両親の後押しで芸能界に飛び込もうと決断できた
――キャリアについてお伺いします。伊原さんは高校時代に出場した「日本高校ダンス部選手権」で発表した「バブリーダンス」で脚光を浴び、高校卒業後に俳優活動をスタートさせますが、もともと芸能界に興味はあったんですか。
伊原 事務所に声をかけてもらうまでは考えたことすらなかったです。難しい世界だろうなと思っていたんですけど、ここで断ったとして、やっぱりチャレンジしてみたいと思っても、またできることではない。実際にやってみて、無理だったら無理で、また考えようと思って、思い切って飛び込んだのが始まりです。
――かなり悩んだんですか。
伊原 私は悩みましたが、両親が「こんなチャンスはなかなかないし、無理やったら帰ってきたらいいんやから、一回やってみいや」と言ってくれ、事務所に行ってお話を聞いたら、温かいスタッフさんばかりで、親も安心して「東京に行ってらっしゃい」と言ってくれました。
――お芝居に抵抗はなかったんですか。
伊原 習い事ではあったんですけど、小さい頃にミュージカルをやっていたので、お芝居の経験はありましたし、発表会に出るのも好きだったので、そこの不安はありませんでした。ただミュージカルと映像のお芝居は全然違うので、最初の頃は「大げさだね」と言われていました(笑)。演じているときは気付かなかったんですが、実際に完成した映像を観たら、なんて不自然なんだろうと思いました。
――自然な演技にするためにやったことはありますか?
伊原 私は俳優活動を始める前から蒼井優さんの自然体なお芝居が大好きなのですが、この世界に入って、改めて蒼井優さんの出演作を観て勉強して参考にさせていただきました。
――桜は自然体の演技と、過剰な演技の両方が求められる役柄でしたよね。
伊原 前半と後半で全く違いますよね。ことさら大げさに演じたわけではないんですが、永江監督が「怖がるシーンは普段より多めに感情を出したほうがいいかも」と仰っていました。もともと私はオーバーリアクションなので、驚き方とか、息遣いでドキドキ感みたいなものを出せたらいいなと思いました。
――ダンス経験がお芝居に活きている部分はありますか?
伊原 『リゾートバイト』で言うと、後半で体を使ってリアクションするシーンがあり、永江監督から「こういうのってできたりします?」と言われたときに、すんなりできました。体の動かし方とか、こうしたらこう見えるみたいな感覚はダンスをやっていたからこそだと思いますし、その経験が活かせてうれしかったです。
――伊原さんはバラエティでも活躍されていますが、どういうスタンスで臨んでいますか。
伊原 最初は面白いことも言えないし、どうすればいいのか分かりませんでしたが、芸人さんは本当にプロフェッショナルなので、どんな状況でも面白くしてくれます。感覚的に面白いことをポンっていう方もいらっしゃるんですが、たとえばコンビの芸人さんだったら役割分担を決めて、ちゃんと私たちも巻き込んで、笑いを取っていくんです。笑わせようと思って笑わせるって、すごく難しいことだし、恥ずかしがったらできないことだと思います。それを目の前で見たらリスペクトしかありません。
――『ラヴィット!』などのロケを観ると、伊原さんもしっかりと笑いを取っていてすごいなと思います。
伊原 皆さん優しく話し掛けてくださって、仲良くしてくださるので、何か発言するときも気負わない雰囲気を作ってくださいますし、何を言っても面白くしてくださるという安心感があるんです。だから、とにかく楽しもうという気持ちでやらせてもらっています。
――最後に『リゾートバイト』で主演を務めて、どんな気づきがあったでしょうか。
伊原 過去に『明治東亰恋伽』(19)という作品で主演をやらせていただいたんですが、ドラマを撮りながら映画も一緒に撮影したので、がっつり映画で主演をやらせてもらうのは今回が初めての感覚がありました。『リゾートバイト』の撮影もタイトではあったんですが、時間をかけるところは丁寧に撮影をして、みんなで大事に作り上げているなと感じましたし、みんなが仲間だなと感じました。
――主演は舞台で言うと座長のポジションですが、プレッシャーはありましたか?
伊原 役割としてはそうなんですが、座長とは思っていなかったです。みんなで一緒に行動することが多かったですし、皆さんに助けてもらいながら演じさせていただいたので、ありがたい現場でした。
Information
『リゾートバイト』
グランドシネマサンシャイン池袋、イオンシネマほか全国公開中
伊原六花
藤原大祐 秋田汐梨 / 松浦祐也 坪内守 / 佐伯日菜子
梶原 善
監督:永江二朗 脚本:宮本武史
企画/制作:キャンター 配給:イオンエンターテイメント
製作:映画「リゾートバイト」製作委員会
©2023「リゾートバイト」製作委員会
大学に通う内田桜(伊原六花)は引っ込み思案の性格でなかなか周りに溶けこめない生活を送っていた。幼馴染で同じ大学に通う真中聡(藤原大祐)がそんな桜を気分転換のために同じく幼馴染の華村希美(秋田汐梨)を誘い、旅行を兼ねてとある島にある旅館でアルバイトすることに。桜たちが働くことになった旅館は夫婦とフリーターの岩崎で営んでいた。ただ、旅館の主人・健介(坪内守)が足を怪我したことで桜たちをバイトとして雇うことなる。本格的なシーズン前でもあり、十分な休憩時間があった桜たちはリゾート地を楽しむことができ、その中で桜も自然と笑顔を取り戻してゆく。そんなある日、桜は女将の真樹子(佐伯日菜子)が毎晩、深夜にひっそりと廊下を歩き、食事を運んでいる姿を目撃し、言い知れぬ不安を抱く。それから数日後、夕食時にフリーターの岩崎から桜たちは肝試しを提案される。その内容は桜が目撃した深夜に食事を運ぶ女将が向かうこの旅館の隠し部屋へ行くことであった。不安を感じる桜であったが、岩崎の強引さに負け、女将の後をつけて隠し部屋に向かうことになる。いつものように深夜に食事を運ぶ真樹子は壁に見える隠された扉を開けて中へ入ってゆくが、ものの 5 分も立たないうちにすぐに出てくる。しかし、女将が運んでいた食事は全て空に。その様子に違和感を覚える桜であったが、岩崎はさらにおもしろがり、二人一組で女将が向かった隠し扉から中へ入ることになってしまう。最初に桜と聡がその扉を開けて中へ入る。そこにはいきなり不気味な階段があり、怖がりの桜はそれ以上進むことに恐怖を覚えていると聡はそんな桜に気づき、一人で階段を昇ってゆく。この出来事により桜たちへ後戻りできない恐怖体験が始まる。
PHOTOGRAPHER:YU TOMONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI