家定にとって阿部正弘は、言葉では言い表すことのできないほど大事な存在
――現場の雰囲気はいかがでしたか。
愛希 セットを始め、衣装、かつら、メイクなど、本当に細部までこだわって作られているなと。「消え物」一つとっても細かく作られていますし、実際に映るかどうかも分からない部分まで作り込んでいるんです。その現場に行くと、自然と役に入るスイッチを押してもらえるんですよね。
――共演者についてお聞きしたいんですが、瀧山を演じた古川雄大さんは舞台での共演も多いですよね。
愛希 古川さんとはミュージカル「エリザベート」で共演したばかりだったのですが、「大奥 Season2」は集中力のいるシーンが多かったので、気心の知れている古川さんがいてくださって良かったです。私は撮影に入るとギュッと集中していたり、緊張もするほうなので、あまり休憩時間などにお話することはなかったんですけど、そういう私の性格も古川さんは分かってくださっているので、安心してお芝居に取り組むことができました。
――胤篤役の福士蒼汰さんとの共演は今回が初めてですか?
愛希 初めてでした。Season1にも出ていらっしゃいますが、見た目のイメージもあってクールな方なのかなと思っていたんです。でも実際にお会いすると、とても明るくて気さくで、すごく真っ直ぐな方。割と私は人見知りをしてしまうほうなのですが、それを飛び越えて来てくださったので、とてもやりやすかったですし、私もいろいろなお聞きしながら演じることができました。
――阿部正弘を演じた瀧内公美さんはいかがでしたか。
愛希 家定にとって正弘は、言葉では言い表すことのできないほど大事な存在で、正弘のほうも、いつでも家定の身代わりになるという強い思いがあります。離れていながらもお互いを思い合っているのですが、ドラマでは一緒にいるシーンが少ないので、その中でどう二人の関係性を表現できるのかを撮影前は悩みました。でも撮影に入ってみると、正弘が家定に接するかのように、常に瀧内さんが側にいてくれて、自然と役に入ることができましたし、特に別れのシーンは沸々と感情が込み上げてきました。家定が正弘のことを本気で愛おしいと思っているという感情を出すことができたのは、瀧内さんのお人柄と演技力のおかげです。瀧内さんとも今回が初めましてで、休憩中も衣装替えなどで慌ただしくて会話をする時間もなかったのに、ここまで人の心を開くことができるのってすごいなと思いました。
――ドラマの見どころをお聞かせください。
愛希 家定は生きる気力をなくして、生きることを諦めているところからスタートしますが、萎れた花が、いろいろな人から水を与えてもらって、どんどん生き返って花開く姿が、美しく描かれています。悲しいシーンでも、ジーンとなって温かいものが残るはずです。
――映像作品ならではのやりがいは、どんなときに感じますか。
愛希 まだ映像作品への出演経験も少ないですし、いつも緊張してしまうので、純粋に楽しいと言えるところまでは行けていませんが、本当に学ぶことは多いです。舞台は正面から見られることが大半ですけど、映像はいろんな方向からカメラを向けられて、背中で何かを語ったり、瞬き一つ・髪の動き一つで表現したりと、繊細な演技を求められます。また舞台は一度始まると、最初から最後まで流れでストーリーが進んでいきますが、映像の場合は時系列が前後することも多くて、シーンごとの瞬発力も必要になります。そういう集中力みたいなものも勉強になりますね。