ジャズにハマって、ピアノを弾く楽しさが何倍にもなった
――音楽遍歴についてお話を伺いたいんですが、3歳からピアノを弾いていたそうですね。
けいちゃん いつもおもちゃのピアノを遊んで弾いていたみたいで、それを見た母親がピアノ教室に通わせてくれました。
――ご家族で楽器をやってらっしゃった方はいたんですか?
けいちゃん 母親がちょっとだけピアノを習ってたぐらいで、音楽一家ではないです。
――いつぐらいからピアニストを目指したのでしょうか。
けいちゃん 小学3年生ぐらいからコンクールにも出始めました。きっかけは覚えてないんですけど、当時はクラシックしか聴いていなくて、いろんなピアニストのCDを聴いていくうちに、自分もこういう人たちのように上手くなりたいと思ったんです。
――よく弾いていた作曲家はいるんですか?
けいちゃん わりと幅広く弾いていました。コンクールの課題曲は幅広いので、いろんな時代の作曲家を弾いていましたが、個人的に好きな作曲家はラフマニノフでした。
――小学生でラフマニノフって、けっこう渋いですよね。難易度の高い曲も多い印象です。
けいちゃん 当時から速い旋律を聴くとかっこいいなと思っていました。ただコンクールでは、きちんと表現のできる身の丈に合った曲を選んでいました(笑)。
――人前でピアノを演奏する楽しさは早くから感じていたんですか?
けいちゃん 感じていましたね。特にホールで弾くと、響きがすごくいいので、それに感動していました。
――アルバムを聴かせていただくと、クラシックはもちろん、ジャズやR&B、ロックなど様々な影響を感じますが、多彩なジャンルを弾くようになったのは、いつ頃からですか?
けいちゃん 大学に入ってからです。その前から、いろんなジャンルに興味はあって、聴いてはいたんですけど8割がクラシックで。何より自分の中ではクラシックが勝っていたんです。
――音楽以外の道を考えたことはありましたか。
けいちゃん 高校卒業後に、音大に入るんですけど、たとえピアニストになったとしても食べていけるのは一握りだし、一旦ピアニストになる夢は諦めかけたんです。それで音楽の先生になろうと思って、ピアノ科ではなくて、音楽教育学科に進んで。でも、やっぱり自分はピアニストになりたいという思いが強くて、2年生の時に教職を取るのは辞めてしまい、再びピアニストを目指しました。
――クラシック以外の曲を演奏するようになったきっかけは?
けいちゃん 音楽教育学科は、日本の古い音楽や、ガムランなどの民族音楽など、いろんな音楽に触れる機会が多いんです。それでジャズやポップスにも触れるようになったんですが、それが良かったんでしょうね。ピアノ科に入ると、ピアノ1本に集中しますけど、音楽教育学科に入ったから、いろんな音楽を学べましたし、幅が広がって、自由度も増して、それが今に繋がっているんじゃないかなと思います。
――特に惹かれたジャンルは何でしたか?
けいちゃん ずっとジャズを聴いていました。ピアノとドラムとベースでセッションをすることもあったんですけど、とにかくアドリブが楽し過ぎて。それまで、ずっと一人で演奏してきて、みんなで音楽をやること自体がなかったので、余計にハマりました。
――当時、プロのピアニストではどなたに惹かれたんですか?
けいちゃん H ZETT Mさん、ジャズだと小曽根真さんです。小曽根さんは先生として学校にも来ていて、講堂で演奏をしていたり、普通に食堂にいたり。今思うと、すごく贅沢な環境でした。
――ジャズにハマって、自身のピアノスタイルに変化はありましたか。
けいちゃん ジャズが今の自分にもたらしている影響は大きいですね。最低限のルールはあるんですけど、自分の好きに弾いていいんだと知って、楽しさが何倍にもなりました。ある意味、ずっと縛られ続けていた反動から、解放されたような気分でした。