その時その時でデザイナーが全力を注いできたものには魅力がある
ーーこれからの時期にはマストウェアになるTシャツですが、古川さんは何枚くらい持っていますか?
古川毅(以下、古川) 何枚だろう…。30枚くらいは持ってます。畳んでたたんでからくるくる丸めてスポッと棚に入れてますね。だから、ぐちゃっと倒れてしまうこともあります(笑)。ぐいっと引っ張り出しちゃうこともあるので。
ーー色々なデザインがありますが、どういう種類のTシャツが多いですか?
古川 シンプルなものよりも、柄や色があるものが多いですね。真っ白、真っ黒というよりも、何かしらデザインがあるというか。
ーーサイズ感やデザインなどたくさんあると思いますが、Tシャツを買う時に重視するところはどこでしょう?
古川 古着、新品問わずなんですが、ブランドがかつて出していたアーカイブ系を買うことが多いです。できたばかりの現行のものを買う方が、少ないかもしれません。それこそ、自分がファッションを好きになり始めたのは中高生の頃なのですが、どんどん好きなものとか価値観が変わってきて、ここ2年くらいはファッションのカルチャーだったり、背景がすごく好きになってきたんです。ブランドのバックボーンを調べたり、ヒストリーを遡っていくと、「こういうデザインが、当時のトレンドだったりしたんだな」とか、今でも人気のデザインがあったとしても「10年前では捉え方が違ったんだな」とか、そういうのを知ると楽しくて。もちろん今のトレンドはチェックしますが、それだけに縛られるともったいない気がするんです。本当の自分の良さを見つけられないかもしれない。自分が格好良いと思うものには時代の境界線がないし、最新のものでなくても、その時その時でデザイナーが全力を注いできたものには魅力があると思うんです。
ーー今回お持ちいただいた私物のTシャツを見ても、1990〜2000年代のアーカイブが好きそうですよね。それでは、一点一点思い入れを聞いていきたいと思います。まずは、首元にタイポグラフィーが入った2枚のマルジェラのTシャツについて教えてください。
古川 僕は(創業者で現在はブランドを離れている)マルタン・マルジェラ本人がやっていた時代のものが好きなんですが、これは彼が作った定番というか名作のシリーズ“エイズT”で、エイズ撲滅や治療をサポートするために設立された機関へのチャリティーになっています。色違いで白黒2枚持っていて、首周りにメッセージが入っています。細身のシルエットで薄い生地感は共通しているんですが、時代によってデザインが異なっていたり、色々違いがあって面白いです。少年心をくすぐられるアイテムの一つだし、これからもっと集めたいなと思っています。
ーーこちらも同じくマルジェラですが、首元から下にかけてプリントが入っています。
古川 首にタオルがかかっているように転写されたTシャツです。エイズTと同じ細身で、去年の秋口くらいに買いました。たまに着る程度なんですが、こういった転写シリーズはレアというか、コレクター心をくすぐられたし、着た時の馴染み具合もすごく良かったです。胸元が空いたようなシルエットも好きですね。真冬だと流石に買う頻度は減りますが、Tシャツは冬の入り口くらいまで買ったりします。ビビッと出合ってしまうというか、それが古着屋に行く楽しみの一つです。僕はお店に行って服を買うことが多くて、Tシャツでもガンガン試着します。ネットでもたまに買いますが、やっぱりネットだとサイズが難しいですね。サイズが合ってないと見え方が違ってしまうし、僕はTシャツこそ試着した方が良いと思っています。