アルバム1曲目を飾る「サーフサイド・メモリー」は昭和を彩る“松原みき”の名曲のように
――2014年4月リリースのアルバム『永遠と瞬間』でのソロデビューから、10年以上が経過しました。
武藤彩未(以下、武藤) 10年過ぎたとは思えないほど一瞬で、もうそんなに経ったのかっていう感じです。「Seventeen」を歌っていた10代は、さくら学院を卒業してからソロになり、歌もダンスもまだまだなので必死でしたね。大人になった今は、楽しむ余裕もできました。(2015年12月~2018年12月の活動休止期間に)ニュージランドへ留学したのはいいきっかけになって、自分や歌に対する思いを見つめ直して、余裕が生まれたのかなって思います。
――最新アルバムは、ソロデビュー10周年を記念した作品となります。
武藤 活動復帰後はフルアルバムのリリース経験がなかったし、10周年を形として残せるのもうれしかったです。制作期間は1年以上で、レコーディングも振り入れも、じっくり時間をかけられました。お届けできる日を今か今かと待っていましたし、10年分の想いをたっぷり込められました。
――作品のコンセプトは「色とりどりの部屋」ですね。
武藤 10周年にちなんで、収録曲数を10曲に絞ったんですけど、どれもレトロポップではありながらテイストは様々なんです。本作の曲を聴いて、ファンのみなさんと“もう一度、ここまでの10年を旅している気分になれれば”と思って、合わせて、旅といったらホテルは絶対なのでタイトルを「Memorial HOTEL」としました。
――アルバムに先がけてリリースしたデジタルシングル曲で、1曲目の「サーフサイド・メモリー」は、武藤さんの愛する“昭和”から活動を続ける作詞家・売野雅勇さん、作曲家・林哲司さんのタッグが制作。お二人が作詞作曲を手がけた「DANG DANG 気になる」を武藤さんがカバーし、林哲司さんの作曲活動50周年ライブに出演した縁もあって、新曲が実現したそうですね。
武藤 元々、曲が先で歌詞があとだったんです。林先生に書いていただけると決まった時点でもう「何がきても大丈夫」と安心感しかなかったし、私からは「松原みきさんの『真夜中のドア~Stay With Me』のような大人っぽい曲に挑戦したいです」と、それだけお伝えしました。売野先生の歌詞は「夏服の妖精たち」とか、懐かしい感覚のフレーズがちりばめられていて、海辺がパッと浮かぶ情景描写もさすがでした。
――松原みきさんを参考にされるあたり、心から“昭和”に魅了されているんだと伝わってきて。昨今は“昭和レトロブーム”もあり、価値が見直されていますよね。
武藤 友人とのカラオケでも昭和歌謡を歌い続けていたし、ようやく時代が追いついてきたなって(笑)。サブスクでも簡単に聞けるようになり、最近では、カラオケで歌っても驚かれなくなりました。
――先ほど挙がった林さん、売野さんのみならず、本作では、ゆかりある方々がたくさん関わっています。
武藤 お世話になった方々ばかりですし、本当にありがたかったです。本作の「Calling」で作詞・作曲をしてくださった沖井礼二さんは、さくら学院のバトン部 Twinklestars以来の交流があって、活動復帰後もずっと「何かできることがあれば」と、気にかけてくださっていたんです。10周年のタイミングで新たに、曲を作っていただいてうれしかったです。