも皆さんに届くといいなって思いました。

――もともと兵馬俑に興味があったそうですね。

寿 たまたまオーディションを受ける数ヶ月前に、上野の森美術館で「兵馬俑と古代中国」という展示会があって、行きたいなと思っていたんですが、気づいたら展示期間が終わっていて残念な思いをしたんです。そしたら兵馬俑をテーマにしたオーディションの話が舞い込んできたので運命的なものを感じて、私も兵馬俑の世界に入りたいと思いました。

――史⽟の印象はいかがでしたか?

寿 ビジュアルを観たときの第一印象は美しくて凛々しい女性。ただオリジナルの声を聞いたら、かわいらしさのほうが強かったんですよね。

――ご自身は、どんな声を意識しましたか。

寿 実年齢は18歳ぐらいじゃないかと言われたんですけど、原音のかわいらしさを意識しつつ、ビジュアルの凛々しいイメージ、アクションのかっこよさ、歯切れの良さや活発さなどを大切にして。落ち着いた感じにならないように、いつでも走り出せそうなイメージの声を意識しました。

――アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか。

寿 まだ分散収録が続いていたので、スタジオの中に入れる人数には限りがあったんですけど、私、福⼭潤さん、中島ヨシキさん、星野貴紀さんの4人でアフレコすることができて、笑顔が絶えない微笑ましい現場でした。順録りで頭のシーンから最後まで駆け抜けるという収録スタイルだったので、みんなの士気が高まっていくのも感じられました。当日はスタッフさんが兵馬俑の図録を持ってきてくださったおかげで、兵馬俑の世界を深掘りできたのもありがたかったです。

――寿さん自身、中国に行った経験はありますか?

寿 スフィアのイベントで北京に行かせてもらったことがあります。そのときに毎日、尋常じゃないぐらい北京ダックを食べさせていただきました(笑)。街並みは昔ながらの雰囲気も残っていて、どこを切り取っても絵になるなと思いましたし、昔の人たちもここで生きていたんだと想像するのも楽しかったです。

――最後に『兵馬俑の城』の見どころをお聞かせください。

寿 『兵馬俑の城』という素晴らしい作品が中国からやってまいりました。ありがたいことに今回、日本語吹き替えを担当させていただきましたが、日本語吹き替え版ならではの面白さとかっこよさが詰まっています。みんなで一丸となってアフレコを駆け抜けたので、ぜひ美しい映像と音楽を劇場で堪能していただけるとうれしいです。

Information

フルCGアニメ映画『兵馬俑の城』
絶賛上映中!

監督:林永⻑

【⽇本語吹替版声優】
蒙遠(モンユエン)役/福⼭ 潤
史⽟(シーユイ)役/寿 美菜⼦
シャオバオ役/中島ヨシキ
シアホウ将軍役/星野貴紀
九尾⼤師役/⽔島裕
オババ役/桜岡あつこ
キツネ役/橘潤⼆
ゴン役/⽩⽯兼⽃
ガマ役/杉崎亮
ヤセ役/株元英彰
太っちょ役/⽯狩勇気
ワン親⽅役/武⽥太⼀
妖術使い役/⼩林康介

配給:ライブ・ビューイング・ジャパン、エレファントハウス
©Fantawild Animation Inc.

中国歴代の皇帝によって作られた兵⾺俑。その兵⾺俑達が眠るはずの巨⼤な地下都市には、⼤きな秘密があった。兵⾺俑達は、神から命を授けられ、もう⼀つの世界が作られていたのだった。兵俑の雑⽤係・モンユエンが住む秦陽城は、凶暴な霊獣たちの襲撃に悩まされていた。その霊獣に拮抗するシアホウ将軍の姿に憧れたモンユエンは精鋭部隊「鋭⼠」への⼊隊を希望するが、将軍から「霊獣・地吼(ディーホウ)を捕まえる」という条件を出される。霊獣・地吼を追う旅の途中、モンユエンは謎多き少⼥シーユイと出会う。旅の途中で⼆⼈は地下の世界では⾒られない美しい⾵景や世界の広さを知る。次第に惹かれ合う⼆⼈。モンユエンは、家族を探すシーユイの⼒になりたいと考えるようになる。そして、⼆⼈はついに、地吼を追い詰めるが……。

公式サイト

Twitter

寿美菜子

1991年9月17日生まれ。兵庫県出身。子役としてドラマやCMなどに出演、2005年開催の「ミュージックレイン スーパー声優オーディション」に合格したのをきっかけに声優活動を開始。「響け! ユーフォニアム」(田中あすか)、「「ガンダムGのレコンギスタ」(ノレド・ナグ) 、「TIGER & BUNNY」(カリーナ・ライル/ブルーローズ)、「ドキドキ!プリキュア」(菱川六花/キュアダイヤモンド)、「アイカツ!」シリーズ(神崎美月)、「けいおん!」(琴吹紬)など、多数のアニメ作品に出演。声優ユニット「スフィア」のメンバー。

PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI