濡れ場シーンはすごく怖かった

――『きみとまた』は、まるおが仲間たちと自主映画を制作する過程を軸に話が進んでいって、そこにアキとの関係性が絡んで、まるおが書く脚本にも変化を及ぼしていきます。いわば映画制作の現場で起こる出来事や葛藤などをさらけ出している作品です。

平井 実際、脚本も葉名監督が書いていて、「そんなに、さらけ出していいの?」っていうぐらいさらけ出しているので、ぶっ飛んでいるなって思います。実際に自分が思っていることじゃないと、本に書けないじゃないですか。それをさらけ出せるなんてクレイジーな人だなと思います(笑)。

――脚本に葉名監督の思いが投影されていたと思うんですが、そこを意識して演じた部分はありますか。

平井 葉名監督の頭の中にあるものは何か考えましたけど、かといってそこに寄せに行くのも違うし。葉名監督が納得する上で、どう僕なりのまるくんを作り上げていくかみたいなことを考えながら演じていました。

――今回は平井さんもさらけ出す部分があったのではないでしょうか。

平井 そうですね。今回はR15作品で、濡れ場、すごく怖かったです。完成した作品を観たときも、そのシーンになったときは苦しかったです(笑)。撮影したときに「編集でどうなるんだろう?」と思っていたら、結構切り取られ方が生々しかったのでギョッとしました。ただ今回に限らず、このお仕事はさらけ出すことが多いんですよね。こういうインタビューにしても、外側だけ話しても伝わらないと思うので、自分の本心を語らなあかんし、お芝居にしても、今自分ができる最大限のパフォーマンスを出すことって、さらけ出すことに繋がると思います。

――伊藤早紀さん演じるアキに共感する部分はありましたか?

平井 いやー、苦手なタイプですね。先ほどもお話ししましたけど、旦那さんがいるのに、昔の恋人と再会して関係を求めるなんてダメですよ。それでいてアンニュイな表情で、「私は被害者です」みたいな顔をして(笑)。よっぽど旦那さんのほうが被害者ですよね。

――先ほど、初めて完成した作品を観たときに、よりまるおのことが分からなくなったと仰っていましたが、他にはどんな感想を抱きましたか。

平井 間を大事にしているシーンが多くて、葉名監督は役者の繊細な表情や動きを大事にしたかったのかなと思いました。まるさんに関しては、きっと葉名監督の中では自分の分身のような存在で、一本筋が通っていると思うんです。なかなか理解されないものを抱えながら人と向き合っている人って、少数派ですけど確実にいる訳で。それを分からないからといって否定するのも良くないですから、分からないで終わらせるのではなく、もっとまるさんを理解できたらいいなと思いました。