センシティブな内容なので、軽々しく扱うのはダメだなと感じた
――『きみとまた』は、平井さん演じる恋人とセックスをしたくないことが原因で別れてしまった自主映画監督のまるおと、かつての彼の恋人で現在は夫とのセックスレスに悩むアキ(伊藤早紀)との再会と手探りなふたりの交友を描いた映画です。初めて脚本を読んだときは、どんな印象を受けましたか。
平井亜門(以下、平井) まるさんは10代の頃の自分と似ているところがありつつ、気持ちが分からないところがあるなと。アキさんに関しては、久しぶりに再会した元恋人のまるさんに「精子をください」と言い出して、旦那さんがいるのに、そんなことをしちゃ駄目でしょう、それはご法度でしょうと感じて。センシティブな内容なので、演じることに怖さもあって、軽々しく扱うのはダメだなと感じました。こういう題材を映画にするって、なかなかないですし、面白そうだなと思いました。
――まるおと似ていると感じたのは、どういう部分でしょうか。
平井 僕も10代の頃からかなり繊細だったので、好きな女の子に対して性的な感情を抱くのはよくないことみたいな罪悪感があったんです。小学生高学年のときに、保健の授業でセックスについて習うじゃないですか。そのときに、セックスは汚いもの、怖いものだって思い込みもあって、そんなに軽々しくできるものじゃないなと。中・高あたりからその感覚はあったかもしれません。
――逆に分からない部分はどこでしたか?
平井 まるさんはアキと付き合っているときに「愛しているから」こそセックスができなくて、それが原因で別れるけど、ずっと彼女のことを片思いし続ける。もしかしたら、まるさんの中でアキちゃんの偶像が美化されて肥大化したのかもしれない。そこは僕にない感覚でしたから、違和感があったんです。どこをどう、まるさんはこじらせているのか分からなかったけど、理解できるようにと演じていました。
――『きみとまた』は葉名恒星監督の商業デビュー作です。これまでも葉名監督は、『愛うつつ』(18)。『きみは愛せ』(20)で「愛しているがゆえにセックスをしない」という共通したテーマで作品を生み出してきました。事前に話し合いなどはあったのでしょうか。
平井 まるさんに関しては割と任せてくれました。なので、僕なりに脚本を読み解いて、こういうことかなと思って演じたんですけど、かなり自由にやらせてもらいました。ただ撮影が終わってから完成するまで1年ぐらい期間が空いたんですけど、初めて完成した作品を観たときに他人事だったというか。よりまるさんのことが分からなくなって、距離を感じましたし、改めてこの映画について考えさせられました。