ここまでやるかってぐらい本気でやらないと、人に聴いてもらえるものは作れない
――バンドでデビューしたい気持ちはなかったんですか?
吉澤 私は作るものに対しての我が強過ぎるので、途中から人と一緒に作るのは向いてないなって。それは今も同じで、シンガーソングライターが天職だなって思います。
――歌詞と曲だと、どちらを先に作ることが多いんですか?
吉澤 大体、詞が先ですね。まずタイトルを最初に考えて、こういうタイトルの曲を書きたい、こういうテーマの曲を書きたいというところから歌詞を考えていって、言葉がメロディーを連れてきてくれるという感じです。
――今回のEPもそうですけど、アルバムのコンセプトをしっかり作るタイプですよね。
吉澤 不自由になったほうが自由になれるというか、制約が自分には大事だなと思うんです。常に曲作りは苦しいので、できないときは本当に向いてないなと思うし、出来た瞬間は、「私って天才!」みたいな、すごく極端な状態にずっといて。ここまでやるかって思うぐらい本気でやらないと、人に聴いてもらえるものは作れないですね。
――音楽でやっていこう決断したのはいつ頃ですか?
吉澤 高校生のときに初めてオリジナル曲を作ったときに、これで生きていける、世の中と繋がれると思えて。それでの音楽にのめり込んでいったんですけど、その瞬間ですね。
吉澤 思い込みが激しかったんですよね(笑)。ただバンドメンバー、家族、友達に聴かせたら、みんな「いいね」って言ってくれて、それも自信になりました。
――吉澤さんの歌い方は、誰かの影響関係をほとんど感じないんですけど、参考にした歌手っていましたか?
吉澤 誰かみたいに、こうしよう、ああしようというのはなかったですね。曲を作るようになって、しゃくりを入れるときに、雪村いずみさんなどのオールディーズの歌手の方を参考にして、それで徐々に今の形になりました。ただ自分でも影響を受けた人って分からないです。
――大学は文学部だったそうですが、どうやって決めたのでしょうか。
吉澤 シンガーソングライターになりたいなって思ったときに、言葉を扱うので、日本語を学びたいなと思って。それで両親に「大学に行かせてください」とお願いして、文学部に行きました。
――大学生活はいかがでしたか。
吉澤 それまで学校って苦手だったんですけど、好きなものを学べることがとにかく楽しくて。最後の最後で学校って楽しいと思えたのは自分にとって財産です。文学を学んでから、いつも自分が勝手に想像していた深読みみたいなものを教授に認めてもらったりとか、「その視点は素敵ね」みたいに言ってもらったりしたときに、これでいいんだと思えたのも大きかったです。
――中学・高校で学ぶ小説の読み方って型にはめるところがありますからね。
吉澤 そうなんですよね。でも大学は全然違ったので、いろんな読み方をして、そこから曲になったものもいっぱいありますし、物語の読み方を学べたのは、今にも活きています。
――特に大学時代、入れ込んだ作家はどなたでしょうか。
吉澤 志賀直哉が好きでした。卒論も志賀直哉の「剃刀」って短編について書いたんですけど、小説の神様って言われた人の作品から、ふと人間の欲望みたいものが顔を出す瞬間があって、それがすごくヒヤッ、ドキッとして好きでした。
――大学在学中、プロになるためにどんなことをしていましたか。
吉澤 初めて受けたオーディションがデビューのきっかけになったので、事務所に入るのはすんなりだったんですけど、デビューするまでには時間かかりました。大学に通いながら、曲を書いて、都内でライブをしてみたいなのを繰り返していました。そのときは、これで終わっちゃったらどうしようと不安でしたね。周りが就活を始めた頃、「お前は進路が決まっているからいいよな」みたいなことを言われていたんですけど、心の中では「私も決まっているか分かんないんだよ」という思いでした。
――2014年にメジャーデビューを果たし、2020年に現在のレーベルに移籍しました。移籍したことの変化ってありますか。
吉澤 人生ってドラクエみたいだなって思います。大好きな人をいっぱい集めて、どんどん仲間も増えて、強くなって、最強の武器を手にして、お仕事をさせてもらってと素晴らしい環境です。
――これまで数々のアーティストとコラボレーションしていますよね。
吉澤 私はミュージシャンでも歌手でもないシンガーソングライターで、自分で作って歌うしかできないなと思っているので、楽器のプロフェッショナルに対して、すごくリスペクトがあるんです。だから、いろいろな方とご一緒したい気持ちは常にありますね。
Information
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[ 収録楽曲 ]
1.氷菓子
2.青春なんて
3.セブンティーン
4.ギャルになりたい
5.夢はアパート
6.抱きしめたいの
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ワンマンショー「アイスクリームの日」
2023 年 5 月 9 日 ( 火 ) EX THEATER ROPPONGI
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・よるの向日葵
・残ってる
・すずらん
・ミューズ
-アンコール-
・氷菓子
・東京絶景
吉澤嘉代子
1990年6月4日生まれ。埼玉県川口鋳物工場街育ち。2014年メジャーデビュー。2017年にバカリズム作ドラマ「架空OL日記」の主題歌「月曜日戦争」を書き下ろす。2ndシングル「残ってる」がロングヒット。2020年11月25日にビクターエンタテインメントよりシングル「サービスエリア」をリリース。2021年1月20日にテレビ東京ほかドラマParavi「おじさまと猫」オープニングテーマ「刺繍」を配信リリースし、3月17日に5thアルバム『赤星青星』をリリース。同年6月20日には日比谷野外音楽堂での単独公演を開催。9月29日に初のライヴブルーレイ「吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂」をリリース。2023年7 月12日に映画『アイスクリームフィーバー』主題歌として書き下ろしたニューシングル「氷菓子」をリリース。11月15日には「青春」をテーマにした二部作の第一弾 EP『若草』をリリース。2024年春には第二弾となるEP『六花』のリリースも決定している。
PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI