ロケ地となった京都・貴船は生まれ育った場所
――仲居役を見事に演じられていましたが、どういう役作りをしたんですか。
藤谷 実際に「ふじや」の女将さんと仲居さんに協力していただいて、こういう場面ではどう動くかなど、所作を教えていただきました。映画は私がお部屋の片付けをするシーンから始まるんですけど、片付けの手順はもちろん、「どうやったらテキパキ見えますか?」など逐一相談させていただきました。プロに勉強させてもらえてよかったです。
――ご家族も撮影をご覧になっていたんですか?
藤谷 横で見ているときもありました。最初は恥ずかし過ぎて「来ないで」って言ってたんですけど、そういう訳にもいかず。ただ、私は東京に出てきていて、普段どんな仕事をしているのか家族には見えにくいので、気恥ずかしさはありましたけど、頑張ってるんだよって伝えられるのは幸せなことだと思いました。
――藤谷さんのお芝居を見て、何か仰っていましたか?
藤谷 両親も恥ずかしいみたいで、「みなさん面白いね」とか、「すごい作品になったらいいね」みたいなことは言ってくれましたけど、私個人の働きについては特に何も言ってなかったです(笑)
――撮影中、「ふじや」は営業していたんですか?
藤谷 営業はされずに、全館貸し切りで使わせていただきました。
――みなさん合宿みたいな感じで「ふじや」に宿泊していたんですか?
藤谷 そんなことはなくてですね、みなさん山を下りた場所にあるホテルに泊まっていて。だから撮影場所に行けなかったんですよね。「ふじや」の周辺は本当に何もないですし、雪に閉じ込められて下山できない可能性もあります。雪に慣れていないと車の運転も難しいですし、倒木の恐れもあるので、安全を考慮してホテル泊になりました。
――ここ数年、ドラマや映画の出演も増えていますが、舞台と映像では意識も違いますか。
藤谷 そうですね。やっと映像に慣れてきたというか。舞台からこの世界に入りましたので、カメラに向かってお芝居するのが恥ずかしくて、ちょっと憂鬱だなって思っていた時期もあったんです。でも最近は、お客さんがいないからこそ、目の前で起きていることに集中して、純粋にリアクションしてればいいんじゃないかなと思えるようになって。演者が何をやっても、監督さんやカメラマンさんが上手く切り取ってくれるだろうと、安心感や信頼感を持てるようになりました。
――改めて『リバー、流れないでよ』の見どころをお聞かせください。
藤谷 まず貴船の風景が美しいですし、旅館を貸し切っているので、表からバックヤードまで全部見ることができます。そんなロケーションの中でループするというSF的な展開が中心にありつつ、恋愛だったり、ミステリーだったり、いろんな要素が立て続けに絡んでいきます。2分間のループが延々と続くと聞くと、退屈そうだなって思う方もいるかもしれませんが、ちょっとでも見てもらったら、退屈する暇なんて一切なくて、映画の世界に没入できると思います。観る方もループに翻弄されて、私たちと一緒にループから脱出できるように頑張ってほしいぐらい体感型の映画になっているので、そういうところを楽しんでいただけたらうれしいです。