早くからメインキャストを務めてきた同志

――お二人の関係性はいつ頃からなのでしょうか?

畠中 祐(以下、畠中) 初めて会ったのは10年ぐらい前だよね。

上村祐翔(以下、上村) 僕が21歳で祐くんが20歳のときかな。長い付き合いだよね。

――お二人ともデビューが早いですよね。

上村 僕は4歳から子役からやっていたんですが、声優デビューは8歳ぐらい。

畠中 激早っ! すげー。僕なんか10歳ですよ。

上村 ほぼ変わらないじゃん!

畠中 いやいや。僕も一桁の年齢でデビューしたかった(笑)。

――畠中さんは両親も役者さんですが、声優を始めたきっかけは?

畠中 もともと役者になりたかったんですけど、当時は見た目がぽっちゃりしていて、それで子役デビューすると、そのイメージで固定されてしまうことが不安だったんです。それで悩んでいたら、声という表現方法があることを教えてもらい、事務所に所属していなくても参加できる一般公募のオーディションを受けて合格したのが始まりでした。

――お二人は最初から声優のやりがいを感じていましたか?

上村 そうですね。子役時代からいろんなお仕事をさせてもらっていたんですが、声のお仕事は洋画の吹き替えが多くて、すごく楽しかったです。ただ当時はマイクの前でお芝居をするという感覚はなくて、一生懸命やって楽しんでいたら褒めてもらえるという感じでした。

畠中 大人に褒めてもらいたかったんだよね。あと来日した海外の役者さんとホテルで一緒にインタビューを受けたり、そのときに美味しいものを食べさせてもらったり。僕は楽しいというよりも別世界を経験している感覚でした。

上村 ただ声変わりの時期は大変でした。声が安定しないので、子どもなのか大人なのかよく分からない状態になってしまい、声のお仕事ができなくなっちゃったんです。

畠中 分かるなー。スタッフさんから「声変わりしちゃったか……」というのが伝わってくるんだよね。

上村 そうそう。何となく子どもでも空気を察するというか……そりゃそうだよなぁと。

畠中 低い声は用なしか……みたいな。

上村 自分の中で軸になっていたものがなくなっちゃったんで、めちゃくちゃショックでした。その時期は声のお仕事を渇望していたので、大人になって声優業を本格的にやるようになって、やりがいも大きかったです。

――畠中さんも声変わりの壁は?

畠中 めちゃくちゃありました。露骨に声変わりしちゃって。でも子役を続けたいから、本当は声を出さないほうがいいんですけど、無理に高い声を出そうとして逆にガサガサにしちゃって。16歳くらいまで声変わりは続いていたんですが、そのタイミングで初めてアニメのレギュラーが決まったんです。

上村 それはきついね。

畠中 声が安定しないから最初のパートで声を枯らしてしまって、カサカサの声のまま固定になっちゃったんですよね。

――お互いの第一印象を教えてください。

畠中 養成所から来た人たちとはまた別のベクトルで上手いという印象でした。周りとは全然違っていて、「こういう人もいるんだ!」と衝撃的でしたね。

――どういう部分が他の方とは違っていたんですか。

畠中 4歳からやっている先輩に言うのも失礼なんですが……。

上村 まあ聞きましょう(笑)。

畠中 (笑)。例えるなら他の人たちは綺麗に塗装も済んでいるプラモデルの完成品という印象があったんです。でも上村さんだけは今組んでいる段階というか、必要以上に整っていない。あえて安定しすぎない微妙な機微があって、それが新感覚でした。

上村 なるほど。確かにマイク前のお芝居で「まずはこうです」という1の正解があるとしたら、みんなそこに行くけど、そうではない。ただ、これも悪くないぞみたいな。

畠中 そうそう。アカデミックな絵画を見た後に印象派を見るような。こういう絵もあるんだみたいな、一人だけ質感が違いましたね。

上村 初めて会った現場は、祐くんが主人公をやっていて、とにかく叫んで、とにかく逃げなければいけない役柄。僕も子役の頃からいろんな先輩方のお芝居を見てきているから、なんとなく声優さんって固定のイメージがあったんです。ところが祐くんはマイク前でお芝居をしていても、「そんなの関係ない!」というくらいの臨場感というか没入感があったんです。マイクが近かろうが離れていようが、その声を出すだろうなという大きさの声で。それまで僕は自分が最年少の現場が多かったので、僕よりも一つ年下で、もがきながら演技している役者を見るのが初めてで刺激になりましたし、うれしかったですね。

畠中 今のアニメで、20歳と21歳の若い声優がメインキャストというのはあまりないんじゃない?

上村 珍しいかもね。

畠中 めっちゃ俺たち早かったんだよ!

上村 確かに若かった。そういう意味でも同志だね。