お肉にお塩をすり込む音が大好き

――かにこに共感する部分はありましたか。

田中 お客さんを乗せる蒸気機関車なので、お仕事に関しては真摯に取り組む子。どれだけ揺れずに、長時間でも快適に乗っていただけるかを日頃から考えていて、それがお客さんにも伝わって、「北開道に来る楽しみは、毛ガニとズワイ蟹とかにこちゃん」と言われるようになって、自分の名前に誇りを持てるようになるんです。最初は不器用だけど、「私はこれでいいんだ」と自分に言い聞かせるところが、かわいいなと思いました。かにこじゃないとお客さんも減るので、休む時間もなく働いて、体もボロボロなんですけど、「お客さんのためだったら私頑張る!」みたいな。

――すごく、けなげなキャラクターですよね。

田中 かにこを演じて、電車に対する気持ちが変わりました。擬人化されているので、愛着が湧くんですよね。だから日常でも、この電車はどのぐらい走ったんだろうとか気になるようになりました。

――完成した作品を観た印象はいかがでしたか。

田中 音がない状態でアフレコをしたんですけど、本編ではキャラクターたちが、いろんなマイクを使って、いろんな音を録っているんです。水中の音を録るマイクだったり、広範囲の音を録るマイクだったり、マイク一つで音が全然違うんですよ。それを聴きながらオーディオコメンタリーを録ったんですけど、「このマイクを使いました」という説明もあるので、声を仕事にしている声優としても、すごく勉強になりました。キャラクターたちのかわいらしさを目で楽しみながら、プロの方が録った素晴らしい音を聴いてください。ヘッドホン推奨です!

――田中さん自身、フェティッシュに好きな音はありますか。

田中 お肉にお塩をすり込む音が大好きなんですよ。ぷよぷよしたものに、じゃりじゃりしたものを擦り付ける音が好きで。『レヱル・ロマネスク2』でも燻製するお肉に岩塩をすり込むシーンがあるんですけど、堪らなかったですね。あとは、ぷよぷよした肌にクリームをすりすり塗る音もいいです(笑)。

――楽器で特に好きな音は何ですか?

田中 一つに絞るのは難しいんですけど……今パッと思い浮かんだのは中国の二胡ですね。

――田中さんは北海道出身ですが、地元での電車の思い出はありますか?

田中 私は札幌出身なんですけど、学生時代は毎日、地下鉄を使っていましたし、よくお母さんが旅行に連れて行ってくれて、函館、小樽、富良野などは電車での旅でした。北海道は大自然に囲まれているので、電車の窓から見える景色がほとんど山だったり、森だったり、田んぼだったり。途中でトンネルに入ったりもするんですけど、その風景を子どもながらに楽しみながら電車旅をしていました。