音楽活動とお芝居を行き来するのが理想
――ちょうど1年前に、平井さんが主演した映画『神田川のふたり』でインタビューさせていただいたときに、お芝居と音楽、どちらかを選ぶのではなく両軸やっていきたいと仰っていましたが、現状はいかがですか?
平井 1年前よりも、音楽に関わることが増えているかもしれないです。今年1月に多次元アイドルプロジェクト「UniteUp!」がテレビアニメ化されたんですが、声優としてアイドルグループ「PROTOSTAR」のメンバー・五十鈴川千紘を演じさせていただいています。7月には東京ガーデンシアターでライブを開催して、実際にアニメで歌って踊っている曲をパフォーマンスしました。定期的に自分主催の音楽ライブも開催していますし、もっと大勢の人に僕が音楽活動にも力を入れていることを知ってもらって、それがお芝居のほうにも繋がっていったらうれしいですね。僕自身、音楽映画が大好きなので、そういう行き来があるのは理想です。
――アイドルを演じることに関しては、どういうスタンスでやっているんですか。
平井 『きみとまた』のお話でセックスについて語っている奴が、「キラキラアイドルをやっていいの?」って本気で思うんですよ(笑)。おそらく「UniteUp!」でアイドルグループのメンバーを演じている人たちの中で、僕が一番アイドルと乖離してるんじゃないかなと思いながらやっていました(笑)。でも、それが楽しいんですよ。五十鈴川千紘にしても媚びたりするキャラクターではないので、そこまで自分とかけ離れていないですしね。
――もともとアニメも好きなんですよね。
平井 大好きです。正直、ほとんどアイドル系のアニメは観たことがないんですけど。
――最近観たアニメで良かったのは何ですか?
平井 僕は昔の作品を振り返って観ることが多くて、最近だと『ドラゴンボール改』を1話から一気見しました。『ドラゴンボール改』って『ドラゴンボールZ』のデジタルリマスター再編集版なんですけど全159話。でも『ドラゴンボールZ』は全291話で、半分に凝縮されているんです。
――どうしてですか?
平井 なぜかというと、当時は『週刊ジャンプ』にリアルタイムで連載していて、ほぼアニメが追い付いていたので、引き延ばしているシーンが多くて、ちょっといらんかなっていう部分もあるんです。それをギュッとさせたものが『ドラゴンボール改』なんですけど、そうすると辻褄が合わないシーンも出てくるんです。それを合わせるために、アニメーターさんが新規カットを描いてくれているんですけど、輪郭線なんかが違うんです。絵のタッチは寄せているんですけど、微妙な違いがあって、そういう涙ぐましい努力がグッときますし、新規カットを見つけたときは得した気分になります(笑)。
――最後に好きな音楽映画を教えてください。
平井 僕はダブリン出身のジョン・カーニー監督が大好きなんです。最近はAmazonビデオオリジナルのドラマ『モダン・ラブ 〜今日もNYの街角で〜』の製作総指揮を務めていましたけど、音楽映画を幾つも手掛けていて。日本で公開した作品だと『ONCE ダブリンの街角で』(07年)、『はじまりのうた』(13年)、『シング・ストリート 未来へのうた』(16年)の3作があって、どれも毛色が全然違うんですよ。『ONCE ダブリンの街角で』はフォーキー、『はじまりのうた』はギラギラしてアーバン、『シング・ストリート 未来へのうた』がニューウェイヴと音楽のジャンルも違って。中でも僕は『シング・ストリート 未来へのうた』が好きなんですけど、ただの音楽映画に終わらず、ちゃんと人間の繊細な部分も描かれていて、すごく惹きこまれますね。
Information
『きみとまた』
2023年8月18日(金)よりシネマート新宿にて公開 ほか全国順次ロードショー
出演:平井亜門 伊藤早紀 長村航希
中山求一郎 久保乃々花 丸純子 冨手麻妙 仁科亜季子
脚本・監督:葉名恒星 エグゼクティブプロデューサー:山口幸彦 企画:利倉亮 プロデューサー:江尻健司
音楽:山城ショウゴ 撮影:米倉伸 照明:加藤大輝 藤井光咲 録音・整音:織笠想真 美術:岡本まりの
編集:高橋信之 助監督:中村幸貴 ヘアメイク:安藤メイ スタイリスト:中村もやし 編集協力:蛭田智子 機材協力:本間光平
制作協力:レジェンド・ピクチャーズ 製作:キングレコード ©2023 キングレコード
愛しているからセックスをしたくない。それが原因で別れた恋人アキ(伊藤早紀)を未だに忘れられないでいる自主映画監督のまるお(平井亜門)。自身の体験を基に新作映画を撮ろうとするが脚本に行き詰ってしまう。なぜアキを抱けなかったのか。自らも答えを出せないと問いに向き合うためアキに会う決心をするまるお。一方のアキはサラリーマンの田頭と結婚しているが、子供は欲しいのにセックスレスの夫婦関係に悩んでいた。久しぶりに再会するまるおとアキ。まだアキの事を忘れられないまるおに対し、アキは別れ際に言う。「まるおの精子をください」。
平井亜門
1995年9月28日生まれ。三重県出身。2017年に雑誌『smart』のモデルオーディションでグランプリに輝く。モデル・俳優として活躍中。主な映画出演に、『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』(17年)、『左様なら』(18年)、『レイのために』(19年)、『カーテンコールのはしの方』(20年)、『アルプススタンドのはしの方』(20年)、『うみべの女の子』(21年)、『シチュエーション ラヴ』(21年)、『階段の先には踊り場がある』(22年)、『ほとぼりメルトサウンズ』(22年)、『神田川のふたり』(22年)、『恋のいばら』(23年)、『銀平町シネマブルース』(23年)、『死体の人』(23年)、『はざまに生きる、春』(23年)など。
PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI